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出会い~ライラック王国編~

赤い目の青年

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 ルーイは手早くシャワーを浴びると、直ぐに浴室から出た。



「…それ着な。」

 ぶっきらぼうに言うのは、白髪の青年だ。

 彼はルーイの方の見張りに付いたようだ。



「…ありがとう…」



「僕年上だと思うよ。ガキ。」



「ありがとうございます…」

 ルーイは不本意ながらも敬語を使った。



「まあ、気にしないけど…早く着てよ。見たくないもの晒し続けないでよ。」

 白髪の青年は、腰に巻いたタオル一枚の状況のルーイを見て顔を顰めた。



 ルーイは、ミナミのいる部屋ではなく、用心棒二人が使っている部屋の浴室を使わせてもらっている。



 さっきの部屋には、アロウともう一人の用心棒の青年がいる。



「…あの、ミナミのことを知っているんですか?」

 ルーイは聞いていいのか分からないが、ミナミに対して危険があるといけないので、先ほど用心棒の二人がミナミに対して向けた視線の意味を聞いた。



 白髪の青年は溜息をついた。



「俺は、ミナミを守らないといけないんです。」



「ああ。兵士の使命だっけ?面倒くさいよね。」

 ルーイの言葉に、白髪の青年は手をひらひらとして不真面目そうに言った。



「いえ。それよりも…」

 ルーイはもう一度聞いた。



「昔の知り合いにそっくりだった…んだと思うよ。」

 白髪の青年はルーイが答えを繰り返し聞いていると分かると、少し嫌そうな顔をして言った。

 ただ、それは曖昧な言い方だった。



 そういえば、この白髪の青年は呆然としていただけだった。

 どちらかと言うと、もう片方の顔に傷のある青年の方が表情は深刻だ。



「彼には聞かない方がいいよ。」



 ルーイの考えを察したのか、白髪の青年は言った。

 その声は冷たいが有無を言わせないものだった。



「彼女に、ミナミに危害を…」

 ただ、ルーイも譲れない。

 ミナミを守るために知らないといけないことかもしれないのだ。



「可能性はない。そんなもので簡単に情に流される奴じゃない!!」

 しかし、白髪の青年はルーイの言葉を遮るように強い語調で吐き捨てるように言った。

 その言葉には少し怒りが含まれていた。



 怒り…というべきか、なにやらルーイにではない何かに向けた憤りと不安だろうか…



 さっき会ったばかりの人間であるが、その表情は何となく人間的だった。



「…あ、そうなんですか…」



「!?…ああ。とにかく聞かない方がいいよ。」

 白髪の青年はルーイの視線に気づき、直ぐに表情を取り繕っていた。



 ルーイは素早く着替え、白髪の青年に部屋に戻るよう促した。



 青年は頷いて、先導するように扉の前に立った。



「聞いたら…」

 青年はルーイの方をゆっくりと振り向いた。



「殺すから。」



 彼はルーイを静かに睨みつけていた。

 それが殺気を持ったものであるのは、平和な城の警備の兵であるルーイでもよくわかった。



 殺気とはミナミがよく漂わせているよう魔力のような存在だと思っていた。だが、この目の前の白髪の青年は魔力を使っていない。

 本物の殺気だろう。

 ルーイは生まれて初めてそれにあてられ、足がすくんだ。



 警戒の様子と彼の今見せているこの目と殺気。



 間違っても、彼と剣を交えることはあってはならない。



 ルーイは本能的に思った。



 足がすくんでも、反射的に後ずさりをした。彼から遠ざかりたくて無意識な防衛本能だ。

 その様子を見て青年は感心したように頷いた。



「君…いい子だね。自分の力量…わかっている目をしている。」

 青年はルーイを見て笑っていた。



「僕もわきまえているやつは嫌いじゃないよ。」

 青年は目を細めていた。



 ルーイは細められた青年の真っ赤な瞳に寒気がした。



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