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転移陣に行き、作業中だったらしいふたりに何か指示をした後すぐに、ハウリーとミシェラは馬車に揺られていた。
ハウリーはいつの間にか馬車に荷物を積み込んでもらっていた。
馬はとても格好良く、力強かった。
馬車は揺れるが、下にひいてある布はとてもふわふわで気持ちがいい。
地下にあったクッションを思い出す。
あの場所から離れられる時は、生贄になる時しかないと思っていたのに。
もう、暴力や襲われる心配がない。
生贄として暮らしていなくていい。
初めて乗った馬車は思ったよりもずっと早く、村はみるみると小さくなっていく。
何もかもが遠くなり、ミシェラはほっと息をついた。
隣に座っているハウリーをちらりと見ると、優しく微笑まれる。
彼に迷惑をかけたくなくて、ミシェラはずっと思っていたことを口にした。
「あの、この髪の毛を切りたいんです。何かナイフがあれば貸してもらえませんか?」
ミシェラの言葉に、ハウリーは首を傾げた。
「なんで髪の毛を切りたいんだ? こんなに白い髪の毛は見たことがない。もったいないだろう」
「この髪の毛を見ると、嫌な思いをするかもしれないので。それに、こんな白い髪の毛は、きっと軽蔑されます。ハウリー様に迷惑をかけたくないのです。できれば色を付けたいのですが、せめて短い方がいいかと」
汚れていない白い髪の毛を撫でながら、陰鬱な気持ちになる。
「昨日も言ったが、その髪の毛の色は魔力量の多さを表している。魔術師団においては特別な色だ。切る必要はない」
何故か強い口調で、ハウリーは被っていたフードを下した。
「……まじゅつしだん」
「そうだ。前回は途中で話が終わってしまったが、私の髪の一部も君と同じだ」
知らず、ハウリーの髪に手を伸ばして、それを触った。
前回見た時はパニックになってしまったが、やはり本物だ。
もしかしたら、ハウリーの事も悪く言ってしまったと思われたかもしれないと思い当たり、反省する。
彼はミシェラのように真っ白ではない。
自分のような扱いはされなかったのだろうか。
青い髪と白い髪のコントラストが綺麗で、ミシェラはさらさらとハウリーの髪の毛を流した。
ハウリーは困ったように眉を下げ、ミシェラにされるがままになっている。
「魔力が多ければ白い髪の毛になる。だた、魔力コントロールを覚えた場合や、魔力がそこまでじゃなければ途中で止まる。こういう風に」
同じように侮蔑されるべき白い髪がハウリーにあることが、やはり信じられない。
何も言えないでいると、ハウリーは眉を寄せた。
「私は前者の方だから誤解しないように。きっと魔力コントロールを知らなければ、ミシェラぐらい白くなる。魔術師団でも、白くなる程の魔力量は稀なのだ。実際、村に連れてきた団員には居なかっただろう?」
「私、このままでいいんですか?」
ミシェラの質問に、ハウリーはそっとミシェラの髪を取り、見つめた。
「もちろん嫌ではない。これだけの魔力量なら、出来ることも多いだろう。良い魔術師になれると思う。ミシェラの白い髪を、魔術師団として歓迎する」
「そう、なんですね」
嫌じゃないと言われてうれしい。けれど、急にこの髪色を歓迎されると言われても、それこそ実感がわかなくてミシェラは曖昧に頷いた。
「私と一緒は嫌か?」
「ええっと、そ、そんな事ありません!」
「なら良かった。お揃いだ」
にっこりと笑うハウリーに、なんだか急にどきどきしてしまう。
ミシェラは慌てて別の質問を探した。
「あの、魔術師ってなんですか?」
「魔力を持っているものはそもそも少ないが、その中でも魔力を使って魔術を使う事が出来る人はさらに少なくなる。それに秀でたものを、魔術師と呼ぶ。君も、私と同じ魔術師を目指すのだ」
ハウリーに力強くいわれ、ミシェラは驚いてしまう。
村長の時にも言っていたが、なにかの脅し文句だと思っていた。
「私が、本当にその魔術師になれるんですか?」
「そうだ。魔術師になって、私と一緒に働こう。ミシェラがそういう風に扱われたのは、あの村が間違っていたんだ。……私もミシェラの髪は綺麗だと思う」
「……ありがとうございます」
綺麗だなどと、初めてそんな風に言われて、ミシェラはどうしていいかわからなくなる。
しかし、続いたハウリーの言葉が自称的に響き、ミシェラは不思議な気持ちになった。
「戻れば、すぐにわかる。軽蔑は、ない。どちらかといえば……。ただ、それが気分のいい事かはわからないな。そばには私が居るから、ミシェラには何かあったとしても安心してほしい」
何かを思い出しているようなその言葉は、ミシェラには悲しく聞こえた。
言葉の意味がわかったのは、ハウリーの言う通り魔術師団の大きな建物に着いてからだった。
ハウリーはいつの間にか馬車に荷物を積み込んでもらっていた。
馬はとても格好良く、力強かった。
馬車は揺れるが、下にひいてある布はとてもふわふわで気持ちがいい。
地下にあったクッションを思い出す。
あの場所から離れられる時は、生贄になる時しかないと思っていたのに。
もう、暴力や襲われる心配がない。
生贄として暮らしていなくていい。
初めて乗った馬車は思ったよりもずっと早く、村はみるみると小さくなっていく。
何もかもが遠くなり、ミシェラはほっと息をついた。
隣に座っているハウリーをちらりと見ると、優しく微笑まれる。
彼に迷惑をかけたくなくて、ミシェラはずっと思っていたことを口にした。
「あの、この髪の毛を切りたいんです。何かナイフがあれば貸してもらえませんか?」
ミシェラの言葉に、ハウリーは首を傾げた。
「なんで髪の毛を切りたいんだ? こんなに白い髪の毛は見たことがない。もったいないだろう」
「この髪の毛を見ると、嫌な思いをするかもしれないので。それに、こんな白い髪の毛は、きっと軽蔑されます。ハウリー様に迷惑をかけたくないのです。できれば色を付けたいのですが、せめて短い方がいいかと」
汚れていない白い髪の毛を撫でながら、陰鬱な気持ちになる。
「昨日も言ったが、その髪の毛の色は魔力量の多さを表している。魔術師団においては特別な色だ。切る必要はない」
何故か強い口調で、ハウリーは被っていたフードを下した。
「……まじゅつしだん」
「そうだ。前回は途中で話が終わってしまったが、私の髪の一部も君と同じだ」
知らず、ハウリーの髪に手を伸ばして、それを触った。
前回見た時はパニックになってしまったが、やはり本物だ。
もしかしたら、ハウリーの事も悪く言ってしまったと思われたかもしれないと思い当たり、反省する。
彼はミシェラのように真っ白ではない。
自分のような扱いはされなかったのだろうか。
青い髪と白い髪のコントラストが綺麗で、ミシェラはさらさらとハウリーの髪の毛を流した。
ハウリーは困ったように眉を下げ、ミシェラにされるがままになっている。
「魔力が多ければ白い髪の毛になる。だた、魔力コントロールを覚えた場合や、魔力がそこまでじゃなければ途中で止まる。こういう風に」
同じように侮蔑されるべき白い髪がハウリーにあることが、やはり信じられない。
何も言えないでいると、ハウリーは眉を寄せた。
「私は前者の方だから誤解しないように。きっと魔力コントロールを知らなければ、ミシェラぐらい白くなる。魔術師団でも、白くなる程の魔力量は稀なのだ。実際、村に連れてきた団員には居なかっただろう?」
「私、このままでいいんですか?」
ミシェラの質問に、ハウリーはそっとミシェラの髪を取り、見つめた。
「もちろん嫌ではない。これだけの魔力量なら、出来ることも多いだろう。良い魔術師になれると思う。ミシェラの白い髪を、魔術師団として歓迎する」
「そう、なんですね」
嫌じゃないと言われてうれしい。けれど、急にこの髪色を歓迎されると言われても、それこそ実感がわかなくてミシェラは曖昧に頷いた。
「私と一緒は嫌か?」
「ええっと、そ、そんな事ありません!」
「なら良かった。お揃いだ」
にっこりと笑うハウリーに、なんだか急にどきどきしてしまう。
ミシェラは慌てて別の質問を探した。
「あの、魔術師ってなんですか?」
「魔力を持っているものはそもそも少ないが、その中でも魔力を使って魔術を使う事が出来る人はさらに少なくなる。それに秀でたものを、魔術師と呼ぶ。君も、私と同じ魔術師を目指すのだ」
ハウリーに力強くいわれ、ミシェラは驚いてしまう。
村長の時にも言っていたが、なにかの脅し文句だと思っていた。
「私が、本当にその魔術師になれるんですか?」
「そうだ。魔術師になって、私と一緒に働こう。ミシェラがそういう風に扱われたのは、あの村が間違っていたんだ。……私もミシェラの髪は綺麗だと思う」
「……ありがとうございます」
綺麗だなどと、初めてそんな風に言われて、ミシェラはどうしていいかわからなくなる。
しかし、続いたハウリーの言葉が自称的に響き、ミシェラは不思議な気持ちになった。
「戻れば、すぐにわかる。軽蔑は、ない。どちらかといえば……。ただ、それが気分のいい事かはわからないな。そばには私が居るから、ミシェラには何かあったとしても安心してほしい」
何かを思い出しているようなその言葉は、ミシェラには悲しく聞こえた。
言葉の意味がわかったのは、ハウリーの言う通り魔術師団の大きな建物に着いてからだった。
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