22 / 54
第22話 【SIDEフィスラ】魅了
しおりを挟む
この力は、ミズキが元居た世界でも効力はあったはずだ。それでも聖女としてこの世界によばれるとは、そういう事だ。
自分に対しての自信があり、野心が強い。
過去の文献でもぼかされているが。その辺に聖女についての記述が少ない理由があるのでは、と思う。
それでも。
それでも自分にはミズキの浄化を安全に行わせる責任があると、ため息と共に思う。
いくら更に何かを手に入れるためにこちらに来ているとしても、よんだのは最終的に自分なのだから。
ミズキに対しても、聖女としての役目に関しては、きちんと関わるつもりだ。
微塵もツムギへの責任を感じていなそうなミッシェを見つつ、もう一度紅茶を飲んだ。
「もちろん、私もそう考えておりますのでご安心ください」
にこりとほほ笑むと、ミズキは満足したように頷き頬に手を当てた。
「お披露目会でも、是非近くに居てお祝いをしてくださいね」
「ええ、それはもちろん。近くでお祝いしたいと思っております。……ただ問題がありまして」
「なんでしょうか?」
「私のパートナーはツムギになってしまいます」
「どうして? 何故あの人がパートナーなの?」
「私は魔力量が多く、感情の揺れがあった場合相手に影響が出てしまう事があるのです。特に女性で魔力量が多く家格が合う方は少ないので。そのせいでしばらくパーティーには出ていませんでした。ツムギは無魔力なので問題が出ません。庶民の出の助手として紹介するので、心配されませんよう」
「平凡なおばさんじゃない」
フィスラよりも年下のツムギだけれど、確かに子供のようなミズキから見たらそうなのかもしれない。
それでも、非常に不快な気持ちになった。
「先ほども申しましたが私の隣に立つには、相応しいと思います」
「そうとはとても思えませんけど。ねえ、ミッシェ様」
「実際コノート師団長にパートナーが居ないのは問題ではあった。それで度々出席を断られていたので、私としては出席してもらえてほっとしている」
ミッシェはため息と共に認めた。
女性に言い寄られ、自分の娘を紹介したい男たちに囲まれるパーティーにいくなら研究をしたい。それは正しい感覚ではないだろうか。
部下たちは楽しみにしているものもいるので、それはきちんと認めている。
それでもミズキは不満げな顔をしている。
フィスラが靡かないことに不満げにはしつつも疑問は持っていないあたり、魅了は無自覚のようだ。
「あの人の事ばかりですね」
ミズキの目に暗い影が宿ったのをフィスラは感じた。そして、その対象はフィスラではない。
「お祝いの気持ちがあるのですが、貴族はやはりパートナーが居ないと出られないのです。お許しください聖女様。私はいつでも聖女様の味方ですし、力になりたいと願っています。信じてください」
フィスラが下手に出ると、ミズキは満足そうに笑った。
「仕方がないわね。いいでしょう。聖女召喚成功のお祝いですものね。あの人の事は必ず研究助手と紹介してくださいね」
「もちろんです。実際、そうでしかないですからね」
……ツムギを目の敵にされても困る。
自分の不快さを優先して発言をしまった事を、反省した。
ツムギには先に招待状を渡してしまったし、しっかり言質を取るために来たというのにツムギの悪口を流すことが難しかった。
不思議だ。
ツムギをミズキの前でぞんざいに扱えばいいのだろうが、それは無理だ。
ツムギの事は自分に責任がある。
彼女を不快にはさせたくない。させてはいけない責任があるのだ。
自分の責任感がツムギに偏っている事は無視して考える。
明日からは、ある程度ミズキに付き合わなくてはいけないだろう。にこやかに受け答えを続けながら、心の中で大きくため息をついた。
自分に対しての自信があり、野心が強い。
過去の文献でもぼかされているが。その辺に聖女についての記述が少ない理由があるのでは、と思う。
それでも。
それでも自分にはミズキの浄化を安全に行わせる責任があると、ため息と共に思う。
いくら更に何かを手に入れるためにこちらに来ているとしても、よんだのは最終的に自分なのだから。
ミズキに対しても、聖女としての役目に関しては、きちんと関わるつもりだ。
微塵もツムギへの責任を感じていなそうなミッシェを見つつ、もう一度紅茶を飲んだ。
「もちろん、私もそう考えておりますのでご安心ください」
にこりとほほ笑むと、ミズキは満足したように頷き頬に手を当てた。
「お披露目会でも、是非近くに居てお祝いをしてくださいね」
「ええ、それはもちろん。近くでお祝いしたいと思っております。……ただ問題がありまして」
「なんでしょうか?」
「私のパートナーはツムギになってしまいます」
「どうして? 何故あの人がパートナーなの?」
「私は魔力量が多く、感情の揺れがあった場合相手に影響が出てしまう事があるのです。特に女性で魔力量が多く家格が合う方は少ないので。そのせいでしばらくパーティーには出ていませんでした。ツムギは無魔力なので問題が出ません。庶民の出の助手として紹介するので、心配されませんよう」
「平凡なおばさんじゃない」
フィスラよりも年下のツムギだけれど、確かに子供のようなミズキから見たらそうなのかもしれない。
それでも、非常に不快な気持ちになった。
「先ほども申しましたが私の隣に立つには、相応しいと思います」
「そうとはとても思えませんけど。ねえ、ミッシェ様」
「実際コノート師団長にパートナーが居ないのは問題ではあった。それで度々出席を断られていたので、私としては出席してもらえてほっとしている」
ミッシェはため息と共に認めた。
女性に言い寄られ、自分の娘を紹介したい男たちに囲まれるパーティーにいくなら研究をしたい。それは正しい感覚ではないだろうか。
部下たちは楽しみにしているものもいるので、それはきちんと認めている。
それでもミズキは不満げな顔をしている。
フィスラが靡かないことに不満げにはしつつも疑問は持っていないあたり、魅了は無自覚のようだ。
「あの人の事ばかりですね」
ミズキの目に暗い影が宿ったのをフィスラは感じた。そして、その対象はフィスラではない。
「お祝いの気持ちがあるのですが、貴族はやはりパートナーが居ないと出られないのです。お許しください聖女様。私はいつでも聖女様の味方ですし、力になりたいと願っています。信じてください」
フィスラが下手に出ると、ミズキは満足そうに笑った。
「仕方がないわね。いいでしょう。聖女召喚成功のお祝いですものね。あの人の事は必ず研究助手と紹介してくださいね」
「もちろんです。実際、そうでしかないですからね」
……ツムギを目の敵にされても困る。
自分の不快さを優先して発言をしまった事を、反省した。
ツムギには先に招待状を渡してしまったし、しっかり言質を取るために来たというのにツムギの悪口を流すことが難しかった。
不思議だ。
ツムギをミズキの前でぞんざいに扱えばいいのだろうが、それは無理だ。
ツムギの事は自分に責任がある。
彼女を不快にはさせたくない。させてはいけない責任があるのだ。
自分の責任感がツムギに偏っている事は無視して考える。
明日からは、ある程度ミズキに付き合わなくてはいけないだろう。にこやかに受け答えを続けながら、心の中で大きくため息をついた。
10
お気に入りに追加
1,788
あなたにおすすめの小説

恋愛は見ているだけで十分です
みん
恋愛
孤児院育ちのナディアは、前世の記憶を持っていた。その為、今世では恋愛なんてしない!自由に生きる!と、自立した女魔道士の路を歩む為に頑張っている。
そんな日々を送っていたが、また、前世と同じような事が繰り返されそうになり……。
色んな意味で、“じゃない方”なお話です。
“恋愛は、見ているだけで十分よ”と思うナディア。“勿論、溺愛なんて要りませんよ?”
今世のナディアは、一体どうなる??
第一章は、ナディアの前世の話で、少しシリアスになります。
❋相変わらずの、ゆるふわ設定です。
❋主人公以外の視点もあります。
❋気を付けてはいますが、誤字脱字が多いかもしれません。すみません。
❋メンタルも、相変わらず豆腐並みなので、緩い気持ちで読んでいただけると幸いです。


魔力を持たずに生まれてきた私が帝国一の魔法使いと婚約することになりました
ふうか
恋愛
レティシアは魔力を持つことが当たり前の世界でただ一人、魔力を持たずに生まれてきた公爵令嬢である。
そのために、家族からは冷遇されて育った彼女は10歳のデビュタントで一人の少年と出会った。その少年の名はイサイアス。皇弟の息子で、四大公爵の一つアルハイザー公爵家の嫡男である。そしてイサイアスは周囲に影響を与えてしまうほど多くの魔力を持つ少年だった。
イサイアスとの出会いが少しづつレティシアの運命を変え始める。
これは魔力がないせいで冷遇されて来た少女が幸せを掴むための物語である。
※1章完結※
追記 2020.09.30
2章結婚編を加筆修正しながら更新していきます。

結婚式をボイコットした王女
椿森
恋愛
請われて隣国の王太子の元に嫁ぐこととなった、王女のナルシア。
しかし、婚姻の儀の直前に王太子が不貞とも言える行動をしたためにボイコットすることにした。もちろん、婚約は解消させていただきます。
※初投稿のため生暖か目で見てくださると幸いです※
1/9:一応、本編完結です。今後、このお話に至るまでを書いていこうと思います。
1/17:王太子の名前を修正しました!申し訳ございませんでした···( ´ཫ`)

塔の魔王は小さな花を慈しむ
トウリン
恋愛
セイラム国第一王子アストールは、その強大過ぎる魔力故に人と交わることができず、辺境の塔に身を置いていた。彼の力を恐れるあまりに、使用人はいつかない。いい加減、数えるのにも飽きた頃、彼の前に連れてこられたのは、まだ幼いフラウという名の少女だった。彼女もまた、ある理由から孤独の中に身を置いていて……
己の不幸に囚われていた傲慢な王子と人の温もりを知らない無垢な少女は、互いにかけがえのない相手となっていく。
【完結】甘やかな聖獣たちは、聖女様がとろけるようにキスをする
楠結衣
恋愛
女子大生の花恋は、いつものように大学に向かう途中、季節外れの鯉のぼりと共に異世界に聖女として召喚される。
ところが花恋を召喚した王様や黒ローブの集団に偽聖女と言われて知らない森に放り出されてしまう。
涙がこぼれてしまうと鯉のぼりがなぜか執事の格好をした三人組みの聖獣に変わり、元の世界に戻るために、一日三回のキスが必要だと言いだして……。
女子大生の花恋と甘やかな聖獣たちが、いちゃいちゃほのぼの逆ハーレムをしながら元の世界に戻るためにちょこっと冒険するおはなし。
◇表紙イラスト/知さま
◇鯉のぼりについては諸説あります。
◇小説家になろうさまでも連載しています。

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!
沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。
それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。
失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。
アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。
帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。
そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。
再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。
なんと、皇子は三つ子だった!
アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。
しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。
アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。
一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

捕まり癒やされし異世界
波間柏
恋愛
飲んでものまれるな。
飲まれて異世界に飛んでしまい手遅れだが、そう固く決意した大学生 野々村 未来の異世界生活。
異世界から来た者は何か能力をもつはずが、彼女は何もなかった。ただ、とある声を聞き閃いた。
「これ、売れる」と。
自分の中では砂糖多めなお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる