シャ・ベ クル

うてな

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人間ドール開放編

第四十話 それは幸運ではなく不運。

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 そして善光。
善光は随分と古臭い建物に到着。

(本当に人がいるのか…?)

硬いコンクリートの塀の上には電気柵。
その柵にスズメが平気そうに留まっているのを見て、電気柵は起動していないものと知る。
善光は壊れかけた塀を登り、難なく敷地内に侵入できた。

「人もいないし…外れか?」

すると善光は安堵した。

「あー良かった。変な奴いたらどうしようかと。ま、念の為少し探索しておくか。」

そうして善光は建物裏の方を探索していると、不気味な声を聞く。
すすり泣く声や大声や大きな溜息等、建物の小さな穴から聴こえてくるのだ。
建物の小さな穴は端から端までいくつかあるのだが、その一つ一つから声が聞こえる。
善光は気味悪がって見ていると、一つの穴から顔が覗き込んでるのが見えた。

「うわっ!なんだよこれ…!」

善光は驚くと、善光の声に穴の中から声が群がる。
皆「助けて」と助けを求めるのだ。
すると、穴の中から覗き込んでる顔が言った。

「あ、ロディオンの友達の生臭い子。」

それを聞くと、善光は急に怒った顔で

「誰が生臭いだ!って、生臭いとか言う奴ニコライかよ!…あれ。」

と、ニコライとわかった所で落ち着く。
穴の方を見ると、ニコライは笑顔で手を振ってきた。

「はぁ!?当たり!?…運がいいのやら悪いのやら…」

善光はブツブツと自分の運の事を考えつつも、ニコライのいる穴の前に向かう。

「俺達、お前を助けに来たんだぞ。」

すると、ニコライは意外そうな顔をして言った。

「意外だな。ここ鉄の扉で閉まってて、なんか壊せそうな物さがしてくれよ。」

「んなもんある訳無いだろ!ったく…ロディオン達へ知らせに戻るから、待っててくれ。」

「あぁ!?壊せそうな物を出してから立ち去れ。あー、それにしても腹減った。」

捕まっているのにも関わらず緊張感がないニコライに、善光は溜息しか出てこない。
善光は戻ろうと足を動かすと、正面に人を発見。
見た目からして、ここの社員だろうか。

「侵入者だ!」

そう言って追いかけてきたので、善光は走って逃げる。

「ヤベ!なんて運が悪いんだ!」

ニコライはその様子を見ていて、善光が塀を登ろうとしている所を引きずり下ろされるのを見た。
善光が捕まってしまうので、ニコライは微妙な反応を見せる。

(使えねえヤツだ、余計な手間を。)

ニコライはそう思いながらも、穴から赤い風見鶏をわざと落とす。
それから扉の前にやってくると、扉に突進して無理矢理こじ開けようとするのであった。



 セオーネは、自分に割り当てられた目的地にやってきていた。
しかし目的地はただの葬儀会館で、葬式に関してのお話を聞いているだけ。

「なるほど、日本ではお線香を焚くんですね…!」

セオーネは仕事を忘れているのか、館の人の話を長々と聞いているのだった。



 ロディオンは夢の島学園に戻ってきた。
ロディオンは門前に人影を見つけると、走って門前に向かう。

「お~誰だっ!」

と言ったが、それはセオーネでも善光でもロッキーでもなく、先日ロディオンが家までお邪魔していた守衛であった。

「ポポフ!」

守衛はそう言うと、ロディオンは恥ずかしそうに自分の後頭部を撫でる。

「ありゃ、人違いだった。」

「誰かと会う約束か?」

守衛は若干妬けた様な顔で言うと、ロディオンは笑顔で言った。

「うん!サークルのみんなを待ってるんだ!」

「依頼を受けるサークルなんだろう?どんな依頼なんだ?」

ロディオンは言いづらそうにするが、周りに誰もいない事を確認してから守衛の耳元で言う。

「誘拐された人探し。」

「えぇ!?ちょ、危険な事じゃないよな!?」

「そうなんだけど…。でも、俺達なら大丈夫さ!」

ロディオンは笑顔で答えるので、守衛は困った顔を見せた。

「あのなロディオン、お前の故郷には警察がいないから知らないのかもしれないけど…こういう事件は警察に連絡するもんだぞ…」

「あ~守衛さん俺を馬鹿にしたな~!俺だってわかってるよ、でも!警察だって取り合ってくれない様な奴等が相手なんだよ!」

守衛は首を傾げてしまうと、次にロディオンの額に手を当てた。

「風邪引いてる?」

ロディオンは暴れる様に守衛の手を払うと、

「裏では恐ろしい事が沢山起こってるんだよ!信じてくれ守衛さん!」

と必死になって言う。
しかし守衛はそんなロディオンが可愛く見えたのか笑った。

「面白いなロディオンは。でも危険な事に首を突っ込んじゃダメだぞ。」

ロディオンは言っても無駄だと感じたのか黙り込んでしまう。
そして守衛に頭を撫でられるので、ロディオンは俯いた。
瑠璃は周囲をキョロキョロしていて、そこで帰ってきたロッキーを発見。

「ロディオン先に帰ってたんか。うちの所はただの葬儀屋やったで。」

ロッキーの声に気づいて、ロディオンは守衛に笑顔で手を振ってからロッキーの方へと向かう。
守衛はロディオンがロッキーの方へ向かうと、つまらなそうな顔をしてロッキーの屈強な体を見た。

(俺より男らしい男性…。ロディオン、こういう男の方が好みなのかな…)

それから自分の腕を見ると、やるせない気分になる。

「おかえりロッキー!お疲れ~」

いつものスマイル、ロディオンの笑顔を見るとロッキーもニコッとした。

「ロディオンもお疲れさん。ロディオンの所は当たりやったか?」

「当たりっぽいんだけど、ニコライはいなくてさ…。」

するとロッキーはやれやれとした顔で

「それはつまりハズレやんけ。」

と言う。

「人間が捕まっているのは確かなんだ!ハズレな訳ないだろ!」

「アンタな、本来の目的を忘れるんやない。平静を忘れてすぐ別の事に走るのはアンタの悪い癖や。心が痛むのはわかるで?でも目的は忘れんといて。」

ロディオンはしょんぼりしてしまうと、だんまりと近くの電柱に寄りかかった。



 数時間後、制限時間のギリギリでセオーネは帰ってくる。
しかも満足そうな笑顔で帰ってくるのだ。

「こりゃ収穫無しやなバーリンも。」

ロッキーの言葉を、ロディオンは聞こえてもいないのか腕時計を見つめたまま。
それを見たセオーネはロディオンに話しかける。

「ロディオン、どうしたのですか?」

ロディオンはセオーネに気づくと笑顔を見せた。

「セオーネおかえり!善光は!?」

「え…見てません。」

それを聞いたロディオンはギョッとした目を見せると、腕時計を見せる。

「時間が過ぎたんだ今!善光は時間厳守する人間だぞ、帰ってこないワケがないんだ!
待ち合わせしても、時間の十分前には目的地にいる奴なんだよ!」

「そ、そういう事もあるやろ。」

とロッキーは言い、セオーネも苦笑。

「そうですよロディオン、たまにはそういう事もあります。」

しかしロディオンは嫌な予感しかしないのか、守衛に言った。

「守衛さん!上郷家の坊ちゃん知ってるだろ?その坊ちゃんがここに来たら『ロディオンが迎えに行くからここで待ってて』って言っといて!」

「あ、あの子ね…わかった。」

と守衛が返事をすると、ロディオンは走って善光の目的地へ向かう。

「待てやロディオン!」

ロッキーもロディオンを追いかけ、セオーネも瑠璃の手を引っ張る。

「ロディオン、お待ちください!」

「アイツ…いつも走って私を置いていく…」

と、瑠璃は無愛想な顔で小言を吐いていた。
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