六音一揮

うてな

文字の大きさ
上 下
32 / 95
2章 接続独唱

第30音 周章狼狽

しおりを挟む
【周章狼狽】しゅうしょうろうばい
大いに慌てる事。

=======

ルネアは先日テノと約束した内容をツウに話していた。
ツウは機械をいじりながら言う。

「一緒にお風呂?いいよ!ルカ兄とダニエルが!」

それにルネアは苦笑。

「ツウくんは?」

「僕は見てるだけでいいや、ユネイはどうする?」

ツウの近くで機械いじりを見ていたユネイ。

「マスターが入らないなら僕もそうするよ」

ルネアは目を丸くした。

「ユネイってツウが拾われた時に一緒にいたロボットなんだよね?
だからマスター呼びなの?」

「そうだよ。
親から貰った護衛用のロボットなんだけど、機械に故障が出てずっと動かないまま放置しちゃってたんだ。」

「へーすごい。でも水に入ったら故障しませんか?」

「心配には及ばない
故郷は水の惑星 耐性はある」

「す…すごいな…」

ルネアはユネイにただただ感心するしかなかった。



ルネアは誘いを終えた為、部屋に戻るとラムが部屋で読書をしていた。
気になって見に行くと、ラムは驚いて本を隠す。

「な!なんだ…ルネアか…。」

「恋愛小説なんて読むんだね。」

ルネアはニヤニヤしながら言うと、ラムは恥ずかしそうに怒った。

「悪かったな!いいじゃねーかよ!…ちょっとくらい夢見ても…」

(あー…確かにラムは、このままだと一生男のまま生活する事になるからなぁ…)

ルネアはそう思いつつも、本題に入る。

「今度、男子の皆さんとお風呂に入る事になりました。
パートリーダー男は全員参加です。」

「はぁっ!?聞いてねぇぞっ!」

ラムが驚くと、ルネアはニヤニヤ。

「お目当てのアールさんもいるんですよ?」

しかしラムは首を横に振る。

「無理だよ無理だよ!だって男だぞ!?
ガキの頃だけ男と一緒に入ったくらいだぞ!?」

「入った事あるじゃん。アールさんとは?」

「よく一緒に入ったけど…!六歳から一人で入ったからな!
あの日から十三年、誰とも入ってない!」

「結構早いうちから一人なんですね。」

ラムは自分の胸を見ると呟く。

「意外に成長が早くて…って何言わせとんじゃぁっ!」

ラムは怒るので、ルネアは笑った。

「自分で言ったんじゃないですか!
てか、最初は男の姿じゃなかったって事ですか?成長って胸の話ですよね?」

ラムはもう一つ言おうとしたがやめ、素直に言う。

「まめきちさんに勧められて…。
アールと性別の壁で仲良くできないのが嫌だったし、たまに児童園の奴等に意地悪されてたアールだから助けたくって…。
そしたら男になる方をまめきちさんが勧めてくれたんだ。」

「自主的ではなかったんですね。」

「うん。
でも…小さい頃は気になんなかった事が大きくなるとどんどん気になって…!
はっ…恥ずかしくなってきたんだよぉ!」

ラムの顔がだんだんと赤くなるので、ルネアは笑ってしまった。

「年頃の反応ですね。」

「うるさい!」

そしてルネアは満面の笑みで言う。

「いいじゃないですか、アールさんの裸を見れるんですよ?」

「俺はそんな変態じゃねぇ!」

ラムは涙目になって言うと、ルネアは苦笑。

「いや、でも見事結ばれて結婚でもしたらどうせ見る事になるんですよ?」

するとラムは赤面したまま机に伏せて泣いてしまう。

「やだ!まだ心の準備がぁ!…ううっ…アール…怖いよぅ…うぐっ…」

「アールさんはMですよ?怖くないですって。」

ルネアが即答すると、ラムは顔を上げて首を横に振った。

「本当にそうかっ!
アイツちょっと意地悪だし、支配欲強そうで…年下には容赦しない奴なんだよ…!」

「ラムとアールさん、同い年じゃないんですか?」

「あっちの方が一つ上だよ!」

ルネアはそれを元に考えてみると、結論を話す。

「確かに年下の僕相手には口答えもするし、睨んでもくるし、
逆にシナさんやダニエルさんみたいな年上には口答え一切しませんもんね…。
てか、年上の話題が少ない気がします。」

「アイツはそういう奴なんだよ…っ!
年下に意地悪をして内心楽しんでる奴なんだよ…!」

(嫌な上官か。)

ルネアはそう思っていると、とりあえずラムに言う。

「でもそれを好きになったのはあなたですよ?」

ラムはそれを聞くと、冷静な顔をルネアに向けた。

「それ言うとなんも答えられなくなるからやめろ。」

「てへ!」

ルネアは笑うが、ラムは頭痛がするのか頭に手を添えていた。
そこにシナが部屋に帰ってきて、ラムの様子に違和感を感じる。

「どうしたの?ラム?」

ルネアはシナに、全てを話した。



シナは話を全て聞くと大笑い。

「アハハハッ!仕方ない子ねぇ~
ま、頑張ってきなさいよ。アールの下見してきなさい。
後で聞くからちゃーんと見ときなさいよ~、私が判定してあげる!」

シナもラムをいじるのに協力的である。

「ううっ…シナが言うのなら…わかった…」

ラムはなんと涙ながらにも承知。

「それでよし!」

シナはそう言うと、次に考える。

「どうしよ、女の方もみんなで入る時間設けよっかな~」

「シナが貧乳であるのバレるだけだろそれ。」

ラムは真顔で言うと、シナはムスっとした顔を見せた。

「何よ貧乳で悪い~?ケープで隠れるからいいんです~!」

すると、偶然にも部屋を通りかかったリートは言った。

「ええっ…シナ、そんな事したら男子に覗かれちゃうよ…」

「大丈夫!リートの裸を覗くヤツなんて私がボコボコにしてやるわよ~!
そういうリートは逆に男湯覗きたいんじゃないの?」

シナが言うと、リートは顔を真っ赤にして混乱。

「そっ…そそそそんな事ないよ!」

「今は何が熱いのかな~?」

シナが聞くと、リートは急に真面目な顔を見せた。

「ユネイとツウのカップリングです…!」

それを聞いた一同は溜息。
リートは自分で口走った為に口を手で塞ぐと、シナは笑う。

「いいのよ、平常運転でよかったよかった。」

リートは黙り込んでしまうと、ルネアがシナに言った。

「そう言えば、シナさんが案を出した平和の歌企画あったじゃないですか?
あれをテナーさんにも相談したんですけど、手配してくれるそうです。」

それを聞いたシナは喜ぶと跳ねる。

「やっほー!ありがとルネア!」

リートはそれを聞いて首を傾げた。

「平和の歌企画…?」

「そう!私達が多くの人に平和を象徴する歌を披露するの!素敵でしょ!」

シナはリートの手を持ってそう言ったが、リートは難しそうな顔をする。

「作曲…誰がやるのかな…。」

「まー手配してくれるって話だしなんとかなるー!」

シナのお気楽にリートは微笑。

「みんなで歌いたいね。」

「うん!よっしゃ~!歌練にも気合入っちゃうぞ~!
絶対成功させるんだから~!」

シナはご機嫌であった。



そしてテナーは、テノを連れて園長室でまめきちと話していた。
園長室はカーテンが少しの隙間以外は閉められ、明かりもなしにほぼ真っ暗。
テノはテナーの通訳をする。

「ふ~ん、じゃあ合唱は全員じゃなくて、パートリーダーだけでやれと。」

「そうだね。本当に訴えるなら、その方がいいと思う。
それとテノ、」

「ん?」

「君に、彼等の歌の作曲をお願いしたい。」

それを聞いたテノは一瞬だけ目を丸くしたが、すぐに目を光らせた。

「おう!任せとけ!俺がアイツ等を頂点に導いてやるッ!」

「頂点を決める歌ではないよ。」

まめきちが言うと、テノはつまらなそうな顔をする。
するとまめきちは言った。

「君の能力を見込んで言っているんだ。」

「知ってるよ。俺様の良さをわかってだろ!」

テノは胸を張って言うと、まめきちは溜息をついてしまう。
するとテノは咄嗟にテナーの通訳をした。

「でも多くの人に歌を聞いてもらうって、各所巡ってたら大変じゃねぇか?」

「そうだよ。だからその為に、協力して欲しい子がもう一人いる。」

二人は興味を示すと、まめきちは言う。

「ま、これはまた今度にしよう。」

「焦れってぇな言えよッ!」

テノは怒るが、まめきちは少し黙ると言った。

「それより…私達の知り合いが、君達に会いたがっているんだ。
君達パートリーダーとルネアにね。」

「は?」

テノが言うと、まめきちはカーテンを捲って外を眺めると言う。

「ただの知り合いじゃない…。
ルネアと同じ能力を持った…知り合いさ。」

テナーとテノが反応すると、まめきちはカーテンを閉めた。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

【完結】両性を持つ魔性の王が唯一手に入れられないのは、千年族の男の心

たかつじ楓
BL
【美形の王×異種族の青年の、主従・寿命差・執着愛】ハーディス王国の王ナギリは、両性を持ち、魔性の銀の瞳と中性的な美貌で人々を魅了し、大勢の側室を囲っている王であった。 幼い頃、家臣から謀反を起こされ命の危機にさらされた時、救ってくれた「千年族」。その名も”青銅の蝋燭立て”という名の黒髪の男に十年ぶりに再会する。 人間の十分の一の速さでゆっくりと心臓が鼓動するため、十倍長生きをする千年族。感情表現はほとんどなく、動きや言葉が緩慢で、不思議な雰囲気を纏っている。 彼から剣を学び、傍にいるうちに、幼いナギリは次第に彼に惹かれていき、城が再建し自分が王になった時に傍にいてくれと頼む。 しかし、それを断り青銅の蝋燭立ては去って行ってしまった。 命の恩人である彼と久々に過ごし、生まれて初めて心からの恋をするが―――。 一世一代の告白にも、王の想いには応えられないと、去っていってしまう青銅の蝋燭立て。 拒絶された悲しさに打ちひしがれるが、愛しの彼の本心を知った時、王の取る行動とは……。 王国を守り、子孫を残さねばならない王としての使命と、種族の違う彼への恋心に揺れる、両性具有の魔性の王×ミステリアスな異種族の青年のせつない恋愛ファンタジー。

聖女の地位も婚約者も全て差し上げます〜LV∞の聖女は冒険者になるらしい〜

みおな
ファンタジー
 ティアラ・クリムゾンは伯爵家の令嬢であり、シンクレア王国の筆頭聖女である。  そして、王太子殿下の婚約者でもあった。  だが王太子は公爵令嬢と浮気をした挙句、ティアラのことを偽聖女と冤罪を突きつけ、婚約破棄を宣言する。 「聖女の地位も婚約者も全て差し上げます。ごきげんよう」  父親にも蔑ろにされていたティアラは、そのまま王宮から飛び出して家にも帰らず冒険者を目指すことにする。  

男女比世界は大変らしい。(ただしイケメンに限る)

@aozora
ファンタジー
ひろし君は狂喜した。「俺ってこの世界の主役じゃね?」 このお話は、男女比が狂った世界で女性に優しくハーレムを目指して邁進する男の物語…ではなく、そんな彼を端から見ながら「頑張れ~」と気のない声援を送る男の物語である。 「第一章 男女比世界へようこそ」完結しました。 男女比世界での脇役少年の日常が描かれています。 「第二章 中二病には罹りませんー中学校編ー」完結しました。 青年になって行く佐々木君、いろんな人との交流が彼を成長させていきます。 ここから何故かあやかし現代ファンタジーに・・・。どうしてこうなった。 「カクヨム」さんが先行投稿になります。

傷モノ令嬢は冷徹辺境伯に溺愛される

中山紡希
恋愛
父の再婚後、絶世の美女と名高きアイリーンは意地悪な継母と義妹に虐げられる日々を送っていた。 実は、彼女の目元にはある事件をキッカケに痛々しい傷ができてしまった。 それ以来「傷モノ」として扱われ、屋敷に軟禁されて過ごしてきた。 ある日、ひょんなことから仮面舞踏会に参加することに。 目元の傷を隠して参加するアイリーンだが、義妹のソニアによって仮面が剥がされてしまう。 すると、なぜか冷徹辺境伯と呼ばれているエドガーが跪まずき、アイリーンに「結婚してください」と求婚する。 抜群の容姿の良さで社交界で人気のあるエドガーだが、実はある重要な秘密を抱えていて……? 傷モノになったアイリーンが冷徹辺境伯のエドガーに たっぷり愛され甘やかされるお話。 このお話は書き終えていますので、最後までお楽しみ頂けます。 修正をしながら順次更新していきます。 また、この作品は全年齢ですが、私の他の作品はRシーンありのものがあります。 もし御覧頂けた際にはご注意ください。 ※注意※他サイトにも別名義で投稿しています。

美しくも残酷な世界に花嫁(仮)として召喚されたようです~酒好きアラサーは食糧難の世界で庭を育てて煩悩のままに生活する

くみたろう
ファンタジー
いつもと変わらない日常が一変するのをただの会社員である芽依はその身をもって知った。 世界が違った、価値観が違った、常識が違った、何もかもが違った。 意味がわからなかったが悲観はしなかった。 花嫁だと言われ、その甘い香りが人外者を狂わすと言われても、芽依の周りは優しさに包まれている。 そばに居るのは巨大な蟻で、いつも優しく格好良く守ってくれる。 奴隷となった大好きな二人は本心から芽依を愛して側にいてくれる。 麗しい領主やその周りの人外者達も、話を聞いてくれる。 周りは酷く残酷な世界だけれども、芽依はたまにセクハラをして齧りつきながら穏やかに心を育み生きていく。 それはこの美しく清廉で、残酷でいておぞましい御伽噺の世界の中でも慈しみ育む人外者達や異世界の人間が芽依を育て守ってくれる。 お互いの常識や考えを擦り合わせ歩み寄り、等価交換を基盤とした世界の中で、優しさを育てて自分の居場所作りに励む。 全ては幸せな気持ちで大好きなお酒を飲む為であり、素敵な酒のつまみを開発する日々を送るためだ。

当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!

犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。 そして夢をみた。 日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。 その顔を見て目が覚めた。 なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。 数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。 幼少期、最初はツラい状況が続きます。 作者都合のゆるふわご都合設定です。 1日1話更新目指してます。 エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。 お楽しみ頂けたら幸いです。 *************** 2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます! 100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!! 2024年9月9日  お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます! 200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!!

実家を追放された名家の三女は、薬師を目指します。~草を食べて生き残り、聖女になって実家を潰す~

juice
ファンタジー
過去に名家を誇った辺境貴族の生まれで貴族の三女として生まれたミラ。 しかし、才能に嫉妬した兄や姉に虐げられて、ついに家を追い出されてしまった。 彼女は森で草を食べて生き抜き、その時に食べた草がただの草ではなく、ポーションの原料だった。そうとは知らず高級な薬草を食べまくった結果、体にも異変が……。 知らないうちに高価な材料を集めていたことから、冒険者兼薬師見習いを始めるミラ。 新しい街で新しい生活を始めることになるのだが――。 新生活の中で、兄姉たちの嘘が次々と暴かれることに。 そして、聖女にまつわる、実家の兄姉が隠したとんでもない事実を知ることになる。

処理中です...