【完結】生贄として育てられた少女は、魔術師団長に溺愛される

未知香

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 公正を図るためにハウリーは口を出さないと言う話は何処に行ったのだろうと思い、試験官であるマウリゼを見る。

「これで、君は合格だ」

 どこか嬉しそうに、マウリゼは告げた。

「ええと……ほんとうに?」

 信じられない気持ちでいると、マウリゼがミシェラにぐぐぐっと近づいてきた。

「そうだ! これで研究もはかどるに違いない! 私も魔術について教わりたいことがたくさんあるんだ。どうか、今までの非礼を許してほしい! これからは第五師団の仲間として、魔術について語り合いたいと思っている」

 にこにこと笑顔で、今にもミシェラの手を取りそうな勢いでマウリゼがまくしたてる。

 こわい。
 急な方向転換が怖すぎる。

 ミシェラを崇めんばかりにキラキラとした目を向けられ、ミシェラは一歩後ろに下がった。

「あの、マウリゼ様に、非礼などありませんでした。……もし、師団に入れるのならば一緒に魔術の練習をしたいです」
「ありがとうございます! 光栄です! ……こんな技術がきちんと研究されたら、飛躍的に魔術が向上するに違いない。楽しみだ」

 マウリゼはうきうきとした様子で頷いている。
 厳格そうなイメージからどんどん遠ざかっている。
 それともこれが素なのだろうか。

「ずるいぞ! ハウリー様が私のことを呼んだということは、当然私の意見を参考にしたいということだ。私と研究をいたしましょう。いえ、私にあなたの魔術をおしえてください!」
「あの、魔術が新しくなると、私みたいに安定しなくなると思うのですが……」
「そんなことは関係ない。頼む」
「……わかりました」

 同じぐらいの勢いでフィアッセも押してくる。一体何が起きてしまったというのか。

 ミシェラの疑問をよそに、ハウリーが首をひねっている。

「……どうだろうな? これ、魔力の消費量凄そうだぞ。普通の団員じゃ一回も行使できないかもしれない。大量の魔力を使用する分、安定させるのも難しいかもしれないな」
「そんな……! いや、今まで焦がれていた失われた魔術が目の前にある。これはやるしかないです。足りない魔力はハウリー様が隣で供給してください」
「……その手があるのか! ずるいぞマウリゼ」
「え! なんで私の魔力を使うんだ」
「副団長の願いを叶えてください! 師団長が居ない分業務は殆ど文句も言わずにやっているんです。たまには報われてもいいはずだ」
「うーわー。マウリゼもフィラッセも魔術になると人格が変わるのはどうなってるんだ」
「よろしくお願いします! 楽しみだ」

 強引に話をまとめるマウリゼが強い。フィアッセも一緒に頷いているので混ざる気だろう。

 新しい魔術の話を聞いていたら、なんだかミシェラも楽しくなってきた。

「ふふふ。私もすごく楽しくなってきました……! 氷のうさぎ、作りましょう! どこまで細かい魔力のコントロールができるかをみんなで競いませんか」
「やりたいです。新しい練習法になり得ますな。期待しております! ミシェラ様!」

 三人で盛り上がっていると、シマラも混ざってくる。

「私も一緒に研究して、講師として皆に伝えなくては」
「シマラ先生は人に教えるのが好きなんですね」
「ええ。ミシェラさんに教えるようになってから、より楽しくなってきました。理解度が高い生徒はいいですね」
「私、まだまだ教わりたいです。魔力の扱いとか、そもそも実践に使えるようなものについてはさっぱりわかっていないので」
「もちろんです」

 皆でこれからの展望を話していると、パチンと手を叩く音がした。
 そちらを見ると、ハウリーがにこりと笑い朗々と宣言した。

「第五魔術師団へ、ようこそ。団員全員が、君を歓迎するよ」

 ハウリーがミシェラに向かって手を差し伸べた。他のメンバーもにこりと笑い、拍手をしてくれる。
 ミシェラは嬉しさでどきどきとなる心臓を押さえながら、今度こそしっかりと、ハウリーと握手を交わした。

「……ミシェラ。その知識については、後でしっかりと教えてもらうから」
「えっ」
「教えるどころか教えられる立場になるとは、まったく想定外だ」

 悲しそうにそう言って、ハウリーはため息をついた。

「あ、あの、隠してたとかじゃないです!」
「それは知ってる」

 ミシェラが慌てて弁明すると、にやりと笑ったハウリーがそのままミシェラの手を力強く握った。

 逃げようとしてもまた逃げられない。
 それどころかあっという間にその腕の収まってしまう。

「ちゃんと教えてくれミシェラ」

 何故か耳元でささやくように言われ、ミシェラは顔を赤くすることしかできなかった。
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