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ライラック王国の姿~ライラック王国編~

影に生きる男

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 ミナミとルーイはやることが無いので、ただ二人でとりとめのない会話をしていた。

 ミナミは正直勉強をしたかったし、本も読みたかった。

 自分が未熟であって、何も知らないことや無力なことが分かるとできることや自分を高めることをやりたかった。

 そして、何よりミナミは魔力を抑える術を身に着ける必要があるのだ。

 不意にピカピカ光らせてしまうのは拙い。

 隠れて葬儀を見に行っても、うっかり光ってしまったらすぐにミナミだとバレてしまう。



 自分を高めることをしたいのは、ルーイもそうだろう。

 会話をしながらも体を動かし、軽いトレーニングをしている。



 アロウが来たら何か本とかでも持ってきてもらおうとミナミは考えていた。

 また、魔力の抑え方がわかる者がいればなおさらいい。

 その考えが通じたのか、お昼過ぎにアロウが部屋に入ってきた。



 ただ、その顔は真っ青だった。



「どうしたんです?」

 少し彼に気を遣い、優しく窺うようにミナミは聞いた。



「…モニエル君たちの言う通りになりました。…帝国が主導し始めています。」

 アロウはミナミとルーイを順に見た。



「主導…って、事は濡れ衣は晴れたってことですから…ミナミは…」

 ミナミをチラリと見たあと、ルーイは少し考え込んだ。



 フロレンスに友好的な感情を抱いているミナミは別として、彼はやはりイシュとモニエルとの会話の中であった、ミナミがオリオンの弱みと見られているというものが引っかかっていた。



 果たして彼女を城の戻していいのか…



 一時的な避難であるが、確かに二人の言うことは合っている。



 オリオンからの連絡を待つべきだというのは明確だ。



「…やっぱり、お兄様からの連絡を待たないといけないんだね…」

 ミナミはルーイが考えていることを察したのか、少し諦めたように言った。



「正直、それは正しいですよ。姫様…」

 アロウは顔を青くしたまま話し始めた。



 国王の殺害については、当事者同時の打ち合わせ不足もあったのかもしれないが、おざなりな作戦であっため、兵士たちからの不信、そしてミナミがいないこともあり、ホクトに対して完全に疑惑を持たれた展開になったようだ。



 それに加え、帝国からの武力での脅しがあり、ホクトは完全にフロレンスに折れたようだ。

 自分の命もだが、自分のせいで国と町が滅ぶ可能性を見たのだろう、国王殺害の実行犯は大臣と供述し、共謀罪でホクトと大臣は捕らえられたようだ。その時に二人に加担した兵士たちも捕まったらしい。



 ミナミの存在が無くてもフロレンスは濡れ衣を晴らせた…だが、実行犯は真実ではない。



「…あくまでも一部の兵士の噂ですが…」

 アロウは前置きを言ってから話始めた。



 ホクトが実行犯じゃないという展開を認めたのは、彼を死罪にしない理由を持たせるためと、オリオンに対しての考慮だということだ。



「オリオンお兄様への…?」



「はい。オリオン王子の家族に対する考え方を上手く使って彼を操ろうと思っているようです。」

 アロウは、ホクトがオリオンにとっての人質になりうる話をした。



 どうやら彼の顔が青かったのは、帝国が主導し始めたからではなく、オリオンが帝国に操られている形になっていることが理由だった。



「オリオンお兄様…そんな人だなんて知らなかった…だって…」

 ミナミはオリオンと過ごした日々を思い出した。



 嫌味で皮肉を言い、いつもミナミに対して冷たい…



「母親が違う兄妹同士ですから、距離の取り方が上手くなかったのでしょう。それに、オリオン王子は母親を早くに亡くしています。それ故に、家族に対して見えなくても繋がりを求めているんだと…国王陛下も言っていました。」

 アロウは少し懐かしそうに目を細めた。



 アロウはミナミの父、国王とこんな家族の話をするような関係だったようだ。

 それを知らなかったミナミはアロウに対して、多少警戒する目を向けた。



「国王陛下とは、子供のころ…よく遊んでいました。きっと、お二人の様な感じです。」

 アロウは羨むようにミナミとルーイを見た。



「でも、彼が妃を貰ってからは…私から距離をおいて、町の情報を彼のために集める影に徹しました。」

 アロウは少し寂しそうだが、幸せそうに笑った。



「アロウさん…」

 ミナミは彼のその表情を見て、嘘を言っていないことがわかった。



「…昨日のミナミの勉強のあと、俺が国王陛下に呼ばれただろ…」

 ルーイはどうしてアロウの宿を逃げる場所として選んだのかを話し始めた。



 国王との話で、兵士が通っている武器屋で情報のやり取りがあることや、そこの店主であるアロウが裏で宿をやっていることを聞き、何かあったときは彼を頼るといいということを聞いたのだ。



 ルーイがミナミをどう思っているかを分かった上で話したということは言わなかったが、アロウはわかっているのだろう。



「…あの、アロウさん…その…本とか、勉強できるものってありますか?…あと魔力の抑え方を知らないと葬儀に行くのも大変だと思うので…」

 ミナミは時間がただ過ぎるのを待つのは苦しいことや、できることをやりたいと思ったことをアロウに話した。

 そして一番大事なのは魔力の抑え方だ。



「確かに…そうですね。いくつか本を持って来ましょう。…魔力の抑え方については少し考えがあります。」

 アロウはミナミの話を聞いて、納得したように言った。



 アロウはルーイにも必要なものは無いかを聞いてから、部屋の廊下側の扉に向かった。



「とりあえず、姫様たちには情報が入り次第知らせに来る予定ですが、外から見つからないように行動をお願いします。」

 アロウは念を押すように言うと、部屋から出て行った。



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