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領地経営会議―3

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男爵家族と主だった者だけになると、
悲しそうな声でエメリーさんから質問された。

「サスケさん、命令に従わない樹の宿の者は本当に追放するの?」

「考えを改めずに領内で仕事を見つけようともせず
働く意思が無い者は、金貨を与え移動者として領外に追放します。

貴族は経営に失敗すると一族滅びます。
マドック市内のギルド構成員も同様
経営に失敗すると没落してしまいます。

エメリーさんの様なマドック家の優しさに甘え、、、
貴族特権同様の権利が有ると誤解している者達に対する警告で、
役務所の者も今以上に真剣に領地管理すると考えた結果です」

「サスケさん、回復藥のお金が有れば十分助けられるでしょう?」

「セシリアさん、働く意思の有る困窮者は助けます。
働く意思の無い困窮者は助けません。

回復藥の売れる限り農家の余剰小麦を買い付け、
余剰人員の仕事を作り働けぬ者や働きたくとも働けない人は助けます。

そこに働く意思のない者の居場所は有りません」

「セシリア、エメリー、サスケさんを縛ってはいけないわ、
3重、4重に助ける手立てをした上で決めた事なの。
私たちを守る為自分の敵を作る覚悟をして命令しています。

戦いの場で指揮者はたとえ傷つき戦えなくなった者が多くとも
簡単に見捨てず助ける努力をしますが、戦わぬ者を捨てます。

領民は働く戦いの場に生きているのです。
怠惰な者の救いをサスケさんに求めてはいけません。
助けたいと思うなら、2人が考える事よ」

セシルさんの言葉にも悲しそうに2人は眼を向けていた。

「2人の優しさでサスケを縛るな。優しさで助けよ。
儂らは時間も、金貨も、力を持ちながら多くの領民を助けられなかった。
多くが助けられ、助けようとしている事に感謝しなさい」

「エメリーさん!セシリアさん!
僕は未熟者で総てを解決できる力も能力も有りませんし、
まだ困窮した領民すら助け出していません。

日々の糧をまき散らしただけで、
これから持続する方法を考慮していきたいと思っていますが
従わぬ者を助ける術を知りません。
生意気で勝手ですが出来る事をするだけです」

2人の悲しい顔見たくないなぁ、楽しくやれないかなっっ・・
無理だなぁ。 無理だっ・・
無理でもいやだなぁっ。
嫌われたくない思いが頭の中をぐるぐる巡ったが、ここは引けなかった。

「金貨を与えるだけではだめなのですね?」

「セシリアさん与える事は簡単ですが、
数年で与える者も与えられた者も困窮して身動きが出来なくなります」

「2人とも館の樹との約束を忘れることは、許されぬのじゃ、
もう一度思い出すのじゃ、人が暮らす館の樹との約束じゃ」

2人は目を開いて

「忘れていました。許してください」
僕に2人で謝罪してきた。

どう答えたらいいのか考える前にエマ様に助けられた
助かった気分!

「サスケ、鉱山道路を広げたそうじゃな、魔物と鉱山どうする心算じゃ」

「偶然に鉱山の魔物の基地と思われる所を潰したので、
鉱山付近の魔物はこれ以上増えないと思います。

4ヤルドの広さ8層に魔物を集めて今回の騒ぎに使ったとしても、
残された数が少ないように見えたのですが・・・

デ・アリが基地から離れ穴を掘って
坑道から逃げようとしていたらしく、集団で倒れて固まっていましたが、
空間の大きさに比べて数が少なすぎます。

デ・カニエビとの差が大きすぎるので、
もしかしたら事故で仕切りが壊れ、
デ・アリはデ・カニエビに食べられた可能性が有ります。

それにしても今まで現れた魔物がすべて食べられた形跡も有りません。

新しい基地に移動させたか、次の攻撃場所に運びだしたか、
集積中なのか今までに退治した魔物で全部なのか解りません。

鉱山付近の森を探知しましたが大量の魔物は探知していません。
明後日にも大々的にロングサーチを行い安全確認させ、
鉱山師をマメリカ村に戻し再開させて良いと思います」

「サスケ、大当たりだ。
念話リングの試験で丘の森小屋に行き、森の奥で拡大探知したところ
魔物が異常に増えていた。

さらに深探知で確認中サスケの言っていた、見えない空間、
注意しないと気の付かない空間が見つかり、
魔物に気付かれぬ様側に行き、新素材の槍に雷の魔力を込め投げたが、
見えない空間を突き抜けた後、空間は消えた。

アベルから念話で鉱山の報告が有ったのはその少し後からだな。
槍の威力は凄い、光る槍が突き抜けた後近くにいた
大型の魔物2匹串刺しだ。後で見せてやる」

「男爵に攻撃され、基地に逃げ帰ったのがあの4体だと考えると、
魔物の移動先にデ・トドが障害物として有ったので、
まともな移動が出来ず肉の怪物になってしまった可能性大ですね。

丘の森で行方不明領兵4人とメイドさんは魔物に肉体を利用されていた様です。
魔物の群れを操っていたのでしょうか?
他にも大きな魔物の群れが有るなら見つけ出し使う前に倒したいと思います」

「明日丘の森は魔物を狩ろう、バートも来るなら10人で十分だな。
マメリカ村の大森林は、ホロクス、手練れで6チームずつ森に
偵察を出して確認してくれ。
偵察報告後問題が無ければ明後日避難民も帰そう。
ホルスト達に話してから村に戻ってくれ」

「男爵、狩りは明日の昼からにして頂けませんか?
僕たちは王都商会の商品供給の為に
作業場とギルドに行ってから森に行きたいのですが」

「サスケ様、デ・ツノ竜の素材ですが皮だけでなく
他の部位もマナ・魔素が非常に多く有ると私に報告が有りました。

1頭だけ解体師に任せて解体した、血を含めた皮以外の部位と
残りの2頭をアイテム袋に保管しています。

獣人族は魔力に敏感ですがマナ・魔素については詳しくありません。
もう一度調べ直して頂けませんか?」

獣人族の魔法師で副族長のアドリアさんから驚きの申し出?

「エマ様、僕と同じ世界の6千万年前から運ばれたと仮定して
デ・ツノ竜は、マナ・魔素が大量に含まれているのでしょうか?」

「マナ・魔素は有ることは分かっていのじゃが、濃い薄いの程度で
定量化する方法は研究されず確立しておらぬのじゃ。
マナ・魔素に敏感な者ほどサスケが側にいてデ・ツノ竜のマナ・魔素を
見逃すことは有りえるのじゃ、
マメリカ村に常時居なかったから気付いたのじやろう、
マナ・魔素を含んだ使い道はギルドで考えさせるとよいのじゃ」

アドリアさんからデ・ツノ竜2頭と1頭分の素材が入ったアイテム袋と
空のアイテム袋を交換して受けとりお礼を言った。

ヘストンさんでも見逃すことが有るんだ、
それとも使い方が分からないのかな?
明日聞いてみよう。  うぅん・・・
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