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2章 嫌われ者は家を出る
閑話 sideヴィエルジュ
しおりを挟む「クソっっ!」
広く、長い廊下の静寂を破るような荒々しい声が響く。普段見ることのない荒ぶった姿に普段は彼を慕っている使用人たちも青い顔をして立ち去っていく。今まで作り上げてきたイメージなどヴィエルジュにはもうどうでもよかった。
(リア兄様は確かにここにいたはずなのに)
屋敷中探しまわってみてもどうしてもリア兄様が見つからない。兄様の部屋にも、小さいころよくかくれんぼで使ってたクローゼットの中にも兄様はいなかった。兄様のペンダントにかけていた魔法が切れてしまった現状兄様の居場所を知るヒントは魔法が切れる前最後に兄様がいた場所しかない。
いらだちに任せて壁を殴りつける。そのままうつむいて動かなくなったヴィエルジュにどたどたと高級感のある屋敷にふさわしくない足音が近づいてくる。この状況でこちらに向かって来る人物など簡単に予想できてしまうものでヴィエルジュは深呼吸をして顔を上げた。
「そんなに慌ただしく廊下を走って、何かあったのですか?お父様。」
軽く息をきらした伯爵に少し眉尻を下げながらいつもの笑顔で問いかける。使用人たちの大多数にはばれてしまっただろうが、まだお父様にはいい顔をしておかないと色々と都合が悪くなる。使用人たちから報告を受けたような惨状が一切目に入らないことにお父様はここ最近で随分と薄くなった頭をかきむしった。心労から思わずため息をつくお父様が口を開きかけたのを遮って話を逸らす。
「ヴィエルジュ、おま「お父様、リア兄様がどこいるのか知りませんか?」
お父様は苛立っている状況で聞きたくない名前を聞いたことで眉間のしわを深めてため息をついた。
「ため息ばかりついていると幸せが逃げてしまいますよ?」
「今のため息で私が幸せを逃したのだとしたら原因は確実にお前とお前の愚兄だよ」
そう言うとお父様はおでこに手を当ててうつむいてしまった。ほんの数秒間考えこんだ後お父様は近くにいた使用人に執務室にお茶を用意するように指示した。ちらりと僕の方を見て執務室の方に歩き出したお父様のうしろを僕のことをお父様に報告したであろう使用人をきつく睨めつけてからついていった。
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