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ふと、マウリゼがミシェラをちらりと見る。
「この娘が、スカイラ師団長の言っていた……」
「そうだ。名前はミシェラという」
「本当に、スカイラ師団長が目をかけるほどの子供なのでしょうか」
疑わしそうな視線に、ミシェラはどう答えていいかわからなくなる。
魔術師としての勉強など当然したことがない。
努力はしようと思ってはいるものの、その要求されるレベルについては想像もついていない状態なのだ。
しかし、はっきりとハウリーは断言した。
「もちろん、そうだ。ミシェラ、こちらはマウリゼ・グラッファーだ。我が第五師団の副師団長で、私が城に居ないときは師団長代理として働いてもらっている。とてもいい魔術師だ。マウリゼ、ミシェラは師団に入ることになると思うので、よろしく頼む」
「ご用命、確かに承りました」
ハウリーの部下ということで失礼があってはならない。ミシェラは深々と頭を下げた。
「ミシェラと申します。よろしくお願いいたします」
「……師団長に直々に頼まれたのだ。もちろんきちんと対応しよう」
「ありがとうございます。頑張ります」
「マウリゼ。ミシェラを部屋まで案内してやってくれ。住むのは寮にするが、先に基礎的な事から教えるので、師団に引き入れるのは少し先になるだろう。私は総長に帰城の報告をしてくる」
「かしこまりました。………ミシェラ、私の後についてきなさい」
ハウリーに深々と礼をした後、マウリゼはミシェラに声をかけさっと歩いていってしまう。
置いて行かれないように、慌ててハウリーの後ろ姿に頭を下げついていく。
マウリゼの歩くスピードはなかなかに速い。
半ば走るようにしながらついていく。広すぎて全く道を覚える暇はなかった。
もしこれではぐれたら、迷子どころではない。
何かの建物から出て庭らしきところに出て、どこかの建物に入って、それでもさらに歩いた。
息が切れて頭がくらくらしてきた頃、マウリゼは一つの扉の前で止まった。
「ここが、あなたの部屋になるところです。事前に連絡があった為最低限は整えてあります。メイドのフィアレーは夜には着くでしょう。今日の食事は部屋で取って頂きます。明日からの日程は別途指示があるのでお待ちください」
早口で必要事項を告げられ、そのままマウリゼはさっと礼をして去っていった。
最低限の関わりですませたいというのがありありとわかった。それでも今までの事を考えたらミシェラにとっては優しく思える待遇ではあるが。
「わかりました。ありがとうございます」
後ろ姿に向かってお礼を言ったが、果たして聞こえただろうか。とりあえずは部屋で待機という事だ。ミシェラは重厚な扉をそっと開けた。
「……わぁ」
思ってもみないことに、部屋はピンクを基調としたとても可愛い部屋だった。
テーブルセットと本棚とベッドが置いてあるだけの簡素な部屋だが、何とベッドには天蓋がついている。
「お姫様の部屋みたいだ……」
ベッドに座ると、ふわふわだ。誰もいないので少し跳ねてみる。スプリングが効いていてぽんぽんと身体が浮くのが面白い。
たまに天蓋のレースが顔にかかる。
「ふふふ。薄くてさらさらしててすごいなあ。……あっ。もし破れたら大変……!」
急に現実を思い出し、慌てて跳ねるのをやめ、ベッドに横になった。
昨日のベッドもふわふわだったがこちらも負けていない。凄い。
これからこのベッドで毎日寝られるのかもしれない。
「夢のようだわ……」
ベッドに寝転ぶと、天蓋からキラキラとした飾りが下がっている。飾りは紐にガラスのようなものがいくつもついているもので、ガラスが星の形やハートの形になっている。
それに紐の根元にある丸い魔道具から発される魔術の光が反射して、天井に複雑な模様をつけていた。
「うわーきれい……。なんだろうこれ」
天蓋のレースで空間が仕切られて、全体がきらきらと光る。まるで光の中にいるみたいだ。
見た事もない光景に、すっかり夢中になってしまう。風魔術で飾りを少し揺らすと、角度が変わって模様が変わる。
食事が運ばれてくるまで、ミシェラはすっかり夢中で天井を眺めていた。
「この娘が、スカイラ師団長の言っていた……」
「そうだ。名前はミシェラという」
「本当に、スカイラ師団長が目をかけるほどの子供なのでしょうか」
疑わしそうな視線に、ミシェラはどう答えていいかわからなくなる。
魔術師としての勉強など当然したことがない。
努力はしようと思ってはいるものの、その要求されるレベルについては想像もついていない状態なのだ。
しかし、はっきりとハウリーは断言した。
「もちろん、そうだ。ミシェラ、こちらはマウリゼ・グラッファーだ。我が第五師団の副師団長で、私が城に居ないときは師団長代理として働いてもらっている。とてもいい魔術師だ。マウリゼ、ミシェラは師団に入ることになると思うので、よろしく頼む」
「ご用命、確かに承りました」
ハウリーの部下ということで失礼があってはならない。ミシェラは深々と頭を下げた。
「ミシェラと申します。よろしくお願いいたします」
「……師団長に直々に頼まれたのだ。もちろんきちんと対応しよう」
「ありがとうございます。頑張ります」
「マウリゼ。ミシェラを部屋まで案内してやってくれ。住むのは寮にするが、先に基礎的な事から教えるので、師団に引き入れるのは少し先になるだろう。私は総長に帰城の報告をしてくる」
「かしこまりました。………ミシェラ、私の後についてきなさい」
ハウリーに深々と礼をした後、マウリゼはミシェラに声をかけさっと歩いていってしまう。
置いて行かれないように、慌ててハウリーの後ろ姿に頭を下げついていく。
マウリゼの歩くスピードはなかなかに速い。
半ば走るようにしながらついていく。広すぎて全く道を覚える暇はなかった。
もしこれではぐれたら、迷子どころではない。
何かの建物から出て庭らしきところに出て、どこかの建物に入って、それでもさらに歩いた。
息が切れて頭がくらくらしてきた頃、マウリゼは一つの扉の前で止まった。
「ここが、あなたの部屋になるところです。事前に連絡があった為最低限は整えてあります。メイドのフィアレーは夜には着くでしょう。今日の食事は部屋で取って頂きます。明日からの日程は別途指示があるのでお待ちください」
早口で必要事項を告げられ、そのままマウリゼはさっと礼をして去っていった。
最低限の関わりですませたいというのがありありとわかった。それでも今までの事を考えたらミシェラにとっては優しく思える待遇ではあるが。
「わかりました。ありがとうございます」
後ろ姿に向かってお礼を言ったが、果たして聞こえただろうか。とりあえずは部屋で待機という事だ。ミシェラは重厚な扉をそっと開けた。
「……わぁ」
思ってもみないことに、部屋はピンクを基調としたとても可愛い部屋だった。
テーブルセットと本棚とベッドが置いてあるだけの簡素な部屋だが、何とベッドには天蓋がついている。
「お姫様の部屋みたいだ……」
ベッドに座ると、ふわふわだ。誰もいないので少し跳ねてみる。スプリングが効いていてぽんぽんと身体が浮くのが面白い。
たまに天蓋のレースが顔にかかる。
「ふふふ。薄くてさらさらしててすごいなあ。……あっ。もし破れたら大変……!」
急に現実を思い出し、慌てて跳ねるのをやめ、ベッドに横になった。
昨日のベッドもふわふわだったがこちらも負けていない。凄い。
これからこのベッドで毎日寝られるのかもしれない。
「夢のようだわ……」
ベッドに寝転ぶと、天蓋からキラキラとした飾りが下がっている。飾りは紐にガラスのようなものがいくつもついているもので、ガラスが星の形やハートの形になっている。
それに紐の根元にある丸い魔道具から発される魔術の光が反射して、天井に複雑な模様をつけていた。
「うわーきれい……。なんだろうこれ」
天蓋のレースで空間が仕切られて、全体がきらきらと光る。まるで光の中にいるみたいだ。
見た事もない光景に、すっかり夢中になってしまう。風魔術で飾りを少し揺らすと、角度が変わって模様が変わる。
食事が運ばれてくるまで、ミシェラはすっかり夢中で天井を眺めていた。
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