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第22話 【SIDEフィスラ】魅了
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この力は、ミズキが元居た世界でも効力はあったはずだ。それでも聖女としてこの世界によばれるとは、そういう事だ。
自分に対しての自信があり、野心が強い。
過去の文献でもぼかされているが。その辺に聖女についての記述が少ない理由があるのでは、と思う。
それでも。
それでも自分にはミズキの浄化を安全に行わせる責任があると、ため息と共に思う。
いくら更に何かを手に入れるためにこちらに来ているとしても、よんだのは最終的に自分なのだから。
ミズキに対しても、聖女としての役目に関しては、きちんと関わるつもりだ。
微塵もツムギへの責任を感じていなそうなミッシェを見つつ、もう一度紅茶を飲んだ。
「もちろん、私もそう考えておりますのでご安心ください」
にこりとほほ笑むと、ミズキは満足したように頷き頬に手を当てた。
「お披露目会でも、是非近くに居てお祝いをしてくださいね」
「ええ、それはもちろん。近くでお祝いしたいと思っております。……ただ問題がありまして」
「なんでしょうか?」
「私のパートナーはツムギになってしまいます」
「どうして? 何故あの人がパートナーなの?」
「私は魔力量が多く、感情の揺れがあった場合相手に影響が出てしまう事があるのです。特に女性で魔力量が多く家格が合う方は少ないので。そのせいでしばらくパーティーには出ていませんでした。ツムギは無魔力なので問題が出ません。庶民の出の助手として紹介するので、心配されませんよう」
「平凡なおばさんじゃない」
フィスラよりも年下のツムギだけれど、確かに子供のようなミズキから見たらそうなのかもしれない。
それでも、非常に不快な気持ちになった。
「先ほども申しましたが私の隣に立つには、相応しいと思います」
「そうとはとても思えませんけど。ねえ、ミッシェ様」
「実際コノート師団長にパートナーが居ないのは問題ではあった。それで度々出席を断られていたので、私としては出席してもらえてほっとしている」
ミッシェはため息と共に認めた。
女性に言い寄られ、自分の娘を紹介したい男たちに囲まれるパーティーにいくなら研究をしたい。それは正しい感覚ではないだろうか。
部下たちは楽しみにしているものもいるので、それはきちんと認めている。
それでもミズキは不満げな顔をしている。
フィスラが靡かないことに不満げにはしつつも疑問は持っていないあたり、魅了は無自覚のようだ。
「あの人の事ばかりですね」
ミズキの目に暗い影が宿ったのをフィスラは感じた。そして、その対象はフィスラではない。
「お祝いの気持ちがあるのですが、貴族はやはりパートナーが居ないと出られないのです。お許しください聖女様。私はいつでも聖女様の味方ですし、力になりたいと願っています。信じてください」
フィスラが下手に出ると、ミズキは満足そうに笑った。
「仕方がないわね。いいでしょう。聖女召喚成功のお祝いですものね。あの人の事は必ず研究助手と紹介してくださいね」
「もちろんです。実際、そうでしかないですからね」
……ツムギを目の敵にされても困る。
自分の不快さを優先して発言をしまった事を、反省した。
ツムギには先に招待状を渡してしまったし、しっかり言質を取るために来たというのにツムギの悪口を流すことが難しかった。
不思議だ。
ツムギをミズキの前でぞんざいに扱えばいいのだろうが、それは無理だ。
ツムギの事は自分に責任がある。
彼女を不快にはさせたくない。させてはいけない責任があるのだ。
自分の責任感がツムギに偏っている事は無視して考える。
明日からは、ある程度ミズキに付き合わなくてはいけないだろう。にこやかに受け答えを続けながら、心の中で大きくため息をついた。
自分に対しての自信があり、野心が強い。
過去の文献でもぼかされているが。その辺に聖女についての記述が少ない理由があるのでは、と思う。
それでも。
それでも自分にはミズキの浄化を安全に行わせる責任があると、ため息と共に思う。
いくら更に何かを手に入れるためにこちらに来ているとしても、よんだのは最終的に自分なのだから。
ミズキに対しても、聖女としての役目に関しては、きちんと関わるつもりだ。
微塵もツムギへの責任を感じていなそうなミッシェを見つつ、もう一度紅茶を飲んだ。
「もちろん、私もそう考えておりますのでご安心ください」
にこりとほほ笑むと、ミズキは満足したように頷き頬に手を当てた。
「お披露目会でも、是非近くに居てお祝いをしてくださいね」
「ええ、それはもちろん。近くでお祝いしたいと思っております。……ただ問題がありまして」
「なんでしょうか?」
「私のパートナーはツムギになってしまいます」
「どうして? 何故あの人がパートナーなの?」
「私は魔力量が多く、感情の揺れがあった場合相手に影響が出てしまう事があるのです。特に女性で魔力量が多く家格が合う方は少ないので。そのせいでしばらくパーティーには出ていませんでした。ツムギは無魔力なので問題が出ません。庶民の出の助手として紹介するので、心配されませんよう」
「平凡なおばさんじゃない」
フィスラよりも年下のツムギだけれど、確かに子供のようなミズキから見たらそうなのかもしれない。
それでも、非常に不快な気持ちになった。
「先ほども申しましたが私の隣に立つには、相応しいと思います」
「そうとはとても思えませんけど。ねえ、ミッシェ様」
「実際コノート師団長にパートナーが居ないのは問題ではあった。それで度々出席を断られていたので、私としては出席してもらえてほっとしている」
ミッシェはため息と共に認めた。
女性に言い寄られ、自分の娘を紹介したい男たちに囲まれるパーティーにいくなら研究をしたい。それは正しい感覚ではないだろうか。
部下たちは楽しみにしているものもいるので、それはきちんと認めている。
それでもミズキは不満げな顔をしている。
フィスラが靡かないことに不満げにはしつつも疑問は持っていないあたり、魅了は無自覚のようだ。
「あの人の事ばかりですね」
ミズキの目に暗い影が宿ったのをフィスラは感じた。そして、その対象はフィスラではない。
「お祝いの気持ちがあるのですが、貴族はやはりパートナーが居ないと出られないのです。お許しください聖女様。私はいつでも聖女様の味方ですし、力になりたいと願っています。信じてください」
フィスラが下手に出ると、ミズキは満足そうに笑った。
「仕方がないわね。いいでしょう。聖女召喚成功のお祝いですものね。あの人の事は必ず研究助手と紹介してくださいね」
「もちろんです。実際、そうでしかないですからね」
……ツムギを目の敵にされても困る。
自分の不快さを優先して発言をしまった事を、反省した。
ツムギには先に招待状を渡してしまったし、しっかり言質を取るために来たというのにツムギの悪口を流すことが難しかった。
不思議だ。
ツムギをミズキの前でぞんざいに扱えばいいのだろうが、それは無理だ。
ツムギの事は自分に責任がある。
彼女を不快にはさせたくない。させてはいけない責任があるのだ。
自分の責任感がツムギに偏っている事は無視して考える。
明日からは、ある程度ミズキに付き合わなくてはいけないだろう。にこやかに受け答えを続けながら、心の中で大きくため息をついた。
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