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ライラック王国のお姫様~ライラック王国編~
お転婆なお姫様3
しおりを挟む侍女たちが追い付く前にミナミは、父がいる場所を検討つけて王城の中を走り回っていた。
ミナミが走り回るのはいつものことであるから、すれ違う兵士や仕事で来ている貴族たちは気にしていなかった。
『日頃の行いだな♪』
とミナミはのん気なことを考えていた。
周りを見渡すのに夢中で、ボフンと曲がり角でぶつかった。
「ぐお…」
どうやらミナミの頭が、腹部のいいところに入ったようで呻く声が聞こえた。
ミナミは慌てて立ち止まり、前を見た。
黒いマントを羽織った赤い髪の青年と、黄土色の髪をした年齢不詳の男がいた。
ミナミがぶつかったのは赤い髪の青年の様だ。
「あ…ごめんなさい。」
ミナミは頭を下げた。
「ミ…ミナミ!!何をやっている!!」
二人の後ろから国王が慌てて出て来た。
国王はミナミの横に立って、彼女と同じように頭を下げた。
「フロレンス殿。申し訳ない。お転婆なもので…」
「いえ…気にしないでください…。これくらい平気ですから…」
ミナミにぶつかったフロレンスと呼ばれた青年は、俯いたまま言ったが、たぶん結構きている。
顔は見えないが、声だけ聞くと相当若そうだ。
「気分が悪ければ、どこかでお休みに…」
国王は二人に対して気を遣っているようだ。
それを見て、ミナミはこの二人が帝国の人間であり、どちらかが死神と呼ばれる者だと考えた。
しかし、彼らは特に死神を彷彿させる印象が無いのでミナミは違うと思った。
「お気になさらず…我々は、一旦引かせていただきます。また後で…」
黄土色の髪の男は、赤い髪の青年の肩を叩きながら言った。
赤い髪の青年はあまり容体は良くないようだ。
二人ともミナミに見向きもせずに行ってしまった。
ちょっと悪いことをしたかもしれない。
ミナミは反省した。
「はい。では、後程…」
国王はミナミの肩を抱いて、二人が立ち去るのを見送った。
二人の影が廊下から見えなくなると、国王はミナミを見た。
「お父様…すみません…」
ミナミは父親の視線に肩を縮めて謝った。
「…廊下は歩きなさいと言っているだろうに…。ぶつかったのがあの人だから良かったが…」
国王は少しだけ安心したように言った。
「お父様…皆が死神が来ているって…言っていたけど、本当?」
ミナミはルーイやオリオンから聞いた話をした。
そして、死神と呼ばれる者がどのような人物なのか気にしていると視線で訴えた。
その視線を受けて、父である国王は難しい顔をしたが、諦めたようにため息をついた。
「帝国の人間だからそう呼ばれているのかもしれないが、あの方々はお前がぶつかっても許してくれるような人だし、それは誤解に近い。」
国王はミナミの頭を撫でた。
「…でも、皆帝国が好きじゃないみたいだし、私もいい話を聞かなかったよ…」
ミナミも王族であるため、教育の範囲で聞いている領土拡大の勢いや強引な手段は最低限知っている。
死神と言われているのは知らなかったが。
「それはあまりにも帝国が強すぎるからだ。過ぎる力は異端で異物と思われる…お前も…いや」
国王は顔を歪めて何かを思い起こすように呟きミナミに視線を向けた。
だが、途中で何かを振り払いいつもの父親の顔でミナミの頭を優しくなでた。
「そうだな。だが、やたら逆らってムキになることはない。…難しい話だが、私たちに大事なのは、生き残ることだ。…オリオンもそれが分かればいいものを…」
国王は愚痴のように呟いた。
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