47 / 54
30話「修学旅行」 中編その3
しおりを挟む
こんなに胸が高鳴るのはいつぶりだろうか。
まったく、唯ってやつはいつも俺の気持ちを揺さぶってくる。 嬉しいことも悲しいことも唯の手に握られているような、なんか男としては情けないけどそれも悪くない。
俺は唯の犬でいい。
そうだな、もし俺が犬だったら何犬がいいだろうか。 ここはオーソドックスなミニチュアダックスか? いや、唯が好きなコーギーだ! そうだ俺はコーギーだ。 唯の元へと尻尾を振って忠実に向かうコーギーだ。
「あれ、淳一君!?」
誰かに名前を呼ばれ思わず振り返るとそこには見覚えのある顔があった。
「は!? 何で真柴がここにいるんだ?」
「それはこっちのセリフだよ! あれ、もしかして淳一君も修学旅行?」
「ああ、ってことは真柴もそうなのか?」
俺がそう言うと真柴は子供みたいに目をキラキラさせた。
「やったあああああ! よかったー、あそこでジャンケン負けて」
「ジャンケン?」
「うん、うちの学校ちょっと特殊で先生とジャンケンして行き先決めるんだよね。 勝ったら北海道、あいこは沖縄、負けたら京都なの」
「負けは随分安上がりだな」
「まあねー、お母さんは喜んでたけど。 でもよかったー、淳一君がいるなら京都でよかったよー。 それに北海道と沖縄は前に行ったからね」
そう言って笑う真柴は本当に嬉しそうで素直に可愛いと思った。
「今日は自由行動なんだけど、よかったら淳一君一緒に回ろうよ」
満面の笑みの真柴。 しかし俺には唯との約束がある。
「すまん、先約があってな」
「あ、そうだよねごめんね」
珍しく潔いというかあっさりと真柴は身を引いた。
「それじゃあまたね」
真柴はそう言ってホテルの出口へと去って行った。
真柴、いつもと様子が違ったな。 ……まあいっか。
俺は唯の元へと急いだ。
*
ホテルの入り口へ着くと唯が携帯を弄りながら入り口付近に立っていた。
「よう、待ったか」
内心唯に会えて、この後のことのことを考えると顔がニヤけてしまうのだが必死に耐え平然を装う。
「う、うん今来たとこ。 じゃなかった淳一遅い!」
最初は恥ずかしそうに答えたくせにいきなりキレやがったまったく女ってやつはよくわからない。
「悪いって。 まあ、その……なんだ……いくぞ」
「……うん」
唯がそう答えたのを確認し、俺は外へと出た。
ホテルを出ると歩いてすぐにある街路樹の紅葉がまるで俺たちを待ってくれていたかのように暖かく迎えてくれた。 綺麗な赤色に染まった紅葉はその綺麗さで俺たちの緊張をほどよく和らげてくれた。
「綺麗だね紅葉」
「ああ、この坂ずっとこの景色が続いてるらしいぞ」
「へえ、何で知ってるの?」
「まあ、ちょっと調べたからな」
「ふーん、淳一のくせに珍しい。 いっつも行き当たりばったりなのに」
「うっせ」
俺がそう答えると唯はふふっと微笑んだ。 たったそれだけのことなのに俺の心は温かくなる。 我ながらなんて単純なんだって思うがかまうもんか。 暖かい日差しを浴びながら、確かな幸せを感じながら俺と唯は歩き続けた。
「当てもなくまっすぐ進んでるけど、どこ向かってるの?」
「とりあえず、駅に向かってる。 嵐山とか行きたいなって思ってる」
「ふーん、あのさ……そこ行ったあと私が行きたいとこ行ってもいい?」
「いいけど、どこ行きたいんだ?」
「んー、まあ後で分かるわよ。 詮索するなエロ淳一」
「お前なあ俺のどこがエロなんだよ」
「淳一、顏やらしいもん」
まあ、確かに昨夜クラスメイトたちと有料チャンネルを見ようとしたが……
結局見てないし我慢したから俺は潔白だ! なんて言っても白い目で見られるのは分かってるのでやめておこう。
俺たちは電車を乗り継ぎ、嵐山へと到着した。
まったく、唯ってやつはいつも俺の気持ちを揺さぶってくる。 嬉しいことも悲しいことも唯の手に握られているような、なんか男としては情けないけどそれも悪くない。
俺は唯の犬でいい。
そうだな、もし俺が犬だったら何犬がいいだろうか。 ここはオーソドックスなミニチュアダックスか? いや、唯が好きなコーギーだ! そうだ俺はコーギーだ。 唯の元へと尻尾を振って忠実に向かうコーギーだ。
「あれ、淳一君!?」
誰かに名前を呼ばれ思わず振り返るとそこには見覚えのある顔があった。
「は!? 何で真柴がここにいるんだ?」
「それはこっちのセリフだよ! あれ、もしかして淳一君も修学旅行?」
「ああ、ってことは真柴もそうなのか?」
俺がそう言うと真柴は子供みたいに目をキラキラさせた。
「やったあああああ! よかったー、あそこでジャンケン負けて」
「ジャンケン?」
「うん、うちの学校ちょっと特殊で先生とジャンケンして行き先決めるんだよね。 勝ったら北海道、あいこは沖縄、負けたら京都なの」
「負けは随分安上がりだな」
「まあねー、お母さんは喜んでたけど。 でもよかったー、淳一君がいるなら京都でよかったよー。 それに北海道と沖縄は前に行ったからね」
そう言って笑う真柴は本当に嬉しそうで素直に可愛いと思った。
「今日は自由行動なんだけど、よかったら淳一君一緒に回ろうよ」
満面の笑みの真柴。 しかし俺には唯との約束がある。
「すまん、先約があってな」
「あ、そうだよねごめんね」
珍しく潔いというかあっさりと真柴は身を引いた。
「それじゃあまたね」
真柴はそう言ってホテルの出口へと去って行った。
真柴、いつもと様子が違ったな。 ……まあいっか。
俺は唯の元へと急いだ。
*
ホテルの入り口へ着くと唯が携帯を弄りながら入り口付近に立っていた。
「よう、待ったか」
内心唯に会えて、この後のことのことを考えると顔がニヤけてしまうのだが必死に耐え平然を装う。
「う、うん今来たとこ。 じゃなかった淳一遅い!」
最初は恥ずかしそうに答えたくせにいきなりキレやがったまったく女ってやつはよくわからない。
「悪いって。 まあ、その……なんだ……いくぞ」
「……うん」
唯がそう答えたのを確認し、俺は外へと出た。
ホテルを出ると歩いてすぐにある街路樹の紅葉がまるで俺たちを待ってくれていたかのように暖かく迎えてくれた。 綺麗な赤色に染まった紅葉はその綺麗さで俺たちの緊張をほどよく和らげてくれた。
「綺麗だね紅葉」
「ああ、この坂ずっとこの景色が続いてるらしいぞ」
「へえ、何で知ってるの?」
「まあ、ちょっと調べたからな」
「ふーん、淳一のくせに珍しい。 いっつも行き当たりばったりなのに」
「うっせ」
俺がそう答えると唯はふふっと微笑んだ。 たったそれだけのことなのに俺の心は温かくなる。 我ながらなんて単純なんだって思うがかまうもんか。 暖かい日差しを浴びながら、確かな幸せを感じながら俺と唯は歩き続けた。
「当てもなくまっすぐ進んでるけど、どこ向かってるの?」
「とりあえず、駅に向かってる。 嵐山とか行きたいなって思ってる」
「ふーん、あのさ……そこ行ったあと私が行きたいとこ行ってもいい?」
「いいけど、どこ行きたいんだ?」
「んー、まあ後で分かるわよ。 詮索するなエロ淳一」
「お前なあ俺のどこがエロなんだよ」
「淳一、顏やらしいもん」
まあ、確かに昨夜クラスメイトたちと有料チャンネルを見ようとしたが……
結局見てないし我慢したから俺は潔白だ! なんて言っても白い目で見られるのは分かってるのでやめておこう。
俺たちは電車を乗り継ぎ、嵐山へと到着した。
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします
暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。
いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。
子を身ごもってからでは遅いのです。
あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」
伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。
女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。
妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。
だから恥じた。
「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。
本当に恥ずかしい…
私は潔く身を引くことにしますわ………」
そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。
「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。
私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。
手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。
そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」
こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
果たされなかった約束
家紋武範
恋愛
子爵家の次男と伯爵の妾の娘の恋。貴族の血筋と言えども不遇な二人は将来を誓い合う。
しかし、ヒロインの妹は伯爵の正妻の子であり、伯爵のご令嗣さま。その妹は優しき主人公に密かに心奪われており、結婚したいと思っていた。
このままでは結婚させられてしまうと主人公はヒロインに他領に逃げようと言うのだが、ヒロインは妹を裏切れないから妹と結婚して欲しいと身を引く。
怒った主人公は、この姉妹に復讐を誓うのであった。
※サディスティックな内容が含まれます。苦手なかたはご注意ください。
皇帝陛下は身ごもった寵姫を再愛する
真木
恋愛
燐砂宮が雪景色に覆われる頃、佳南は紫貴帝の御子を身ごもった。子の未来に不安を抱く佳南だったが、皇帝の溺愛は日に日に増して……。※「燐砂宮の秘めごと」のエピローグですが、単体でも読めます。
冷淡だった義兄に溺愛されて結婚するまでのお話
水瀬 立乃
恋愛
陽和(ひより)が16歳の時、シングルマザーの母親が玉の輿結婚をした。
相手の男性には陽和よりも6歳年上の兄・慶一(けいいち)と、3歳年下の妹・礼奈(れいな)がいた。
義理の兄妹との関係は良好だったが、事故で母親が他界すると2人に冷たく当たられるようになってしまう。
陽和は秘かに恋心を抱いていた慶一と関係を持つことになるが、彼は陽和に愛情がない様子で、彼女は叶わない初恋だと諦めていた。
しかしある日を境に素っ気なかった慶一の態度に変化が現れ始める。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる