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ライラック王国の姿~ライラック王国編~
世の中を知るお姫様2
しおりを挟む食事を終え、ミナミとルーイ、アロウだけが部屋にいた。
ルーイがモニエルとイシュを追い出したのだ。
見張りとしてだが、これ以上ミナミに近づけたくないというのが本音だろう。
確かに用心棒だが、身元が分からない二人は警戒するに越したことは無い。
アロウは何か知っているのだろう。
帝国への対策などの話を二人に振っているし意見を求めている様子もあった。
しかし
用心棒って大変だな…
という感想しか持っていないミナミは気付いていないが
アロウはルーイを見て苦笑いをしていた。
「…それでは、これからどうするかですが…」
ルーイはアロウに目礼をして、話題を振った。
「ねえ、お城に戻れなくても、離宮とか、地方の方にある小さなお城に逃げることは?」
ミナミは王家の所有する離宮や地方に置いている小城をいくつか挙げた。
「…リスクが高い…それはダメだ。」
ルーイは首を振って、速攻に却下した。
「姫様…その、国王陛下の葬儀が行われると聞きました…それは」
アロウは遠慮気味に訊いた。
父親の葬儀と聞いてミナミは椅子から立ち上がった。
ガタンと椅子が音を立てて倒れた。
「…行く。…絶対に、遠目でいいから…」
ミナミは先ほど逃げることを話していたとは思えないほど必死な表情と口調だった。
その様子を見てアロウとルーイは静かに頷いた。
ルーイはミナミが倒した椅子を起こし、立っているミナミを再び椅子に座らせた。
「じゃあ、来賓も沢山来られて混雑すると思いますが、それに紛れて私と行きましょう…」
アロウはルーイに尋ねるように目線を送った。
「…俺は兵士に顔を知られているからか…それに、たぶん俺は逃亡扱いになっているはずだ。」
ルーイは諦めたように言った。
どうやら彼は自分の代わりにアロウがミナミを葬儀に連れて行くことに、しぶしぶと同意しているようだ。
「国民も沢山弔問するから、紛れることは出来ますよ。」
アロウはルーイに一緒に来ることもできると匂わせることを言った。
だが、ルーイは首を振った。
「城の警備に顔を見られると、俺は一発でバレます…俺がいる方が危険が大きい。顔を隠すのがミナミだけなら誤魔化せるけど、隠すのが二人以上は…」
アロウはルーイの言葉を聞いて頷いた。
そして、ミナミの方を見た。
「では、人の多い時を狙って葬儀に行く予定として…オリオン王子からの連絡を待ち、帝国等の情報を収集していくということでいいですね。」
アロウはミナミに確かめるように見て訊いた。
「はい」
ミナミは頷いた。
彼女が頷いたのを見ると、アロウはルーイを見た。彼にも確認を取っているようだ。
ルーイも頷いた。
「わかりました。…では、お二人の身をしっかり隠す必要がありますので、外出は控えてください。情報収集は、元より本職ですので心配いりません。」
アロウはミナミに優しく微笑んだ。
ミナミはその顔を見て少し安心した。
「ルーイ君が追い出した用心棒は、信用できないかもしれませんが、腕に関しては保証します。なので、何かあったら問答無用で盾にしてください。」
アロウは悪戯っぽく笑いながら言った。
「もちろんです。」
ルーイは当然のように応えた。
「…わかりました。」
ミナミはルーイがあまりにも当然のように応えたことに笑いそうになりがらも、自分もしっかりと頷いた。
二人の様子を見てアロウは安心したような顔をした。
そして、彼は廊下への扉に向かった。
「では、情報を取ってきますので…お待ちください。」
アロウはミナミとルーイに不敵に笑った。
その顔には、慣れがあり、彼が本当に情報収集を本職とし、自信があることが窺えた。
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