世間知らずのお姫様と二人の罪人の逃亡記

吉世大海(キッセイヒロミ)

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出会い~ライラック王国編~

目撃する兵士2

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 アロウに先導され、宿の外に出ると、先ほど目撃した青年二人が彼を待っていたように立っていた。



「そのガキなんなの?」

 白髪の青年がルーイを見て眉を顰めている。

 彼はルーイのことを警戒しているようだ。



 それとは違い、顔に傷のある青年はルーイのことを警戒する様子も見せていない。



 ルーイは、それはそれで少し癪に思える。



「仕事しろ。お前らの仲は知らないが、それだけの報酬は払っている。」

 アロウは呆れたように二人を見た。



「どんな仲だと思っているんだよ…」

 白髪の青年はアロウを少し睨んで口を尖らせていた。



 アロウは顎で二人を指し、自分とルーイの後ろの着くように命じた。



 ルーイは得体の知れない二人の何とも言えない気配を感じていた。

 後ろにいると分かると、二人の威圧感は凄まじい。



「君が思っているような関係じゃないよ…」

 ルーイは、耳元に急に声をかけられ、声は抑えたが思わず飛び上がった。



 後ろを向くと、顔に傷のある青年がルーイを観察するように見ていた。



 彼とルーイはそこまで身長は変わらないが、如何せん、体格が違う。

 年齢も上だろうし、顔もいい。



 なにより、アロウに雇われているというのは、きっと腕が立つのだろう。



 ルーイも周りを警戒しているが、それ以上に警戒していた。

 動きは余裕があり、ルーイの様子も見ている。



 要は、二人とも警戒することに慣れているようだ。

 おっかなびっくり魔力を使いながら隠れている自分とは全然違い、少しだけ恥ずかしくなった。



 自分が出てきた地下水路へつながる土管の入り口に着くと、アロウは考え込んで動きを止めた。



「ここで君とモニエル君が…」



「…俺が来るまで待つように言っている。」

 ルーイはアロウが言い切る前に言葉を挟んだ。



 ミナミを匿ってもらうとはいえ、自分の目の届かない所で迎えに行かれるまで信用はしていない。



 そう示したかったが、今のルーイの顔はそれ以外のことを想像させるものだった。



 ルーイの顔を見てアロウは驚いたように目を見開いた。



 だが、直ぐに頷いた。



「なるほど…だから、君を信頼したのか…」

 アロウは頷いて呟いた。



「じゃあ、君が迎えに行くといい。」

 アロウは諦めたように土管の入り口を開けた。



 ルーイは無言で頷いて、入り口に潜り込んだ。



 土管の中、地下水路の中は真っ暗だった。



 かろうじて月明かりの入る入り口から中の様子が見えるが、どうやら蝋燭の火が消えたようだった。



 足場に足をかけて、慎重に下っていく。



 入り口から入る月明かりに反射する金髪が見えた。



「…誰?」

 ミナミの不安げな声が聞こえる。



「…俺だ。ミナミ。」

 ルーイは出来る限りの優しい声で彼女に答えた。



 彼女のいる場所を確認すると、降りて直ぐに安心させるように抱き寄せた。



 ミナミは驚いた様子だが、直ぐに安心したのかルーイに縋りついた。



「上にいる人は…味方だから…」

 ルーイはアロウのことだけを思い浮かべて言った。



「…うん。」

 ミナミは体は震わせていたが、ルーイの顔を見て安心したように目を細めていた。





「おーい…早くした方がいいよ…」

 土管の入り口、地上への出口の方からアロウの声が聞こえる。



 入り口を開けっぱなしにしてもらっているのだ。



 ルーイはミナミを抱え、地上へ続く足場に足をかけた。



「しっかり掴まっていて…」

 ルーイはミナミをしっかり抱き、地下水路の天井に続く足場に交互に手と足をかけて登った。



 地上が見えてくると、アロウが手を伸ばしているのがわかる。



 その後ろには、二人の青年が周りを警戒して見ている。



 ルーイは、先にミナミを地上に渡し、彼女にアロウの手を掴ませた。



 ミナミを下から地上に押し上げ、彼女がアロウの手を掴み、地上に到達をしたのを確認すると、ルーイもそれに続いた。



 暗い地下水路の中にずっといたのか、ミナミは月明かりにすら目を細めて眩しそうにしていた。



 アロウはミナミを確認するとルーイを見て頷いた。

 どうやら彼女の様子を見るまでは、ルーイもわずかには疑っていたようだ。

 やはり、見るものが見ればすぐにわかる。

 ミナミは国王と同じ髪の色と瞳をしているのだから。



 ルーイも地上に出て、ミナミを落ち着かせるため彼女の傍に寄った。



 ミナミはアロウの手を掴み地上に出たとはいえ、やはりルーイしか頼れていない状態のようだ。

 ルーイにしがみ付くようにくっついた。

 ルーイは、それに不謹慎ながらも嬉しさを感じていた。



「…じゃあ、行こうか…」

 アロウはミナミの様子を見て、城で何かがあったのを察したのか気を遣うように少し距離を置いた。



 ルーイはミナミを立たせ、自分に寄りそうに歩かせ、宿まで向かおうとしたが、足を止めた。



 先導するアロウもだ。



 周りを見張っていた白髪の青年が呆然としているのだ。



 その横にいた顔に傷のある青年は目を見開いて、口元を震わせていた。

 確か彼は、モニエルと呼ばれていた。



「…ミヤ…ビ…?」

 彼はミナミを見て、震える声で言った。

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