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再挑戦・燃える木こりさん -6

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横隊の後ろでエールを飲みながら指揮を執っているバート隊長に、
今までの状況を教えてもらうと、やはり魔物が溢れ出したのは
掘り過ぎからだった。

昼過ぎに前方偵察に出ていた探知兵が次々に大森林から魔物が
南下している報告を受けて、マドック領兵に緊急動員を命じ、
溝の切れ目に陣を前進させて備えた。

非番の領兵と待機領兵がすぐに陣に加わり、マメリカ村と
郷士部隊も3万人と商会護衛部隊やマメリカ村以外の混血族や
獣人族が御応援に駆け付けて、現在の横陣を組むことができた。

領兵と一緒に男爵とセシルさんが参戦して狭い溝の間で奮戦していたが、
エリスさんとダリウスさんが応援に駆け付けると前線が狭く十分
働けないので、魔物を奥に引きこむ今の陣形に変わった。        

「バート隊長、きょう1日で終わりませんでした。明日も大森林内を
騒がし魔物が溢れる危険が考えられます。訓練部隊は大丈夫でしょうか?」
「男爵と第1、第2中隊はマドック市に帰りますが、他の領兵や応援兵は
多少減ると思いますが明日も3万人で陣を維持できるでしょう」

「新素材の武具が良く揃いましたね」
「サスケ様、残念ながら揃っていません。。領内の兵が必要なので
1万個やっとですね」

「3万人は通常の武具で対処したのですか?」
「私も驚きました。第1陣の横隊は1個分隊に新素材装備兵4人と
通常装備兵4人の8人で戦い、第2陣は全員通常装備兵で戦い、
ほとんど魔物は後ろに逃していません」

「兵の損害は?」
「死亡6名、あとは軽傷で回復薬を使い復帰しています。
死亡者は命令に従わず魔物に背を向け逃げようとした者で、
戦った他の分隊員は怪我で回復しています。
見習い兵で魔物と戦ったのは初めてだったのでしょう」

「見習い兵に動揺は見られました?」
「1班に正規領兵1名の訓練部隊が今日の中心でしたが、今も
戦っている様に士気の高さは誇れます」

「魔物が押し寄せても、なぜ士気が高かったのですか?」
「多くの見習い兵はマドック家が与える通常装備さえ与えられずに
働かされ、給与も少ない酷い待遇が、今は前払いされる給与と
まともな食事を与えられて、士気の上がっている時での魔物退治訓練です。
先行訓練受けた見習い領兵が報奨金まで貰った話が更に士気を高めたのです」

「領兵は緊急動員して簡単に集められました?」
「領兵は当然ですが、訓練休暇を与えていた見習い領兵までもほとんど
駆けつけています。郷士や、獣人族と混血族は銀貨1枚支払うと言っても
椅子たる様やサスケ様に信奉していますから、領兵より強いです」

「4万人も動員すると報奨金が少なくなって悔しがる領兵が出そうですね?」
「朝から5千匹以上の魔物を狩り取っていますので、報奨金は十分有ります」

「素材はまだしもお肉は値崩れを起こすでしょう?」
「幸いな事にマドック家には商会が有りまして、大量に魔物を持ち込んでも
通常の60%で買い上げてくれます。市場を混乱しない様に放出量も
考えているようです」

バート隊長は笑いながら報奨金の出所を僕たちに教えてくれたので、
お礼に領地勤務の領兵報奨として魔物を適当に1千匹入れたアイテム袋を
預けた。

バート隊長と話している間も、時々探知で魔物退治状況を
探知していたが、男爵たちの力は凄く、横隊が前進しながら
魔物を掃討してまで変化している。

暫くするとセシルさんから念話で戦場後の浄化クリーン手伝いを頼まれ
5人で輪を作り俯瞰探知イメージ利用で、東の太湖縁から
西の大河縁まで半マルド単位でクリーン浄化魔法をかけ清めていく。

警戒歩哨を残して男爵を先頭に部隊が駆け足で戻ると、
そのまま僕たちも一緒に拠点北門口に駆けて行き、
部隊が整列し終わると男爵の演説が始まる。
拠点北門口外には支援要員が待機して、男爵の演説が終わると、
郷士部隊、混血族部隊、獣人族部隊順でまだ住んでいない土壁家を
小隊ごとに案内しながらお弁当を渡していた。

最後に領兵が中隊ごとにテントやタープの下に案内されて
光草の明かりで夕食のお弁当を食べ始める。

僕たちも行商予定家で、ホロクス族長とテイロン郷士戦闘団長と
バート隊長が集まり、僕たちは大森林内の巨大魔物の話と
魔物騒ぎを謝罪する。

狭い家に魔法で細長い土テーブルを作り出し男爵が夕食のお弁当を
食べながら話そうと命令口調で言いだした
「サスケが謝罪する必要はない、バートは訓練に出ただけだ。
魔物は溢れたが領兵の忠誠とホロクス族長とテイロン団長が
一体となり応援してくれたことに感謝する。
儂も久々に身体を動かした、後ろで護衛をしていた領兵の動きも満足だ」

男爵の話が終わったと見た従兵がお弁当箱の袋入りシチューを取り出して
火の家庭魔法石を2袋の間に挟み3分お待ちくださいと言って下がる。
ボ⊿シチューだな、頭に過ぎっている僕に・・ 

「サスケ様に頂いたお弁当を温める領兵の工夫が便利で広まりました。
報奨金の部隊分と小隊分から訓練中はお弁当とサンドイッチの軽食を
用意したのも士気が高い理由です」

「バート隊長、商会のお弁当は高くないですか?」
「空の箱とスプーンフォークを返す条件でお弁当2食と袋スープ付
サンドイッチが小銀貨2枚で済み、急に4万人分追加しても用意して
くれました。輜重兵が腕を振るえない代わりに後方支援が出来、
戦場で領兵が長く働けます」

「部隊分配から毎日金貨80枚は難しいでしょう。商会で負担いたします」
「今まで魔物狩りや領民応援費から中隊分配と部隊分配と小隊分配は
各10%で領兵配分は50%でしたが、前回の砦訓練から男爵様の命令で、
各10%部隊配分から2%を訓練、緊急出動用食事保留金として貯めています」

「保留金とお弁当が結び付かないのですが?」
「領地引継ぎの時にお弁当をサスケ様から頂いたのがヒントです。
領地引継ぎ緊急出動した輜重兵がお弁当のおかげで、副官従兵の手伝いが
出来ました教訓を、訓練で使ってみたのです。
それに北の森魔物退治作戦の説明で、陣地まで戻らずにサンドイッチ
弁当で停止せず前進すると聞いていました。

砦訓練で皆様の倒して魔物が横隊に前に来て回収しただけでも、
金貨100有りまして、一昨日は仮計算で金貨1800枚商会から
受け取って、昨日の分も金貨2千300枚分受け取りました」

「きょうは金貨3千枚ですか?」
「いえ、4千枚です」

{グレーテ、商会の金庫足りるの}
{フリートからの5の日報告では金貨30万枚分以上保有しています、
未回収金も10万枚以上有りますから十分対応出来ます}

「領兵の分配金も大丈夫なようで、領兵も喜びますね」

「サスケ、明日で終わるか?」
「超巨大木は明日中に切り倒したいですが、また未知の魔物が現れると
確約できません。あと整理も1日必要です。男爵に御用が?」

「明日の夜に王騎士家の領主が集まるので会って欲しい」
「畏まりました、早めに全員館に戻ります」

「大変だが頼む、ローゼリア嬢が夕方南東辺境王騎士家の領主15人を、
訓練場に連れてきたので後陣で見学させ明日ゆっくり面談することで
館に返した。
他にもサスケが助けた北西辺境王騎士家2家の領主が領兵を50人率いて
応援にやはり夕方来たが、後陣で見学させ帰るときに小型魔物50匹と
弁当を持たせ明日マドック館で会う約束をして帰した。2グループとも
サスケたちと入れ違いになってしまった明日会えばよいだろう」

「サスケ様、見学して行った方達は皆さん驚いて、初めと終わりでは
私に対する態度と言葉が変わりました」

領主に使えるバート隊長だから下に見たのかな?
4万人の訓練を指揮していたから驚くのも当然なのかなっ?
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