嫌われ者の僕が学園を去る話

おこげ茶

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1章 嫌われ者は学園を去る

第4話

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 なかなか決心がつかず、しばらくそうしているとふと頭上をから人の気配を感じて勢いよく顔を上げた。

 「うっ…ふッ…くくッ……だ、大丈夫か?」

 視線の先には屈んでこちらを覗き込みながらも堪えきれないという様子でクツクツと笑う男がいた。

 「大丈夫?」なんて自分を心配するような言葉を久しく耳にしていなかった僕は思わずぽかんとしたが、さっきまでの自分の奇行と目の前で笑う男を見て直ぐに馬鹿にされているのだと気がついた。
 羞恥で顔を赤らめながらもキッと目尻を上げて目の前の男を精一杯睨みつける。

 「どこから見てたんだ。」

 「あ~。……クククッ、あそこの木の上からだよ。」

 笑いが収まってきたのか少し落ち着いた様子の男が僕から見て右側にある学園の森を指さす。

 「~~~っっ!どう考えても聞いてるのはそこじゃないだろうっ!」

 すると男はわざとらしく納得したような表情をつくり、右の手のひらを左手の握りこぶしでポンっと叩いた。

 「なるほど!そっちか!君があーーーっt「っっっ!もういいっ!!」」

 最初からから聞かれていたのではないかっ!                 
 あまりの恥ずかしさに左右の掌でばってんを作って話を続けようとする男の口に押し当てる。

 勢いよく立ち上がってバランスを崩した僕のからだを男が抱きとめる。男はかなり身長が高いようでどちらかと言えば小さい方な僕の体はすっぽりと腕の中に収まった。

 僕より頭1個分大きい男に抱かれたような状態のまま伸ばした手よりさらに上にある目を見ると男もこちらを見ていたようでバッチリ目があった。

 ここぞとばかりに表情筋を総動員して睨み、不機嫌アピールをする。しかし、恥ずかしくてしかたがない僕は顔だけでなく全身真っ赤でなかなか迫力に欠ける。更に、情けないことに目にはうっすらと涙まで浮かべていた。
 男の口を押さえる赤く染まった指先がぼやけた視界に入り、火照ったからだがさらに熱を持った。

 そんな僕の様子を見てにやりと笑った男は薄く形の整った唇の隙間から舌を覗かせてを押さえてる僕の手にゆっくりと這わせた。

       「!!??!?!???」

 男の口を押さえていた手をバッと話して背中に回した。

 今しがた起こった出来事に脳の処理が追いつかずフリーズする。ようやく脳が正常に作動し始めて舐められたと理解した瞬間ゾワゾワゾワッと全身に悪寒が走った。直接目にしなくとも鳥肌が立っているのが分かる。

 ほとんど反射のようなもので頭上にあった男の顎に頭突きをかます。そのまま猫のように飛び退いた。
 少し距離を取ったところで動揺のあまり塞がらない口をパクパクさせながら固まる僕を見て男は楽しそうに笑った。












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