シャ・ベ クル

うてな

文字の大きさ
上 下
28 / 48
人間ドール開放編

第二十七話 電車には悪質な変態がいるんだぞ!

しおりを挟む
 数週間後のある日、ロディオン達はいつも通り学園を出発するのだが、今日からロディオンの妹であるヴァルヴァラも学園に通う事になっていた。

「お前の妹、入学許可された理由ってなんなんだ?俺達の学園って、夢抱いてないと入学許可下りねぇ特殊な学校だろ。」

善光はロディオンに聞いた。
するとロディオンは空に視線を向けて言う。

「俺と同じなんじゃないかな。俺やセオーネが同じだから、同じの目指したくなったんだろう。」

「ほう。」

と善光は首を傾げながら聞いていた。
そして三人は庭に出ると、正実の屋敷からヴァルヴァラが小走りでやってくる。

「神様~!」

ヴァルヴァラは笑顔でロディオンに駆け寄ると、ロディオンに寄りかかって顔を赤らめた。

「今日からヴァルヴァラも同じ学校ですわね。神様のお手伝い、学校生活共々頑張りますわ…!」

ロディオンはヴァルヴァラに微笑むと、ヴァルヴァラの頭を撫でる。

「そうだな!お兄ちゃんと一緒に頑張ろうぜヴァルヴァラ!」

ヴァルヴァラは照れて体を揺らすと、瑠璃はロディオンにくっつくヴァルヴァラが気に入らないのか不機嫌な顔をした。
善光は瑠璃を見ると言う。

「神様、大丈夫か?」

「なわけあるか!」

と瑠璃は善光に当たるように怒ると、善光は眉を軽く潜めた。

「俺に当たらなくても…」

善光の呟きを瑠璃が気に留める事はなく、ロディオンは笑顔で言う。

「じゃ!学園に出発だ~!」

「はい!」

ヴァルヴァラもそう言うと、みんなで家の門を出る。

すると門の近くで、ニコライが待ち伏せしていた。
日本語の教材を眺めながら、日本語の発音の練習をしているニコライ。
ニコライはロディオン達に気づくと、教材を閉じてロディオン達の方へ向かう。
ニコライはお団子頭と執事服に軽くアイメイク、しているのだが残念ながらサングラスを着用していた。
サングラスを指で調整するニコライで萌え度アップ(萌え度アップはロディオンの主観である)。

「も…」とロディオンが呟くと、ニコライは一回転してから笑顔で言った。

「おはよう!今日から『ルーシャ』と呼んでください!絶対。」

と、敬語の後は声色を暗くして言う。
以前より上手くなった日本語、柄にもなくウインクをするニコライ。
但しサングラスのせいで見えない。
ヴァルヴァラは微妙な反応をした。

(セオーネ達に悟られない為か…?にしても、日本語の上達が早すぎないか…?)

善光はそう思っていると、ロディオンは顔を真っ赤にして

「萌えるぅ~ッ!」

と背を仰け反らせて興奮するのであった。

「うるせぇ。」

善光は無表情でメモ帳の角でロディオンの頭を軽く殴る。

「痛。」

とロディオンは呟き、落ち着きを取り戻す
のであった。
ニコライは笑顔を見せると言う。

「私は今は休み時間、初日なので、ヴァルヴァラ様の護衛します!ヤポーニヤ(日本)は危険な国と聞く!」

ヴァルヴァラは謎の待遇に微妙な顔を変えられずにいる。
善光は無表情のまま

「いや、どこの国と間違えてんだ?て言うかお前の村の隣町より安全だぞ日本は。」

と言うが、ニコライは聞く耳を持たず。

「うるせえ。セクハラいるからダメ。」

ニコライは満面の笑みのまま暗い声色で言った。
ニコライはヴァルヴァラを見ると

「”正実に変な事されてねえか?”」

と聞くので、ヴァルヴァラは難しい顔をしてしまう。

「”まあ…触られはしないけど、覗きはよくされるわ…”」

それを聞いたニコライは、満面の笑みのまま正実宅の門を拳で思い切り叩く。
ヴァルヴァラはその音に驚いてしまうとニコライは言った。

「”行くぞお前ら、学校だろ。”」

そして先頭を歩くニコライ。
ロディオンはニコライの後ろを歩いていると、ふとニコライの尻に手を伸ばす。
それを無言で善光に叩かれると、ロディオンは下唇を噛み締めてニコライのお尻を見つめていた。



 人で溢れる駅に着いた一同。
ロディオンはホームにて、ニコライに言った。

「ルーシャ知ってるか?電車ってな、痴漢って言う悪質な変態がいるんだぞ。」

「あくしつなへんたい…?」

とニコライは呟く。

「兄貴の尻触ろうとした痴漢が痴漢を語るなよ。」

善光はサラッと言った。
ロディオンは涙を堪えたような顔で

「ニコライは別腹です!」

と言ってから、すぐにいつもの顔に切り替えてニコライに説明をし始めた。

「体を触ってくるんだ!女の子の!
だからヴァルヴァラが危ない…そう、守ってあげないと!ここは満員電車だから特に気を付けないと…」

ロディオンが言うので、ニコライは真面目な顔で頷く。

「わかった。」

「うん!いい子だ!」

ロディオンは笑顔でニコライの頭を撫でる。
しかしニコライは頭を撫でられたくないのか、無慈悲にもロディオンの手を叩き払った。
善光は鼻で笑ってしまうと、ロディオンは深刻な顔をして叩き払われた手を見つめるのであった。



 そして一同は改札を通り電車に乗り込むと、早速ヴァルヴァラは満員電車の人の波に流された。

「きゃっ」

ヴァルヴァラが声を上げると、ニコライはヴァルヴァラの手を引っ張って自分の胸に抱き寄せる。
そして角までヴァルヴァラを連れて行くと、ニコライは壁になって

「大丈夫です?」

とヴァルヴァラに聞いた。
ヴァルヴァラはニコライが嫌いなので、感謝できずに

「ええ。」

と不機嫌な声を混ぜてお礼を言った。
しかしニコライも満員の人に押され、ヴァルヴァラを潰しそうになってしまう。
ヴァルヴァラは息苦しくなって言った。

「苦しいわよ…!」

ニコライは精一杯押し戻そうとしているが、押し戻せずに

「”支えきれない…!クソ!”僕は負けない!」

と言っていた。

「一人称を変えんなよややこしい!」

善光がツッコミを入れ、ロディオンはニコライの頑張りを見て一人、無言で興奮しているのである。

しかし、ここでロディオンは思わぬ盲点に気づいてしまう。
人々に押し潰され、唸り声を上げてヴァルヴァラを支えようと踏ん張るニコライ。
ロディオンは(エロい)よりも先に思ってしまうことがあった。
ロディオンは顔を真っ青にする。

「待て!このシチュエーション!!ヴァルヴァラが痴漢に遭わなくてもニコライが痴漢に遭ってしまう!!」

そう言うと、ロディオンはニコライの方へと向かった。

「あんな大男が痴漢に遭うか!」

と善光はツッコミを入れるが、ロディオンは

「萌えた男達にニコライが襲われたら…!汚されたら俺…!俺我慢なんないぃ~!」

と言って聞いていない。
善光は呆れて言う。

「馬鹿かお前は!漫画の見すぎだ!神様、ほっといて待っとこうぜ?」

だが、瑠璃は既に善光の近くにいなかった。
勿論瑠璃はロディオンの後をつけているのである。
それを見て善光は溜息をつくと

「また俺だけ置いてけぼりかい。」

と言ってその後を追いかけるのであった。
ロディオンは

「ごめんください~ はい通して~」

と言って人の隙間を通り、やっとの思いでニコライの元に辿り着く。
ニコライはロディオンを見て言った。

「ロディオン…!」

ロディオンはシリアスな面持ちをして頷き、ヴァルヴァラを守るニコライに更に覆い被さるように壁になる。

「ふんっ!」

ロディオンは足腰と腕に力を入れると、二人を守る立派な壁となったのだった。
ニコライはロディオンの力に驚くと、ロディオンの腕の筋肉が気になって腕を触り始める。
ヴァルヴァラはロディオンを止めた。

「神様…!私のためにやめてください…!ヴァルヴァラはこのくらいの人混み、耐えられます…!」

善光は無表情で

(「私のため」って…、多分ロディオンは兄貴のためにやってんだろうけど。)

と思っている。
ロディオンはニコライに腕を触られてくすぐったいのか

「あんっやめてルーシャ!ちょっ流石に鬼…!」

と言うと腕がガクッとなって人混みに押されそうになった。
が、ロディオンは再び支える体制に素早く入る。

「”凄い筋肉。どこでつけた?”」

ニコライは感心して聞くと、ロディオンは苦笑。

「”どこでだろーね~?”」

瑠璃は

「ラディオンの筋肉はそんなに凄いのか?」

と誰に聞いているわけでもないがとりあえず聞いてみると、善光は

「ああ、今までどれほどの部活を優勝に導いてきたと思ってやがる。コイツ一人いるだけで試合は勝ち。それなりに足腰筋肉ついてるはずだ。」

と説明してあげる。
ヴァルヴァラは目を輝かせて言った。

「流石神様ですわ…!”ニコライは図体だけですもの。”」

するとニコライは素を剥き出しにして

「あ?」

とヴァルヴァラを睨みつけた。
ロディオンは微笑み、

「ニコライはインドアってなだけで、俺がアウトドアだからちょっと体力あるだけだよ。」

とフォローするのであった。
しおりを挟む

処理中です...