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うちでのサンタさん4
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太一くんと共に来た場所は、近くの海だった。
僕は海を眺め、太一くんは岩の多い方へと歩いた。
僕は慌てて言う。
「太一くん、危ないよ!」
しかし太一くんは慣れた様子でその岩を登っていった。
岩から海を見下ろす太一くん。
僕も隣まで来たが、波の勢いを見ていたら恐怖を感じた。
「太一くん、危ないから離れよう?」
しかし太一くんは言った。
「僕は大丈夫。
ちとせお兄さん、怖いなら離れてる?」
(そんな!こんな小さな子供が一切怯えないのに、高校生の僕が怖いだなんて…!)
「いや!離れない、ここにいるよ。」
「そう…。」
太一くんはそう言うと、僕は立って見下ろしているだけで怖いので座った。
すると太一くんは言う。
「僕のお父さんもね、ちとせお兄さんと同じ事を言ったんだ。」
「お父さんとここに来た事があるんだね。」
僕が答えると、太一くんは頷く。
「ここで、僕は落っこちたんだ。」
「え?」
落っこちた?
こんなところから落ちたら、溺れてしまうのは確実だ。
波も荒いし、子供の力では到底砂浜まで戻る事は…。
すると太一くんは続けた。
「僕が落ちたのを見て、お父さんも落ちた。
でも、いつの間にか寝ちゃってて。
起きたら、僕は一人になってた。」
ああ…。
太一くんは、ここで大事な肉親を亡くしたんだ。
すると太一くんは泣き始めた。
涙を流し、海を見下ろしていた。
「いい子にしなかった僕のせいなんだ…!
お父さんがいなくなったの、僕のせいなんだ…!
僕のせいで、もうお父さんと会えないんだ…!」
そう言って、太一くんは声を上げて泣いた。
太一くんの様子を見て、僕はなんとなく察した。
この子は肉親が亡くなった事を認めていない訳ではない。
真実を知っていても尚、それでも会いたい気持ちがあるのだと。
だからサンタにお願いをしたんだと思った。
でも、願いを聞き入れなかったのは『自分がいい子にしなかった』からだと思ったのかな。
一年いい子にしていた今年も、太一くんの願いは叶わない。
そうしたらその後、太一くんはどうなってしまうのだろう。
現実を受け入れる?
それとも、それでも願い続ける?
どちらにせよ、いずれ太一くんは現実を受け入れなければいけない日が来る。
子供にしては過ぎた苦しみを、一人で背負わせる事になるのだ。
僕はそっと、太一くんを抱き寄せた。
太一くんは驚いて僕を見上げたが、やがて泣き声を抑えて俯いた。
涙を我慢している、僕にはそう見えた。
「沢山泣いていいんだよ。幸いここには、僕と太一くん以外いないみたいだから。」
「うん…」
太一くんは泣き続けていた。
この子は肉親に嫌われていると思っているのかな?
どちらでもいい、太一くんの不安を拭ってあげたいな。
「太一くんはとってもいい子だよ。
それはきっとお父さんにも伝わってる。
太一くんのお父さん、きっと優しい人なんだろう?」
太一くんは泣きながら、何度も頷いた。
そうだよ。
命を懸けて守った子供を、嫌う親はいないんだよ。
ずっと泣いている太一くんを見て、僕はふと思いつく。
僕は自分の能力で、花束を出した。
太一くんは急に目の前に花束が出てきたものだから、目を点にして驚く。
これで鳴き声も涙も止むと、僕は笑顔で言った。
「実は僕、マジシャンなんだよ。」
「そうなの…?」
「うん!
何か欲しい物を言ってごらん?小さい物ならなんでも出してあげる。」
そう言って更に僕は、手に溢れんばかりの花を出した。
とは言っても、僕の能力に花を作る力はない。
これはただの造花だ。
それでも、太一くんは目を光らせていた。
すると太一くんは閃いたのか言う。
「紙!あとは…鉛筆!」
こんな絶壁の上で、何を書くと言うんだろう?
それでも僕は、太一くんの為に紙と鉛筆を出してあげた。
太一くんはそれらを貰うと、ゴツゴツした岩の上で紙に文字を書こうとしていた。
岩の上は海の飛沫で湿っているというのにだ。
岩の上で丸まって書く太一くんを見て、僕は更に傘を作り出して太一くんと紙を守った。
少しして、太一くんは鉛筆をその場に置いて紙を折り始めた。
そうしてできたのは紙飛行機。
太一くんは立ち上がり、僕に聞いた。
「これを海に飛ばしたら、遠くのお父さんに届くかな?」
僕は目を丸くした。
何か伝えたい事でもあるのかな?
「きっと。」
僕はそう言って、太一くんを抱き上げた。
太一くんは急に体が宙に浮くので驚いた。
僕は言う。
「このくらい高ければ遠くまで届くだろう!」
そう言われ、太一くんは感心した様子に。
太一くんは勢いをつけて、海へ飛ばした。
だが。
計算違いだった…!
海から吹く風で真逆に飛んでしまった…!
子供の煌びやかな夢が今ここで崩れ去った…
僕は太一くんの顔色を伺った。
すると太一くんは、驚く事に笑ったのだ。
声を上げて笑った、空元気にも見えた。
僕は太一くんを下ろすと、太一くんは涙を流しながら笑っていた。
複雑な気分で僕はいると、太一くんは言う。
「『会いに行ってもいい?』って手紙を送ったら、断られちゃった!」
そんな手紙を…!?
傍から見れば遺書だが…!
太一くんは笑顔を僕に向けながら話を続けた。
「そうだよね。
海に落ちた時、僕沢山苦しかったもん。
お父さんも海に落ちた時、沢山苦しい思いしたよね。
…お父さんとっても優しいから、僕に苦しい思いをして欲しくないんだ。」
「…そうだね、きっとそうだ。」
僕はそう言った。
太一くんは海から立ち去ろうとしたので、僕もその後を追いかけた。
太一くんは帰りながら、僕に聞いた。
「ちとせお兄さんって、サンタさんにお手紙出した事ある?」
「え?一度だけ。」
すると太一くんは興味津々に聞いた。
「どんなどんな!?」
「えぇ…。僕には家族がいなかったから、『家族が欲しい』…かな。」
「じゃあ本当にプレゼント貰えたんだね!
今年は何をお願いするの!?」
「さあ、他には思いつかないな。
ああでも家族の次は…友達かな?」
僕は冗談でそう言っておき、笑った。
太一くんは楽しそうに話していた。
「友達?勿体無いよ、サンタさんにお願いするんだよ?
僕なんて孤児院に行く前は、ゲーム機とか貰ったんだからね?」
ゲーム機は能力があれば作れてしまうんだよ…!
って言う訳にもいかないし、適当に誤魔化そう。
「でもやっぱり、人との繋がりは欲しいから。」
うん、これは間違っていない。
父さんやケン兄さんと過ごすようになって、好きになってしまったものだから。
「人との繋がり?なんだか難しいね!」
はは、太一くんにはまだ早かったか。
すると太一くんは言った。
「僕、サンタさんに新しくお手紙書く!」
「え?」
太一くんは意味ありげに笑うと、走って行ってしまう。
「楽しみにしてて!」
楽しみ…?
僕は海を眺め、太一くんは岩の多い方へと歩いた。
僕は慌てて言う。
「太一くん、危ないよ!」
しかし太一くんは慣れた様子でその岩を登っていった。
岩から海を見下ろす太一くん。
僕も隣まで来たが、波の勢いを見ていたら恐怖を感じた。
「太一くん、危ないから離れよう?」
しかし太一くんは言った。
「僕は大丈夫。
ちとせお兄さん、怖いなら離れてる?」
(そんな!こんな小さな子供が一切怯えないのに、高校生の僕が怖いだなんて…!)
「いや!離れない、ここにいるよ。」
「そう…。」
太一くんはそう言うと、僕は立って見下ろしているだけで怖いので座った。
すると太一くんは言う。
「僕のお父さんもね、ちとせお兄さんと同じ事を言ったんだ。」
「お父さんとここに来た事があるんだね。」
僕が答えると、太一くんは頷く。
「ここで、僕は落っこちたんだ。」
「え?」
落っこちた?
こんなところから落ちたら、溺れてしまうのは確実だ。
波も荒いし、子供の力では到底砂浜まで戻る事は…。
すると太一くんは続けた。
「僕が落ちたのを見て、お父さんも落ちた。
でも、いつの間にか寝ちゃってて。
起きたら、僕は一人になってた。」
ああ…。
太一くんは、ここで大事な肉親を亡くしたんだ。
すると太一くんは泣き始めた。
涙を流し、海を見下ろしていた。
「いい子にしなかった僕のせいなんだ…!
お父さんがいなくなったの、僕のせいなんだ…!
僕のせいで、もうお父さんと会えないんだ…!」
そう言って、太一くんは声を上げて泣いた。
太一くんの様子を見て、僕はなんとなく察した。
この子は肉親が亡くなった事を認めていない訳ではない。
真実を知っていても尚、それでも会いたい気持ちがあるのだと。
だからサンタにお願いをしたんだと思った。
でも、願いを聞き入れなかったのは『自分がいい子にしなかった』からだと思ったのかな。
一年いい子にしていた今年も、太一くんの願いは叶わない。
そうしたらその後、太一くんはどうなってしまうのだろう。
現実を受け入れる?
それとも、それでも願い続ける?
どちらにせよ、いずれ太一くんは現実を受け入れなければいけない日が来る。
子供にしては過ぎた苦しみを、一人で背負わせる事になるのだ。
僕はそっと、太一くんを抱き寄せた。
太一くんは驚いて僕を見上げたが、やがて泣き声を抑えて俯いた。
涙を我慢している、僕にはそう見えた。
「沢山泣いていいんだよ。幸いここには、僕と太一くん以外いないみたいだから。」
「うん…」
太一くんは泣き続けていた。
この子は肉親に嫌われていると思っているのかな?
どちらでもいい、太一くんの不安を拭ってあげたいな。
「太一くんはとってもいい子だよ。
それはきっとお父さんにも伝わってる。
太一くんのお父さん、きっと優しい人なんだろう?」
太一くんは泣きながら、何度も頷いた。
そうだよ。
命を懸けて守った子供を、嫌う親はいないんだよ。
ずっと泣いている太一くんを見て、僕はふと思いつく。
僕は自分の能力で、花束を出した。
太一くんは急に目の前に花束が出てきたものだから、目を点にして驚く。
これで鳴き声も涙も止むと、僕は笑顔で言った。
「実は僕、マジシャンなんだよ。」
「そうなの…?」
「うん!
何か欲しい物を言ってごらん?小さい物ならなんでも出してあげる。」
そう言って更に僕は、手に溢れんばかりの花を出した。
とは言っても、僕の能力に花を作る力はない。
これはただの造花だ。
それでも、太一くんは目を光らせていた。
すると太一くんは閃いたのか言う。
「紙!あとは…鉛筆!」
こんな絶壁の上で、何を書くと言うんだろう?
それでも僕は、太一くんの為に紙と鉛筆を出してあげた。
太一くんはそれらを貰うと、ゴツゴツした岩の上で紙に文字を書こうとしていた。
岩の上は海の飛沫で湿っているというのにだ。
岩の上で丸まって書く太一くんを見て、僕は更に傘を作り出して太一くんと紙を守った。
少しして、太一くんは鉛筆をその場に置いて紙を折り始めた。
そうしてできたのは紙飛行機。
太一くんは立ち上がり、僕に聞いた。
「これを海に飛ばしたら、遠くのお父さんに届くかな?」
僕は目を丸くした。
何か伝えたい事でもあるのかな?
「きっと。」
僕はそう言って、太一くんを抱き上げた。
太一くんは急に体が宙に浮くので驚いた。
僕は言う。
「このくらい高ければ遠くまで届くだろう!」
そう言われ、太一くんは感心した様子に。
太一くんは勢いをつけて、海へ飛ばした。
だが。
計算違いだった…!
海から吹く風で真逆に飛んでしまった…!
子供の煌びやかな夢が今ここで崩れ去った…
僕は太一くんの顔色を伺った。
すると太一くんは、驚く事に笑ったのだ。
声を上げて笑った、空元気にも見えた。
僕は太一くんを下ろすと、太一くんは涙を流しながら笑っていた。
複雑な気分で僕はいると、太一くんは言う。
「『会いに行ってもいい?』って手紙を送ったら、断られちゃった!」
そんな手紙を…!?
傍から見れば遺書だが…!
太一くんは笑顔を僕に向けながら話を続けた。
「そうだよね。
海に落ちた時、僕沢山苦しかったもん。
お父さんも海に落ちた時、沢山苦しい思いしたよね。
…お父さんとっても優しいから、僕に苦しい思いをして欲しくないんだ。」
「…そうだね、きっとそうだ。」
僕はそう言った。
太一くんは海から立ち去ろうとしたので、僕もその後を追いかけた。
太一くんは帰りながら、僕に聞いた。
「ちとせお兄さんって、サンタさんにお手紙出した事ある?」
「え?一度だけ。」
すると太一くんは興味津々に聞いた。
「どんなどんな!?」
「えぇ…。僕には家族がいなかったから、『家族が欲しい』…かな。」
「じゃあ本当にプレゼント貰えたんだね!
今年は何をお願いするの!?」
「さあ、他には思いつかないな。
ああでも家族の次は…友達かな?」
僕は冗談でそう言っておき、笑った。
太一くんは楽しそうに話していた。
「友達?勿体無いよ、サンタさんにお願いするんだよ?
僕なんて孤児院に行く前は、ゲーム機とか貰ったんだからね?」
ゲーム機は能力があれば作れてしまうんだよ…!
って言う訳にもいかないし、適当に誤魔化そう。
「でもやっぱり、人との繋がりは欲しいから。」
うん、これは間違っていない。
父さんやケン兄さんと過ごすようになって、好きになってしまったものだから。
「人との繋がり?なんだか難しいね!」
はは、太一くんにはまだ早かったか。
すると太一くんは言った。
「僕、サンタさんに新しくお手紙書く!」
「え?」
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楽しみ…?
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