シャ・ベ クル

うてな

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人間ドール開放編

第二十八話 お願い!ストーカーに遭ってる姉を助けて!

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 ロディオン達は学園に着くと、ニコライは学園を見上げる。

「ここがお前の学校?」

「うん!」

ロディオンは笑顔で答え、するとニコライは聞いた。

「学校の人以外は入ったらダメ?この学校。」

「ん~、基本はね。ま!俺の手にかかればニコライを校内に入れる事も可能…!行く?」

それに対しニコライは

「また今度。じゃ、俺は帰る。」

と立ち去ろうとする。
ロディオンはニコライの腕を掴んだ。

「待って!ニコライせっかく日本に来たんだから、一緒にシャ・ベ クルのお仕事やらない?」

ニコライはロディオンの腕を振り払おうとするが、何度振ってもロディオンの手が取れない。

「離せ。」

と怒り混じりにニコライは言うと、ロディオンは真面目な顔をしたまま首を横に振った。
ニコライは溜息をつくと言う。

「やらない。俺は忙しい。」

ロディオンはふと気づいた顔をすると言った。

「ねえ、今朝『休み時間』って言ってたけど、何かやってるの?」

「仕事。」

ニコライは言うので、ロディオンは驚く。

「日本に来てすぐ仕事!?…やっぱりニコライは仕事熱心だなぁ…」

「離せ。」

そう言われると、ロディオンは素直に手を離す。
ニコライはロディオン達に手を振ると言った。

「ヴァルヴァラ、頑張れ。」

ヴァルヴァラはムッとし、何も言わずにニコライを見送る。
ニコライは立ち去ると、皆の視界に入らない場所にてロッキーを発見。

「よお、ロッキー?」

ニコライはそう言って、執事服からスーツに着替える。
それはすぐに終わり、ポケットからタバコを取り出した。

「ラズベリーにあんたの監視頼まれてもうたわ。
そう言えばロディオンの学園には行けたんか?『ターゲット』は発見したんか?」

ロッキーはそう答えた。
ニコライはタバコに火を点け、タバコを吸う。
ロッキーはタバコの臭いが嫌いなのか、鼻を手で押さえた。

「学校まで行った。ロディオンに言えば学校の中に入れそう。」

「ようやった。…お前もよくこっち側の仕事引き受けるなんて言ったな。
最近は誘拐の仕事ばっかやけど…人を暗殺する事もあるんやで?ええんか?」

「俺には関係ない、赤の他人が死んでも。お前はそんな事聞くからこの仕事向いてないんだぞ。」

「なんやと!?偉そうに!てか根拠無さすぎやろ!」

ロッキーは怒鳴るが、ニコライは鼻で溜息をつくだけ。

「たーげっとの確認は今度。俺は現場の仕事より先に、実技を学びたい。」

「…せやな。ったくラズベリーのヤツ、ニコライに仕事の基本も教えずに現場に行かせるなんて何考えとるんや。」

「口で言うより楽だからな。…帰る。」

「せやな。」

そしてニコライはタバコを側溝に捨てると、ロッキーと共にその場を立ち去るのであった。



 ロディオン達はヴァルヴァラを教室に送った後、朝一番に依頼箱を確認しに部室へ向かった。
しかし部室内で目立った服装の人を見つけたので、部室を覗く。
すると部室には、ロディオンの元セフレである橙華がいた。

「橙華!どうしたの!?」

ロディオンは聞くと、橙華は困った顔を見せてロディオンに言う。

「ねえ、依頼ってさ、ちょっと危険な内容でも聞いてくれる?」

それを聞いたロディオンは眉を潜めた。

「何かあったのか?俺に教えてくれ。」

橙華は部室の椅子に座り込むと言う。

「あのね、姉がさ、ストーカーに遭ってるんだよね…。」

善光は

「大河のストーカーしてたヤツの姉がストーカーされてんのか。」

と言うと、橙華は

「それとこれとは関係ないし!」

と言った。
ロディオンは真摯な顔を見せると言う。

「ストーカー被害か!困ってるのなら俺達がどうにかするしかない!助けよう!」

その言葉に対し、善光は冷静な様子で言った。

「いや、普通に警察に言えば解決してくれる問題じゃないか?」

橙華は難しい顔をして言う。

「ダメなのよね…。」

善光が「ん?」と首を傾げると、ロディオンは笑顔で頷いた。

「大丈夫!俺達が解決しちゃうぞ!」

橙華は喜ぶとロディオンと両手で握手してしまう。

「ありがとう!姉の『白華(シハル)』って言うんだけど!白華の事よろしくね!」

「おう!」

とロディオンは言うが、善光は微妙な顔をした。

「橙華と言い姉と言い、名前の癖強いな。」

ロディオンはそれを聞くと言う。

「橙華と白華は二卵生双生児なんだ。姉の白華はなんとアルビノだから肌が真っ白!
それを見た親御さんが、肌の色がまるで橙と白のメダカみたいだって事でそう名前をつけたんだって!」

善光は

「アルビノ…?」

とわかってない様子なので、橙華は笑う。

「アルビノは色素があんま無い人の事。だから肌が白いのよ!病気になり勝ちだけどね。本人も目立つから気に入ってないし。」

「へー、なんでお前も目立つ格好してんの?」

と善光が聞くと、

「白華の為に派手にしてるのよ。一人が目立つより、二人で目立った方が心が軽くなると思って。」

橙華の言葉に善光は納得する。
それから橙華は瑠璃の方をふと見た。
瑠璃は顔を引き攣ると、橙華は笑顔を向ける。

「この子の髪の毛も不思議な色してるわね。」

瑠璃は怒った様子で

「お前と一緒にするな!これは自毛だ!」

と言うので、橙華は驚いた様子を見せた。

「自毛!へ~!面白い子ねこの子。」

ロディオンは苦笑してしまうと、次に言う。

「じゃ、放課後ね。」

その言葉に橙華は頷くと言った。

「うん!よろしく!シャ・ベ クル!」



 スナックの地下。
ここではヤクザや殺し屋達が暇を持て余す部屋があり、トレーニング部屋なども完備されている。
トレーニング部屋ではニコライが、ダンベルカールをしながら日本語の勉強中。
日本語の勉強と言っても、日本のアニメをテレビで見つつ言葉を覚えている様子。
隣にロッキーが来ると、ニコライに言った。

「片方十キロ?アンタ貧弱なんやな。」

ニコライはムッとした顔をロッキーに向けると、ロッキーが持つダンベルを見る。
それは三十キロで、ニコライはロッキーの屈強な腕を見た。

「凄い。ロディオンよりある。」

ニコライがそう言うので、ロッキーは表情が強張っているが照れている。

「ふ、ふーん。ま!このくらいは当たり前や!ロディオンとなんて比べるもんやないで!」

ロッキーは強がるように言うが、ニコライは日本語の教材に目をやる。
するとニコライは時計を見て、すぐにダンベルを置いて立ち去った。
ロッキーはニコライの向かう先を見ると、それはトレッドミル。
ニコライは日本語を学びつつ、ランニングを始めた。

「勉強熱心やなぁ。アンタ休憩しとるん?もう三時間ずっと繰り返しトレーニングしとるで?」

「ん?」

とニコライは白々しくロッキーの顔を見るが、次に言った。

「疲れてない、からいい。」

ロッキーは顔を引き攣ってしまうと言う。

「アンタ…体の痛みだけじゃなくて疲れもわからんのか…?倒れる前にやめた方がいい!」

そう言ってロッキーはニコライをマシーンから下ろすと、ニコライは抵抗した。

「おい!邪魔をするなロッキー!」

「いいから休め!アンタぶっ倒れても知らんで?ロクに運動もした事ないヤツが三時間ぶっ続けでハードな運動するもんやない。」

「仕事は一日できた!運動も同じ!」

ニコライの言い分を聞くと、ロッキーは呆れてしまう。

「アンタ、自分のできる限界考えて行動せい。…って、限界がわからんからこうなっとるんか…。」

ロッキーはニコライを休憩部屋に引きずって無理にベッドに寝かせると、つい溜息を吐いた。

「お前の面倒、少しは見てやるわ。アンタが倒れたら、ロディオンに何て言われるかわからんからな。」

ニコライはそんな言葉は聞いておらず、再びトレーニング部屋に向かおうと起き上がる。
ロッキーは怒った様子で再び寝かせると言った。

「大人しく休んどき!次動いたら一発ブチ込むで!」

ニコライはそれに舌打ちをすると、大人しく毛布を被る。
それから日本語の教材を開くと、無慈悲にもロッキーのゲンコツが当たった。

「邪魔するな!」

とニコライは怒るが、ゲンコツの痛みに関しては何一つ口に出さない。
更にニコライはタバコに手を出すと、ロッキーは焦る。

「うちの前ではタバコ吸うのやめい言うたやん!うちタバコの匂い嗅ぐと蕁麻疹になんねん!」

「はぁ~…?めんどくさい。」

ニコライは小言を吐くと吸うのをやめ

「代わりに本を読む。」

と得意気に教材を読むので、ロッキーはもう一度ゲンコツを食らわそうかと拳を出す。
が、やめる事に。
ロッキーはニコライを見ると、再度溜息が出てきた。

(コイツはどうやって躾ければええんや…。頑固な上に叩いてもわからん…お手上げや。)

ロッキーは、ニコライの扱いに少々手こずっている様子だった。
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