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出会い~ライラック王国編~

一息つくお姫様

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 宿に着くと、ミナミとルーイは直ぐに部屋に連れて行かれた。



 そこは、ベッドが二つと浴室、トイレのついたこの宿にしてはいい部屋だった。



 主らしき男がミナミに入浴と着替えを勧めた。



 その時にミナミは自分の身体と服が濡れてとても冷えていることに気付いた。



 逃げるのに精一杯なのと不安でそれどころじゃなかった。



「見張っているから…大丈夫。」

 ルーイはミナミが覗かれるのを心配していると思ったのか、両手を広げて何かを強調していた。



「…君も着替えたら?」



 ルーイに冷たく言い放ったのは、顔に傷のある青年だった。



 ルーイは彼を見て明らかに警戒を示した。



 その理由はミナミにもわかっている。



 ミナミとルーイを案内してくれたのは、宿の主であるアロウという初老の男と、二人の用心棒の青年だ。



 色の白い白髪の青年と、顔に傷のある青年とミナミは認識している。



 そのうちの顔に傷のある青年は、ミナミを見て明らかに何か覚えのある表情をしていたのだ。



 そういえば、そんなことが最近あった気がしたが、体が冷えて震えて来るとそれどころではない。



「二人それぞれ見張りに付けますから、ご安心ください。」

 アロウはミナミを安心させるように言った。



「俺にはいらない。」

 ルーイは頑なに拒否した。



「僕たちはアロウさんの用心棒だよね?…これは仕事じゃないよ。」

 色白の青年は首を振った。



「食費も全て出そう。」



「…子守は得意だよ。」

 アロウの言葉を聞いて白髪の青年は意見を変えた。



 その横では顔に傷のある青年が溜息をついていた。



「…それより、姫様っていえばいいの?」

 顔に傷のある青年はミナミを横目で見た。



 ミナミは視線を受けてどきりとした。



 別に彼の顔がいいからどきりとしたわけではない。

 彼の目が、何かを射るような目であったからだ。



「その制服目障りだから…早く着替えて欲しいんだ。」

 彼はミナミの着ている制服が気に食わないようだ。



 ミナミは自分の着ている服が自分のものでないことを思い出した。



「あ…」



 この服は、ミナミを助けてくれた赤毛の青年、フロレンスのものだ。



「帝国の高官の服ですね…。」

 アロウもミナミの着ている服が何なのかわかっているようだ。



「まあ、詳しい話は後でします。とにかく…ミナミは早く風呂に入って…着替えろよ。」

 ルーイは半ば強制的にミナミを浴室に押し込んだ。



「え…あ…わかったから…って…」

 ミナミはルーイの勢いと有無を言わせない物言いに、たじろぎながら少し反抗したが、あっけなく押し込められた。



 浴室の扉が閉まり、部屋にはルーイとアロウと用心棒の青年たちだけになった。



「…着替えどうするの?」

 白髪の青年はミナミがいなくなってから呆れたように呟いた。



「…」

 ルーイは縋るようにアロウを見た。



 ミナミは聞いていなかったので知らないが、着替えの用意でひと悶着があったらしい。



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