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人間ドール開放編
第二十一話 心は、不潔か純潔か
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ロディオンは部室に入り
「セオーネいるか!?」
と呼ぶと、セオーネはなんと殺し屋ロッキーを拘束した状態で待っていた。
セオーネは
「ロディオン…!」
と不穏な表情を和らげずに言うので、ロディオンは目を丸くした。
「緊縛プレイ…?」
それに対し、思わずロッキーはツッコミを入れる。
「違うわッ!」
「どうした?」
ロディオンはさっきの言葉はなかったかのように、セオーネに聞く。
セオーネはロッキーを前に出すと言った。
「この殺し屋さんがまた悪事を働きまして…。
でもロディオンの友達なので、警察に出すべきか出さぬべきかずっと悩んでいました…。」
ロディオンは苦笑すると
「オイ?ロッキー?」
とロッキーに話しかけると、ロッキーは冷や汗で答える。
「すまんロディオン、これもウチの仕事やから。」
ロディオンは困った顔をすると
「なんでセオーネなの?」
と聞くと、ロッキーは
「知るかいな!依頼主に聞きぃ!」
と言うだけ。
すると、ロディオンは人形売買業者に思考が繋がる。
以前ニコライを襲ってきた人形売買業者の男達を思い出して、ロディオンは不安を連ねていくが、そこでふと思い出す。
「セオーネ、そうだこれ。」
ロディオンはニコライが作った白い風見鶏をセオーネに渡した。
セオーネは
「風見鶏ですか…!風見鶏は魔除けの品ですね…!」
と感心すると、ロディオンは笑顔で言う。
「そそ。故郷でニコライに作ってもらったんだ~」
セオーネは風見鶏を受け取ると
「ニコライさんの気持ちがこもった風見鶏なんですね…!」
と目を閉じて感謝をしていた。
その瞬間、ロッキーはセオーネの隙を見て逃げ出す。
「ロッキー!」
ロディオンが呼び止めるが、ロッキーは止まらず。
逃げたロッキーは部室を出て、丁度入る所だった善光に出会い頭にぶつかりそうになる。
しかし善光が足を止めたためぶつからず、そのままロッキーは逃げ出してしまった。
善光はロッキーを見送るとすぐに部室に入って
「おい何かあったのか!」
と状況を聞く。
ロディオンは微笑んで
「いやいや大丈夫。あれで懲りてくれるといいんだけどさ。」
と答えた。
善光はそれを聞いて軽く息をつくと、セオーネに言った。
「ロディオンから話は聞いたか?」
その言葉にセオーネは首を傾げると、ロディオンは
「あ!今から故郷での話をするぜ!」
とセオーネに全てを話すのであった。
セオーネは全貌を聞くと
「で、では私や神様が人形にされる可能性があると…。私のどこに人形にしてしまいたい要素が…!」
と言うと、ロディオンはセオーネの容姿を舐めるように見る。
その視線にセオーネは体を庇うと、ロディオンは言った。
「まずは美人だろ、おっぱいデカイだろ、スタイルいいだろ。」
それを聞いた善光は
「それは男の憧れだろ!」
とツッコミ。
セオーネは顔を真っ赤にして
「お、おおおっ…!ロディオン!変な言葉を使わないでください…!」
と反応。
ロディオンは笑顔になると言った。
「いいじゃん!て言うか、男の憧れでも十分人形にされる可能性あるしぃ~」
確かにご最もだと思ったのか、善光は何も言わなかった。
すると、セオーネは眉を困らせて呟く。
「そうですか…。個人的には私より、故郷住みのニコライさんが一番狙われそうに思ったのですが…そうでもないのですか。
ニコライさん眼が綺麗ですし、狙われてもおかしくない気がして…」
その呟きに、ロディオンは反応した。
「あ。」
善光はロディオンの反応に
「どうした?…まあ確かに眼は綺麗だったけど、あの兄貴なら大丈夫だろ。」
と言う。
だが、ロディオンの表情は優れないままだった。
セオーネは
「ロディオン…?」
と心配をすると、ロディオンは善光を連れて廊下に出てしまう。
「どうした?」
善光は改めてロディオンに聞くと、ロディオンはセオーネがいない事を確認してから言った。
「オッドアイってどう思われる?人形売買の人とかに。」
善光は顔をしかめると答える。
「あ~。そう言えばアイツ珍しい色したオッドアイだったな。危ないかもな。」
ロディオンも眉を潜めると、善光は言う。
「でもいつも眼帯してるんだろ?バレないだろ。」
それを聞いてロディオンは安心したのか
「そ、そうだよな!アハハハ!」
と緊張した顔で笑うのであった。
ロディオンは善光に背を向けると、善光はロディオンの服に値札が付いてるのを発見。
大方、服を購入したまま値札を外し忘れたのだろう。
「アハハハハハ」
ロディオンは笑いながらも部室に戻っていき、セオーネは驚いた顔でロディオンを見つめる。
ロディオンは学園生徒の依頼が書かれた用紙の入った依頼箱を確認すると、依頼用紙を取り出して中身を確認する事に。
するとロディオンは、何かに気づいた顔をした。
「急用を思い出したわ!」
ロディオンは言い、すぐに部室を出ていく。
セオーネは
「あ!依頼ですね!私も行きます!」
と追いかける。
瑠璃もロディオンを追うので、善光も
「おい!俺を置いてくな!」
とついていくのであった。
ロディオンが向かった先は高校生教室がある第二校舎。
登校してきた高校生がバラバラうろつく中、ロディオンはその中に紛れる奇抜な格好をした女子へと足を運ぶ。
ロディオンが向かった女子の頭はなんと橙色に染まっており、但し髪の内側は黒。
更には振袖かと思うほど派手な着物をまとっていた。
ぱっつんと切られたショートヘアが着物とマッチして、奇抜でありながらも風流さをどこか感じさせる。
この時代にはこの手の染髪は無いため、彼女の橙の髪はカツラである可能性が高い。
「『橙華(トウハ)』ちゃん!」
とロディオンが話しかけると、その女子はロディオンを見て笑った。
「ロディオン!も~びっくりしたじゃん!」
その馴れ合いを見た瞬間、セオーネと瑠璃の顔色が変わる。
「ロディオンとあの子は一体……」
セオーネは考え始め、瑠璃は
「アイツ…!また女と…!」
と怒っていた。
善光は言う。
「あれはロディオンのセフレの一人だな。『銘田 橙華(メイダ トウハ)』、よくロディオンと絡んでる女だ。」
セオーネは顔を真っ赤にすると
「せっ、セセセセセセせ…!?」
と動揺して言葉をロクに話せていない。
瑠璃は怒った表情のまま言った。
「やはりか!」
セオーネは心を決めてロディオンに近づくと
「ロディオン!その子は一体…!」
と自ら聞く。
ロディオンはセオーネを見ると
「オイ!?みんな来てたの!?」
と驚き、橙華の事をチラっと見た。
橙華は笑う。
「あ、彼女とかじゃないから安心して!」
セオーネは顔を真っ赤にしたまま
「ろ…!ロディオン!!」
とロディオンを呼ぶ。
ロディオンは
「はいぃ!!」
と顔を歪めて返事をすると、セオーネは憤りのある表情を見せて言った。
「あなたは穢れています…!!
愛がないのに…人を手にかけるだなんて…!非道過ぎます!今すぐおやめなさい!」
善光は小声で
「セフレは同意の上だから良くね?」
と呟くと、セオーネに圧のある目で睨まれるので善光は黙り込んだ。
セオーネの訴えに、ロディオンの表情からいつもの活気がなくなる。
一同がロディオンの様子に異変を感じていると、ロディオンは言った。
「じゃあ愛があったら好きな人に手を出していいのかい?」
セオーネが首を傾げると、ロディオンは続ける。
「世の中の女にはさ、生涯穢されない『純潔の女』がいる。
男に恋をしてはならない、穢されてはならない孤高の存在が。」
その言葉にセオーネは反応する。
善光は
「純潔…?貞操を守るって事か?」
と言うと、橙華は
「それってつまり、シスターとか?」
と言ってシスターの格好をしているセオーネを見た。
ロディオンはセオーネに微笑む。
「それを好きになってしまったらどうする?」
セオーネはドキッと来たのか胸に手を当ててしまうと、ロディオンは続けた。
「愛したくても愛してはいけない存在だろう?諦めないといけない存在だろう?」
ロディオンはそう言うと、軽く頭を抱える。
「俺は相手の意志を尊重したい、でもそれをすれば結ばれない。」
そう言ってロディオンは黙り込むと、瑠璃はイライラした様子を見せた。
ロディオンは瑠璃の表情を見ると冷たく溜息をつき、セオーネに言う。
「セオーネは、誰かに恋した事ある?」
セオーネはその言葉に戸惑ってしまうと、ロディオンの目を見た。
ロディオンの真摯な目が、セオーネを見つめている。
セオーネは胸を両手で抑えると
「す…すいません…!」
と言い、何も答えられずその場から逃げ出してしまった。
ロディオンはその後ろ姿を見つめると、
「あー、これだから信徒はな。」
と小言を吐く。
それから橙華に微笑むと
「待たせてごめん、向こうで話をしよう。」
と言い、ロディオンは橙華の背を優しく押して生徒のいる廊下から離れようとした。
「ちょっと待て。」
と善光。
ロディオンは
「え?」
と善光の方を見ると、善光が発言する前に瑠璃が言った。
「セフレばっかり作ってたら女の信用を失うぞ!!」
なぜか必死な瑠璃を見て、ロディオンはつい笑ってしまう。
「別に彼女作る気無いし、結婚する気もないからなー!」
ロディオンは言うので、瑠璃は頬を膨らませてロディオンを睨みつけた。
善光は小声で
「それって、今好きな人以外を好きになる気はないって事…」
と呟くと、瑠璃は更に怒った顔で言う。
「ふざけるな!!」
「善光ぅー、俺に何か言おうとしてなかった?」
ロディオンがさっき呼び止めてきた理由を聞くと、善光は「あっ」と言ってロディオンの服をボールペンで指した。
「服に値札付いてるぞ。」
「ん??」
とロディオンは言って服を確認。
橙華はロディオンの服の値札を見ると大笑い。
「ここに付いてるよー!ロディオンっておっちょこちょいなんだね!」
そう言われ、ロディオンは
「あっちゃ~」
と値札の付いた服を脱ぐ。
橙華はタンクトップ姿のロディオンの体を見ると
「相変わらずいい体してるよねー」
と笑い、ロディオンは微笑むと言った。
「橙華ったらいっつもそれだな。」
すると瑠璃は続けて
「汚れた人間のクズ!」
と罵倒し、罵倒されたロディオンは少し怒った顔で
「はぁー?お前は何かに託けて暴言使うな!慎めよな!」
と瑠璃に言った。
善光は
「人前で下ネタ言うロディオンが慎みって言うなよ。」
と言うがロディオンは聞いておらず、瑠璃は
「うるさい腹黒男!」
と罵倒を続ける。
「腹黒?俺は至って自然体ですが。みんなはどう思いますー?」
ロディオンは呆れた顔で言った。
二人の喧嘩に善光は目を丸くして
「ロディオンが怒るなんて珍しい。」
と呟くので、ロディオンは顔を歪めて黙り込む。
橙華は笑い
「この青い子、ロディオンの事が好きなんでしょ!」
と言うので瑠璃は顔を赤くしてしまい、善光は瑠璃の様子を見て
「マジかよ…!」
と驚いた。
ロディオンはそれに対し冷たい表情のまま鼻で笑うと
「勘弁してくれよ~!」
と笑顔でかわす。
そして橙華の腕を引っ張ってせっせと立ち去ろうとするので、瑠璃は勿論いつも通りロディオンの後をつける。
取り残された善光は焦って
「お、おい!俺を放っていくのかよ!」
と、ロディオンを追いかけるのであった。
シャ・ベ クルの部室では、セオーネが椅子の上で三角座りをしている。
セオーネは自分の膝に顔を埋めながらも、静かに涙を流していた。
彼女も何か思う事があるのだろうか。
頬を伝うこの寂しげな涙は、彼女以外の誰にも知られる事は無かった。
「セオーネいるか!?」
と呼ぶと、セオーネはなんと殺し屋ロッキーを拘束した状態で待っていた。
セオーネは
「ロディオン…!」
と不穏な表情を和らげずに言うので、ロディオンは目を丸くした。
「緊縛プレイ…?」
それに対し、思わずロッキーはツッコミを入れる。
「違うわッ!」
「どうした?」
ロディオンはさっきの言葉はなかったかのように、セオーネに聞く。
セオーネはロッキーを前に出すと言った。
「この殺し屋さんがまた悪事を働きまして…。
でもロディオンの友達なので、警察に出すべきか出さぬべきかずっと悩んでいました…。」
ロディオンは苦笑すると
「オイ?ロッキー?」
とロッキーに話しかけると、ロッキーは冷や汗で答える。
「すまんロディオン、これもウチの仕事やから。」
ロディオンは困った顔をすると
「なんでセオーネなの?」
と聞くと、ロッキーは
「知るかいな!依頼主に聞きぃ!」
と言うだけ。
すると、ロディオンは人形売買業者に思考が繋がる。
以前ニコライを襲ってきた人形売買業者の男達を思い出して、ロディオンは不安を連ねていくが、そこでふと思い出す。
「セオーネ、そうだこれ。」
ロディオンはニコライが作った白い風見鶏をセオーネに渡した。
セオーネは
「風見鶏ですか…!風見鶏は魔除けの品ですね…!」
と感心すると、ロディオンは笑顔で言う。
「そそ。故郷でニコライに作ってもらったんだ~」
セオーネは風見鶏を受け取ると
「ニコライさんの気持ちがこもった風見鶏なんですね…!」
と目を閉じて感謝をしていた。
その瞬間、ロッキーはセオーネの隙を見て逃げ出す。
「ロッキー!」
ロディオンが呼び止めるが、ロッキーは止まらず。
逃げたロッキーは部室を出て、丁度入る所だった善光に出会い頭にぶつかりそうになる。
しかし善光が足を止めたためぶつからず、そのままロッキーは逃げ出してしまった。
善光はロッキーを見送るとすぐに部室に入って
「おい何かあったのか!」
と状況を聞く。
ロディオンは微笑んで
「いやいや大丈夫。あれで懲りてくれるといいんだけどさ。」
と答えた。
善光はそれを聞いて軽く息をつくと、セオーネに言った。
「ロディオンから話は聞いたか?」
その言葉にセオーネは首を傾げると、ロディオンは
「あ!今から故郷での話をするぜ!」
とセオーネに全てを話すのであった。
セオーネは全貌を聞くと
「で、では私や神様が人形にされる可能性があると…。私のどこに人形にしてしまいたい要素が…!」
と言うと、ロディオンはセオーネの容姿を舐めるように見る。
その視線にセオーネは体を庇うと、ロディオンは言った。
「まずは美人だろ、おっぱいデカイだろ、スタイルいいだろ。」
それを聞いた善光は
「それは男の憧れだろ!」
とツッコミ。
セオーネは顔を真っ赤にして
「お、おおおっ…!ロディオン!変な言葉を使わないでください…!」
と反応。
ロディオンは笑顔になると言った。
「いいじゃん!て言うか、男の憧れでも十分人形にされる可能性あるしぃ~」
確かにご最もだと思ったのか、善光は何も言わなかった。
すると、セオーネは眉を困らせて呟く。
「そうですか…。個人的には私より、故郷住みのニコライさんが一番狙われそうに思ったのですが…そうでもないのですか。
ニコライさん眼が綺麗ですし、狙われてもおかしくない気がして…」
その呟きに、ロディオンは反応した。
「あ。」
善光はロディオンの反応に
「どうした?…まあ確かに眼は綺麗だったけど、あの兄貴なら大丈夫だろ。」
と言う。
だが、ロディオンの表情は優れないままだった。
セオーネは
「ロディオン…?」
と心配をすると、ロディオンは善光を連れて廊下に出てしまう。
「どうした?」
善光は改めてロディオンに聞くと、ロディオンはセオーネがいない事を確認してから言った。
「オッドアイってどう思われる?人形売買の人とかに。」
善光は顔をしかめると答える。
「あ~。そう言えばアイツ珍しい色したオッドアイだったな。危ないかもな。」
ロディオンも眉を潜めると、善光は言う。
「でもいつも眼帯してるんだろ?バレないだろ。」
それを聞いてロディオンは安心したのか
「そ、そうだよな!アハハハ!」
と緊張した顔で笑うのであった。
ロディオンは善光に背を向けると、善光はロディオンの服に値札が付いてるのを発見。
大方、服を購入したまま値札を外し忘れたのだろう。
「アハハハハハ」
ロディオンは笑いながらも部室に戻っていき、セオーネは驚いた顔でロディオンを見つめる。
ロディオンは学園生徒の依頼が書かれた用紙の入った依頼箱を確認すると、依頼用紙を取り出して中身を確認する事に。
するとロディオンは、何かに気づいた顔をした。
「急用を思い出したわ!」
ロディオンは言い、すぐに部室を出ていく。
セオーネは
「あ!依頼ですね!私も行きます!」
と追いかける。
瑠璃もロディオンを追うので、善光も
「おい!俺を置いてくな!」
とついていくのであった。
ロディオンが向かった先は高校生教室がある第二校舎。
登校してきた高校生がバラバラうろつく中、ロディオンはその中に紛れる奇抜な格好をした女子へと足を運ぶ。
ロディオンが向かった女子の頭はなんと橙色に染まっており、但し髪の内側は黒。
更には振袖かと思うほど派手な着物をまとっていた。
ぱっつんと切られたショートヘアが着物とマッチして、奇抜でありながらも風流さをどこか感じさせる。
この時代にはこの手の染髪は無いため、彼女の橙の髪はカツラである可能性が高い。
「『橙華(トウハ)』ちゃん!」
とロディオンが話しかけると、その女子はロディオンを見て笑った。
「ロディオン!も~びっくりしたじゃん!」
その馴れ合いを見た瞬間、セオーネと瑠璃の顔色が変わる。
「ロディオンとあの子は一体……」
セオーネは考え始め、瑠璃は
「アイツ…!また女と…!」
と怒っていた。
善光は言う。
「あれはロディオンのセフレの一人だな。『銘田 橙華(メイダ トウハ)』、よくロディオンと絡んでる女だ。」
セオーネは顔を真っ赤にすると
「せっ、セセセセセセせ…!?」
と動揺して言葉をロクに話せていない。
瑠璃は怒った表情のまま言った。
「やはりか!」
セオーネは心を決めてロディオンに近づくと
「ロディオン!その子は一体…!」
と自ら聞く。
ロディオンはセオーネを見ると
「オイ!?みんな来てたの!?」
と驚き、橙華の事をチラっと見た。
橙華は笑う。
「あ、彼女とかじゃないから安心して!」
セオーネは顔を真っ赤にしたまま
「ろ…!ロディオン!!」
とロディオンを呼ぶ。
ロディオンは
「はいぃ!!」
と顔を歪めて返事をすると、セオーネは憤りのある表情を見せて言った。
「あなたは穢れています…!!
愛がないのに…人を手にかけるだなんて…!非道過ぎます!今すぐおやめなさい!」
善光は小声で
「セフレは同意の上だから良くね?」
と呟くと、セオーネに圧のある目で睨まれるので善光は黙り込んだ。
セオーネの訴えに、ロディオンの表情からいつもの活気がなくなる。
一同がロディオンの様子に異変を感じていると、ロディオンは言った。
「じゃあ愛があったら好きな人に手を出していいのかい?」
セオーネが首を傾げると、ロディオンは続ける。
「世の中の女にはさ、生涯穢されない『純潔の女』がいる。
男に恋をしてはならない、穢されてはならない孤高の存在が。」
その言葉にセオーネは反応する。
善光は
「純潔…?貞操を守るって事か?」
と言うと、橙華は
「それってつまり、シスターとか?」
と言ってシスターの格好をしているセオーネを見た。
ロディオンはセオーネに微笑む。
「それを好きになってしまったらどうする?」
セオーネはドキッと来たのか胸に手を当ててしまうと、ロディオンは続けた。
「愛したくても愛してはいけない存在だろう?諦めないといけない存在だろう?」
ロディオンはそう言うと、軽く頭を抱える。
「俺は相手の意志を尊重したい、でもそれをすれば結ばれない。」
そう言ってロディオンは黙り込むと、瑠璃はイライラした様子を見せた。
ロディオンは瑠璃の表情を見ると冷たく溜息をつき、セオーネに言う。
「セオーネは、誰かに恋した事ある?」
セオーネはその言葉に戸惑ってしまうと、ロディオンの目を見た。
ロディオンの真摯な目が、セオーネを見つめている。
セオーネは胸を両手で抑えると
「す…すいません…!」
と言い、何も答えられずその場から逃げ出してしまった。
ロディオンはその後ろ姿を見つめると、
「あー、これだから信徒はな。」
と小言を吐く。
それから橙華に微笑むと
「待たせてごめん、向こうで話をしよう。」
と言い、ロディオンは橙華の背を優しく押して生徒のいる廊下から離れようとした。
「ちょっと待て。」
と善光。
ロディオンは
「え?」
と善光の方を見ると、善光が発言する前に瑠璃が言った。
「セフレばっかり作ってたら女の信用を失うぞ!!」
なぜか必死な瑠璃を見て、ロディオンはつい笑ってしまう。
「別に彼女作る気無いし、結婚する気もないからなー!」
ロディオンは言うので、瑠璃は頬を膨らませてロディオンを睨みつけた。
善光は小声で
「それって、今好きな人以外を好きになる気はないって事…」
と呟くと、瑠璃は更に怒った顔で言う。
「ふざけるな!!」
「善光ぅー、俺に何か言おうとしてなかった?」
ロディオンがさっき呼び止めてきた理由を聞くと、善光は「あっ」と言ってロディオンの服をボールペンで指した。
「服に値札付いてるぞ。」
「ん??」
とロディオンは言って服を確認。
橙華はロディオンの服の値札を見ると大笑い。
「ここに付いてるよー!ロディオンっておっちょこちょいなんだね!」
そう言われ、ロディオンは
「あっちゃ~」
と値札の付いた服を脱ぐ。
橙華はタンクトップ姿のロディオンの体を見ると
「相変わらずいい体してるよねー」
と笑い、ロディオンは微笑むと言った。
「橙華ったらいっつもそれだな。」
すると瑠璃は続けて
「汚れた人間のクズ!」
と罵倒し、罵倒されたロディオンは少し怒った顔で
「はぁー?お前は何かに託けて暴言使うな!慎めよな!」
と瑠璃に言った。
善光は
「人前で下ネタ言うロディオンが慎みって言うなよ。」
と言うがロディオンは聞いておらず、瑠璃は
「うるさい腹黒男!」
と罵倒を続ける。
「腹黒?俺は至って自然体ですが。みんなはどう思いますー?」
ロディオンは呆れた顔で言った。
二人の喧嘩に善光は目を丸くして
「ロディオンが怒るなんて珍しい。」
と呟くので、ロディオンは顔を歪めて黙り込む。
橙華は笑い
「この青い子、ロディオンの事が好きなんでしょ!」
と言うので瑠璃は顔を赤くしてしまい、善光は瑠璃の様子を見て
「マジかよ…!」
と驚いた。
ロディオンはそれに対し冷たい表情のまま鼻で笑うと
「勘弁してくれよ~!」
と笑顔でかわす。
そして橙華の腕を引っ張ってせっせと立ち去ろうとするので、瑠璃は勿論いつも通りロディオンの後をつける。
取り残された善光は焦って
「お、おい!俺を放っていくのかよ!」
と、ロディオンを追いかけるのであった。
シャ・ベ クルの部室では、セオーネが椅子の上で三角座りをしている。
セオーネは自分の膝に顔を埋めながらも、静かに涙を流していた。
彼女も何か思う事があるのだろうか。
頬を伝うこの寂しげな涙は、彼女以外の誰にも知られる事は無かった。
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