23 / 311
ライラック王国の王子様~ライラック王国編~
家族想いの王子
しおりを挟むルーイがいなくなって暫く待ってからオリオンは移動した。
一旦事件現場を見たが、もうすでにホクトが仕切っていた。
ミナミと同じように魔力で体をピカピカと光らせ、動揺していることを示し現場に入ろうとした。
しかし、オリオンは締め出され、追い出された。
とにかく、兵士たちに心配しているということを示し、駆けつけたという事実を作った。
感情的になると魔力で発光してしまうのはライラック王国の王族あるあるなので印象に残っただろう。
オリオンは最早プライドは無かった。
目的を終えると、直ぐに自室に向かった。
オリオンは行動が一段落したため、変わらず周りを警戒しているが、さっきよりも足取りは軽いし、落ち着いている。
「…あんなことを話した日に…まさか俺が頭を下げるなんてな…」
オリオンは今日のミナミとの会話を思い出し、さきほどルーイに頭を下げたことに対して自嘲的に笑った。
その自嘲は、頭を下げたことに対してではないのは勿論だった。
部屋の前には丁度先ほど情報収集を任せた兵士がいた。
「オリオン王子!!」
兵士はオリオンを見つけると安心したような顔をした。
「どうした?」
「今城全体が警戒態勢なんですよ。なにせ…姫様が見つからない上に“死神”が部屋からいなくなったんですよ!!」
「…」
兵士の話を聞いてオリオンは困惑した顔を作った。
ついでにもう一度魔力でピカピカと光っておいた。
兵士は急にオリオンが光ったことに驚いていた。
だが、その実彼の話を聞いて安心していた。
ミナミが捕まっていないことを確認できたからだ。
ただ、客間に入られたということは思ったよりも捜索の手が伸びるのが早い。
「捜索はホクトに引き続き任せろ。」
「は…はい!!オリオン王子は…?」
「今俺にできることは無い。だが、明日以降の対策を考える。大臣たちにも伝えろ。」
オリオンは暗に、もう下がれと訴えた。
兵士はオリオンの意図を汲んだのか、頷いて廊下を走って去って行った。
オリオンの行動は疑われてはいないはずだ。
少なくとも、ルーイに接触していることがバレていなければだ。
オリオンがミナミのために何かするとは誰も考えない。
今回は日ごろの行いがいい面で出た。
オリオンは少しだけ自分を褒めた。
「…う」
兵士もいなくなり、廊下で一人になったオリオンは押し寄せる何かに立ち眩みをした。
ふらつきながらも、急いで部屋に入った。
部屋に入ると扉に寄りかかり、オリオンはゆっくりと息を吐いた。
自分の部屋の天井を見ると緊張の糸が切れたようにしゃがみこんだ。
ミナミやホクトもそうだが、国王はオリオンの父親でもある。
兄が父を殺したところを見たミナミほどではないが、オリオンもダメージは大きい。
「…父上…」
オリオンは嗚咽を漏らしながら呟いた。
あえて魔力を光らせて印象に残していたのとは違い、今度は自分の身体が抑えきれないもので光るのがわかった。
幼いころは何度もあったことだ。
感情で魔力が制御できずに光ってしまうことだ。
一人になると自分を抑制するものはない。
と思っていた。
ふわりと、目の前に白いハンカチが差し出された。
オリオンはゆっくり顔を上げた。
そうだった。
オリオンは忘れていた。
自分が部屋に待たせている人物がいることを…
こんなうかつなことは普段は絶対にしない。
こんなうかつに光ることなど、絶対にしない。
「…どうぞ…」
オリオンを見下ろすフロレンスは、心配そうな顔をしていた。
「…どうも…」
オリオンは慌ててハンカチを受け取ると、急いで立ち上がった。
そして意地でも体の発光を抑えつけた。
「無理はしない方がいいですよ。身内が亡くなったのですから…」
「いや…大丈夫だ。」
オリオンは気を取り直し、自室の部屋に内側から鍵をかけた。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。
アズやっこ
恋愛
私は旦那様を愛していました。
今日は三年目の結婚記念日。帰らない旦那様をそれでも待ち続けました。
私は旦那様を愛していました。それでも旦那様は私を愛してくれないのですね。
これはお別れではありません。役目が終わったので交代するだけです。役立たずの妻で申し訳ありませんでした。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
【完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
私のお父様とパパ様
棗
ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。
婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。
大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。
※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。
追記(2021/10/7)
お茶会の後を追加します。
更に追記(2022/3/9)
連載として再開します。
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる