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26日
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マイケルはベルの音と共に目が覚めた。昨夜はベリーに言われるがまま、その家に泊まってしまった。ベリーはマイケルのすぐ傍にいて、マイケルは驚いた。
「驚かなくてもいいのよ。おはよう、ほら、朝食のパンよ。」とベリーはマイケルにパンを渡してくれるが、マイケルは首を横に振ってしまう。しかしベリーはマイケルの手にパンを乗せ、「ダメよ、食べないのは良くないわ。」と言った。マイケルはほのかに優しさを感じ、そのままパンを受け取ってしまう。するとベリーはまた微笑んで、再び外へ出かけてしまった。
マイケルはパンをかじりながらも部屋を見ると、本棚を発見した。本棚には写真が飾っていて、マイケルがその写真を覗こうとすると再びピックがベルから現れた。
「ピック!」とマイケルが言うと、ピックは本棚の写真を見た。
「これ、わかるか?ベリーと誰か。」
マイケルは近づいて見てみると、写真にはピック達くらいの年頃のベリーと、大人の男性が幸せそうな笑顔を見せていた。今のベリーがそのまま小さくなったと言っても過言ではないくらい、ベリーはあまり変わらない姿だった。すると更にピックは近くの一冊をマイケルに取らせる。
「この文字読めるか?」
マイケルは首を横に振るとピックは言った。
「『元気な子供を食べると、若返る。』って書かれている。どういう事かわかるか?」
マイケルは黙って首を横に振ると、ピックは溜息をついてから言った。
「ベリーは子供を食べている。って事はベリーは若返ろうとしているんだよ。」
しかしマイケルは首を傾げながら「十分若いじゃん」と言うと、ピックは呆れる。
「だって何十年前からいる魔女だぞ!?若返んないと今の姿にならねえから!」と言われるがマイケルはよくわからないでいた。
「僕達も子供食べたら小さくなるの…?」とマイケルは聞いてくるが、ピックは「無理、俺達は人間じゃん。これは魔女の体質で…あれ?」と本の表紙を見て眉を潜めた。
「どうしたの?」とマイケルが聞くとピックは表紙を読んだ。
「『呪い全集』…?意味わからねえ。まあいいや、出るぞマイケル。」
「え!?」と急な提案にマイケルが驚くと、ピックは言った。
「家に帰りたいんだろ!?だから遭難しないように俺が道教えてやるから、とりあえず協力しろよ。」
マイケルは訳もわからないでいると、ピックはベルを見る。
「どうせお前も食われる運命だよ。ほら俺、このベルから離れられねえんだ。だからこのベルを運んで欲しい。」
「ベルと繋がっているの…?」とマイケルは感心している。
「早くしろよ!分かんねえけど、このベルに乗り移っちまったみたいで離れる方法も分かんねえんだ!」とピックがぶっきらぼうに答えると、マイケルは了解してベルを手に取った。手に取ってもずっと鳴り続けるベルは不思議でならない。
「外出るか。俺は物に触れねえからお前がドア開けてくれ。」
「ええ!?」とマイケルが驚くと、「早くしろ。」とピックは言うのだった。
マイケルは恐る恐る扉を開いてみると、外は晴れていて、辺り一面が雪だった。どうやら山の頂上付近のようで、眺めも良い。マイケルが眺めに気を取られている間にピックは裏の薪倉庫に向かう。マイケルは急いでピックを追いかけると、マイケルは薪倉庫を覗く。
そこには沢山の薪があるのだが、マイケルは薪よりも近くに山になって置かれているソリに目がついた。マイケルはソリの山を探る。
「適当に一つ持ってけよ。どうせ持ち主はみんなベリーの腹ん中に収まっちまったんだからよ。」とピックが言うが、マイケルは自分のソリを見つけ出して上に掲げた。
「僕のソリ!やった!」
ピックはその子供らしさに、呆気を取られてしまい黙ってしまう。
「行こ!ピック!」とマイケルが言ったので、「おう…」とピックは返事をした。
マイケル達はソリで雪の坂を下る事にした。その時だ、なんと薪拾いに出掛けていたベリーにマイケル達が見つかってしまう。
「あ…」とマイケルが声を出すと、ベリーは驚いた顔をしてから言った。
「どこに行くの?」
「え…」とマイケルは答えに迷うと、ピックは「早く出せ!」とマイケルに言う。
「私の大事なベルを持って…」とベリーが顔を暗くすると「マイケル!!」とピックが叫んだので、マイケルは身の危険を感じてソリを出発させた。
それと同時に沢山の刃物がマイケルに向かって槍のように降ってきた。
「マイケル!避けろ!!」とピックが言ったのでマイケルは力の限り尽くし、服は多少破れてしまっても身には傷一つつかなかった。
二人が安心していると、次は太く長い丸太が坂から転がってくる。随分スピードがついていてあっという間に追いつかれる。
「マイケル!木々がある方に飛び込め!」とピックが言うと、マイケルは「間に合わないよ!」と言った。
「ソリ捨てて飛び込めば行けるって!」とピックは言うが、「嫌だよそんなの!」とマイケルはソリの心配をする。
「命かソリどっちが大事なんだ!」
「どっちも!」とマイケルは言ったが、ピックの言う事を聞いて渋々木々の方に飛び込み、丸太はギリギリで木に引っかかってマイケルにぶつかる事はなかった。しかしソリは丸太に当たり、物凄い勢いで木々の中へと飛んでいってしまった。
マイケルとピックは木々の中を歩く。坂が緩やかなので、山のふもと辺りには来れた様子。
「ソリ…」とマイケルが落ち込んでいるので、ピックは「まだ言ってんのかよ!」と言った。
「気にすんな。」とピックは言ったが、マイケルは何かを見つけたらしくピックの言った事を無視してそれに向かって急いだ。
「どうした!って…」とピックが言う。マイケルが向かう先にはマイケルのソリがあったのだ。それともう一人。
「君は誰?」とマイケルはソリの近くにいた少年に言った。ピックはその少年を見ると驚いた。
「あん時の少年!俺の事覚えてる?結構前に会った…てかその時は大人の姿だったからわかんねえか…」とピックがブツブツ言っていると、少年はマイケルに微笑んだ。
「大事なソリかい?」
「うん!サンタさんから貰ったんだ!」とマイケルが言ったので、少年は微笑ましく思って笑った。そして次にピックに言った。
「君の事、覚えているよ。」
するとピックは話が早いと思ったのか「お前の探してたベル、持ってきた。ベルをどうするんだ?」と言う。マイケルはベルを少年に見せると、少年は驚いた顔を見せてから微笑みを隠した顔で首を横に振った。
「これは僕のベルではないね。これはベリーのベルだ。」
「やっぱり。」とピックは言うと少年に言った。
「お前、ベリーの家の写真に写ってた男だろ。」
少年が頷くと、ピックは「この山はベリーがかけた魔法でみんな子供になるんだよな。」と言う。
「そうだね。僕もそのせいで子供になった。」と少年が言うと、ピックは更に言う。
「ここでベルをなくして遭難でもして死んだか?これがベリーのだって言うなら、お前のはまた別にあるんだな。」
「うん。でも、ベリーは僕を見てもわかってくれなかったよ。」
少年の言葉に、マイケルは疑問符を浮かべた。
「僕がこの姿でベリーに会っても、僕だって事、わかってくれなかったんだ…。」
その悲しみが混ざった微笑みは、マイケルの心を痛ませる。ピックは「つまりベリーに食われた?」と聞いたら少年は頷いた。
「ベリーはね、写真の通り少女だったんだけど。…どこかの魔女に呪いをかけられたみたいで大人になってしまったんだ。」
「え!?」とピックが言うと、少年は困った顔をして言う。
「原因は僕にあるみたい。僕は子供が好きだったから、きっとベリーを大人にして引き剥がそうとしたんだ…」
「は?殺さなかったんかい。」とピックが言うと、少年は「その魔女は随分気高いから自分の手ではやらないね。呪いも自分の命を削るものだから、生死を扱う呪いは使わないのさ。」と言った。
「ん?つまりベリーは呪いを解くために子供を食ってる…?」とピックが言うと、マイケルは納得をした。
「クリスマスの日にベルを持ってきて会いに行く予定だったんだけど、どうやらベリーは自分を子供の姿に戻すために色々手を尽くして、山に立ち入った者を子供にしてしまう呪いをかけてしまったみたいなんだ。」
「なるほどな。でもそろそろ、大人から子供になった子供じゃ呪いを解けない事に気づいた感じか。」とピックは言った。
マイケルは「君のベル、見つけたらどうなるの?」と少年に聞くと少年は笑う。
「いや、それ持ってベリーに会えばわかってくれるかなって。でもこの姿じゃ駄目か…。」
ピックが何も秘策がない事を知ると、深い溜息をついてしまう。そこに、足音が聞こえてくる。三人は予感がした。
「まさか…!」とピックが言ったが、案の定それはベリーだった。ベリーは恐ろしい形相をマイケルに向けて、片手に刃物を持っていた。
「逃げちゃダメでしょ…返して…私の大事なベル…!」と少々息を切らせている。マイケルが怖がると、少年がマイケルを庇ってベリーの前に立つ。
「邪魔よ。」とベリーが言うと、少年は「やめてくれベリー!僕だ、サンタだ!」と言う。ピックは「名前がサンタって…!」と言って笑うとマイケルは目を光らせた。ベリーも驚き、しかし体勢を変えない。
「誰かと思えば前に私が食べた子供じゃない!あなたはサンタさんと知り合いなんだろうけど、そういう嘘はやめてちょうだい!」とベリーは言った。
「信じてくれない…?」とサンタは言ったが、ベリーは「当たり前よ!」と言うのだった。
「サンタさんはクリスマスの日に来てくれなかった…!サンタさんだったらクリスマスの日に来るはずだわ!あなたが来たのはその次の日!」
ベリーの言葉を聞いて、サンタは困った顔をした。
「ごめんねベリー…。ベリーに言わなくてはいけない事がある。」
ベリーは彼をサンタだと思いたくはなかったが、なんだか胸騒ぎがして止まない。
「ベリーとペアでプレゼントしたベルを…なくしてしまった…。精一杯探したけれど…見つからなくて…」
ベリーは驚いた顔をし、悲しみをグッと堪えた顔をしながらもサンタに言い放った。
「それが言い訳!?」
サンタは顔を下げると小さく頷いた。ベリーは涙を流し始め、サンタに刃物を向ける。そこでピックは言った。
「てかさ、サンタはガキの姿になったのにお前ん家まで来てくれたんだからそこんところ評価してやれよな。」
それを聞いてマイケルも何度か頷いてから言った。
「サンタさん、ずっとここでベルを探しているよ。きっと、ベルがないとベリーさんに会えないって思ってる。」
ベリーは黙り込んで刃物を下ろした。
元気のないベリーに「ベリー?」とサンタは話しかけた。するとベリーはサンタに言った。
「話も聞かないで食べちゃったの…私だから…きっとサンタさんは悪くない…。」
「そんな事!」とサンタが言うと、ベリーは膝を崩して泣き出す。
「私…!子供じゃないとサンタさんに見捨てられるって思ったの…!だからあの日…、サンタさんが来なかった日…!サンタさんの事初めて嫌いになっちゃったの…!」
マイケルとサンタは気を落とした顔をしていた。
「ごめんね…、私…何も知らなかったのに…勝手に嫌いになっちゃったんだよ…?しかもサンタさんを食べちゃったんだよ…?それでも…ベルを探すの…?」とベリーがサンタに聞くと、サンタはベリーの肩に透けてしまう手を乗せる。
「そんな事ないだろう?僕のプレゼントしたベルをずぅーっと大事に持っていてくれて、僕は嬉しいよ。」
そう言ってサンタはベリーの両手を持とうとして、ベリーの顔を見た。ベリーも涙で掠れていたがサンタの目をしっかりと見た。
「僕はベリーの事が大好きなのに、大人になったら嫌いになるなんて事ないよ。」
サンタの笑顔を見てベリーは自然と笑みをこぼしてしまう。そしてサンタの透けた手と自分の手を見て笑う。
「サンタさんの手、ちっさい。不思議な気持ちだね。ずぅーっと前は、私の方がはるかにちっさかったのに。」
「そうだね、不思議。」とサンタも笑った。
「私も…サンタさん…大好き…」
サンタはそれを聞くと目に涙を溜める。
「ありがとう…」
するとサンタの体は光を放つようになる。そうだ、成仏をするのだ。
「え?」とマイケルが驚いていると、ピックはマイケルに静かにするよう指でサインする。
ベリーはサンタに何か、言う事もせずに見つめていた。そしてサンタは光の輪になって消えてしまった。
「ベリー」とピックはベリーに話しかける。ベリーはピックを見た。
「お願いだよ、マイケルを家に帰してやってくれ。」
「ピック…」とマイケルが言うと、ベリーは微笑んで「わかったわ。」と言うのだった。
「驚かなくてもいいのよ。おはよう、ほら、朝食のパンよ。」とベリーはマイケルにパンを渡してくれるが、マイケルは首を横に振ってしまう。しかしベリーはマイケルの手にパンを乗せ、「ダメよ、食べないのは良くないわ。」と言った。マイケルはほのかに優しさを感じ、そのままパンを受け取ってしまう。するとベリーはまた微笑んで、再び外へ出かけてしまった。
マイケルはパンをかじりながらも部屋を見ると、本棚を発見した。本棚には写真が飾っていて、マイケルがその写真を覗こうとすると再びピックがベルから現れた。
「ピック!」とマイケルが言うと、ピックは本棚の写真を見た。
「これ、わかるか?ベリーと誰か。」
マイケルは近づいて見てみると、写真にはピック達くらいの年頃のベリーと、大人の男性が幸せそうな笑顔を見せていた。今のベリーがそのまま小さくなったと言っても過言ではないくらい、ベリーはあまり変わらない姿だった。すると更にピックは近くの一冊をマイケルに取らせる。
「この文字読めるか?」
マイケルは首を横に振るとピックは言った。
「『元気な子供を食べると、若返る。』って書かれている。どういう事かわかるか?」
マイケルは黙って首を横に振ると、ピックは溜息をついてから言った。
「ベリーは子供を食べている。って事はベリーは若返ろうとしているんだよ。」
しかしマイケルは首を傾げながら「十分若いじゃん」と言うと、ピックは呆れる。
「だって何十年前からいる魔女だぞ!?若返んないと今の姿にならねえから!」と言われるがマイケルはよくわからないでいた。
「僕達も子供食べたら小さくなるの…?」とマイケルは聞いてくるが、ピックは「無理、俺達は人間じゃん。これは魔女の体質で…あれ?」と本の表紙を見て眉を潜めた。
「どうしたの?」とマイケルが聞くとピックは表紙を読んだ。
「『呪い全集』…?意味わからねえ。まあいいや、出るぞマイケル。」
「え!?」と急な提案にマイケルが驚くと、ピックは言った。
「家に帰りたいんだろ!?だから遭難しないように俺が道教えてやるから、とりあえず協力しろよ。」
マイケルは訳もわからないでいると、ピックはベルを見る。
「どうせお前も食われる運命だよ。ほら俺、このベルから離れられねえんだ。だからこのベルを運んで欲しい。」
「ベルと繋がっているの…?」とマイケルは感心している。
「早くしろよ!分かんねえけど、このベルに乗り移っちまったみたいで離れる方法も分かんねえんだ!」とピックがぶっきらぼうに答えると、マイケルは了解してベルを手に取った。手に取ってもずっと鳴り続けるベルは不思議でならない。
「外出るか。俺は物に触れねえからお前がドア開けてくれ。」
「ええ!?」とマイケルが驚くと、「早くしろ。」とピックは言うのだった。
マイケルは恐る恐る扉を開いてみると、外は晴れていて、辺り一面が雪だった。どうやら山の頂上付近のようで、眺めも良い。マイケルが眺めに気を取られている間にピックは裏の薪倉庫に向かう。マイケルは急いでピックを追いかけると、マイケルは薪倉庫を覗く。
そこには沢山の薪があるのだが、マイケルは薪よりも近くに山になって置かれているソリに目がついた。マイケルはソリの山を探る。
「適当に一つ持ってけよ。どうせ持ち主はみんなベリーの腹ん中に収まっちまったんだからよ。」とピックが言うが、マイケルは自分のソリを見つけ出して上に掲げた。
「僕のソリ!やった!」
ピックはその子供らしさに、呆気を取られてしまい黙ってしまう。
「行こ!ピック!」とマイケルが言ったので、「おう…」とピックは返事をした。
マイケル達はソリで雪の坂を下る事にした。その時だ、なんと薪拾いに出掛けていたベリーにマイケル達が見つかってしまう。
「あ…」とマイケルが声を出すと、ベリーは驚いた顔をしてから言った。
「どこに行くの?」
「え…」とマイケルは答えに迷うと、ピックは「早く出せ!」とマイケルに言う。
「私の大事なベルを持って…」とベリーが顔を暗くすると「マイケル!!」とピックが叫んだので、マイケルは身の危険を感じてソリを出発させた。
それと同時に沢山の刃物がマイケルに向かって槍のように降ってきた。
「マイケル!避けろ!!」とピックが言ったのでマイケルは力の限り尽くし、服は多少破れてしまっても身には傷一つつかなかった。
二人が安心していると、次は太く長い丸太が坂から転がってくる。随分スピードがついていてあっという間に追いつかれる。
「マイケル!木々がある方に飛び込め!」とピックが言うと、マイケルは「間に合わないよ!」と言った。
「ソリ捨てて飛び込めば行けるって!」とピックは言うが、「嫌だよそんなの!」とマイケルはソリの心配をする。
「命かソリどっちが大事なんだ!」
「どっちも!」とマイケルは言ったが、ピックの言う事を聞いて渋々木々の方に飛び込み、丸太はギリギリで木に引っかかってマイケルにぶつかる事はなかった。しかしソリは丸太に当たり、物凄い勢いで木々の中へと飛んでいってしまった。
マイケルとピックは木々の中を歩く。坂が緩やかなので、山のふもと辺りには来れた様子。
「ソリ…」とマイケルが落ち込んでいるので、ピックは「まだ言ってんのかよ!」と言った。
「気にすんな。」とピックは言ったが、マイケルは何かを見つけたらしくピックの言った事を無視してそれに向かって急いだ。
「どうした!って…」とピックが言う。マイケルが向かう先にはマイケルのソリがあったのだ。それともう一人。
「君は誰?」とマイケルはソリの近くにいた少年に言った。ピックはその少年を見ると驚いた。
「あん時の少年!俺の事覚えてる?結構前に会った…てかその時は大人の姿だったからわかんねえか…」とピックがブツブツ言っていると、少年はマイケルに微笑んだ。
「大事なソリかい?」
「うん!サンタさんから貰ったんだ!」とマイケルが言ったので、少年は微笑ましく思って笑った。そして次にピックに言った。
「君の事、覚えているよ。」
するとピックは話が早いと思ったのか「お前の探してたベル、持ってきた。ベルをどうするんだ?」と言う。マイケルはベルを少年に見せると、少年は驚いた顔を見せてから微笑みを隠した顔で首を横に振った。
「これは僕のベルではないね。これはベリーのベルだ。」
「やっぱり。」とピックは言うと少年に言った。
「お前、ベリーの家の写真に写ってた男だろ。」
少年が頷くと、ピックは「この山はベリーがかけた魔法でみんな子供になるんだよな。」と言う。
「そうだね。僕もそのせいで子供になった。」と少年が言うと、ピックは更に言う。
「ここでベルをなくして遭難でもして死んだか?これがベリーのだって言うなら、お前のはまた別にあるんだな。」
「うん。でも、ベリーは僕を見てもわかってくれなかったよ。」
少年の言葉に、マイケルは疑問符を浮かべた。
「僕がこの姿でベリーに会っても、僕だって事、わかってくれなかったんだ…。」
その悲しみが混ざった微笑みは、マイケルの心を痛ませる。ピックは「つまりベリーに食われた?」と聞いたら少年は頷いた。
「ベリーはね、写真の通り少女だったんだけど。…どこかの魔女に呪いをかけられたみたいで大人になってしまったんだ。」
「え!?」とピックが言うと、少年は困った顔をして言う。
「原因は僕にあるみたい。僕は子供が好きだったから、きっとベリーを大人にして引き剥がそうとしたんだ…」
「は?殺さなかったんかい。」とピックが言うと、少年は「その魔女は随分気高いから自分の手ではやらないね。呪いも自分の命を削るものだから、生死を扱う呪いは使わないのさ。」と言った。
「ん?つまりベリーは呪いを解くために子供を食ってる…?」とピックが言うと、マイケルは納得をした。
「クリスマスの日にベルを持ってきて会いに行く予定だったんだけど、どうやらベリーは自分を子供の姿に戻すために色々手を尽くして、山に立ち入った者を子供にしてしまう呪いをかけてしまったみたいなんだ。」
「なるほどな。でもそろそろ、大人から子供になった子供じゃ呪いを解けない事に気づいた感じか。」とピックは言った。
マイケルは「君のベル、見つけたらどうなるの?」と少年に聞くと少年は笑う。
「いや、それ持ってベリーに会えばわかってくれるかなって。でもこの姿じゃ駄目か…。」
ピックが何も秘策がない事を知ると、深い溜息をついてしまう。そこに、足音が聞こえてくる。三人は予感がした。
「まさか…!」とピックが言ったが、案の定それはベリーだった。ベリーは恐ろしい形相をマイケルに向けて、片手に刃物を持っていた。
「逃げちゃダメでしょ…返して…私の大事なベル…!」と少々息を切らせている。マイケルが怖がると、少年がマイケルを庇ってベリーの前に立つ。
「邪魔よ。」とベリーが言うと、少年は「やめてくれベリー!僕だ、サンタだ!」と言う。ピックは「名前がサンタって…!」と言って笑うとマイケルは目を光らせた。ベリーも驚き、しかし体勢を変えない。
「誰かと思えば前に私が食べた子供じゃない!あなたはサンタさんと知り合いなんだろうけど、そういう嘘はやめてちょうだい!」とベリーは言った。
「信じてくれない…?」とサンタは言ったが、ベリーは「当たり前よ!」と言うのだった。
「サンタさんはクリスマスの日に来てくれなかった…!サンタさんだったらクリスマスの日に来るはずだわ!あなたが来たのはその次の日!」
ベリーの言葉を聞いて、サンタは困った顔をした。
「ごめんねベリー…。ベリーに言わなくてはいけない事がある。」
ベリーは彼をサンタだと思いたくはなかったが、なんだか胸騒ぎがして止まない。
「ベリーとペアでプレゼントしたベルを…なくしてしまった…。精一杯探したけれど…見つからなくて…」
ベリーは驚いた顔をし、悲しみをグッと堪えた顔をしながらもサンタに言い放った。
「それが言い訳!?」
サンタは顔を下げると小さく頷いた。ベリーは涙を流し始め、サンタに刃物を向ける。そこでピックは言った。
「てかさ、サンタはガキの姿になったのにお前ん家まで来てくれたんだからそこんところ評価してやれよな。」
それを聞いてマイケルも何度か頷いてから言った。
「サンタさん、ずっとここでベルを探しているよ。きっと、ベルがないとベリーさんに会えないって思ってる。」
ベリーは黙り込んで刃物を下ろした。
元気のないベリーに「ベリー?」とサンタは話しかけた。するとベリーはサンタに言った。
「話も聞かないで食べちゃったの…私だから…きっとサンタさんは悪くない…。」
「そんな事!」とサンタが言うと、ベリーは膝を崩して泣き出す。
「私…!子供じゃないとサンタさんに見捨てられるって思ったの…!だからあの日…、サンタさんが来なかった日…!サンタさんの事初めて嫌いになっちゃったの…!」
マイケルとサンタは気を落とした顔をしていた。
「ごめんね…、私…何も知らなかったのに…勝手に嫌いになっちゃったんだよ…?しかもサンタさんを食べちゃったんだよ…?それでも…ベルを探すの…?」とベリーがサンタに聞くと、サンタはベリーの肩に透けてしまう手を乗せる。
「そんな事ないだろう?僕のプレゼントしたベルをずぅーっと大事に持っていてくれて、僕は嬉しいよ。」
そう言ってサンタはベリーの両手を持とうとして、ベリーの顔を見た。ベリーも涙で掠れていたがサンタの目をしっかりと見た。
「僕はベリーの事が大好きなのに、大人になったら嫌いになるなんて事ないよ。」
サンタの笑顔を見てベリーは自然と笑みをこぼしてしまう。そしてサンタの透けた手と自分の手を見て笑う。
「サンタさんの手、ちっさい。不思議な気持ちだね。ずぅーっと前は、私の方がはるかにちっさかったのに。」
「そうだね、不思議。」とサンタも笑った。
「私も…サンタさん…大好き…」
サンタはそれを聞くと目に涙を溜める。
「ありがとう…」
するとサンタの体は光を放つようになる。そうだ、成仏をするのだ。
「え?」とマイケルが驚いていると、ピックはマイケルに静かにするよう指でサインする。
ベリーはサンタに何か、言う事もせずに見つめていた。そしてサンタは光の輪になって消えてしまった。
「ベリー」とピックはベリーに話しかける。ベリーはピックを見た。
「お願いだよ、マイケルを家に帰してやってくれ。」
「ピック…」とマイケルが言うと、ベリーは微笑んで「わかったわ。」と言うのだった。
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