昭和特撮想い出アンソロジー №3 「怪奇大作戦」

國永 覚

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怪奇大作戦

怪奇大作戦 3.シリーズを通して

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【シリーズを通して】
「怪奇大作戦」以前の円谷プロダクションは、巨大ヒーローや怪獣などのスーツ(着ぐるみ)の制作、宇宙船や林立するビルなどの
ミニチュアワークを売りにしてきた。
当時のTBSプロデューサー・橋本洋二氏が、「ウルトラマン」以外で特撮番組は作れないかと言う打診が有りその結果、光学合成を駆使し科学犯罪をドラマの基軸にした作品が「怪奇大作戦」である。
 結果から言えば、平均視聴率22%の高い数字を叩き出したのにもかかわらず、メインスポンサーである武田薬品はお目が高く、「2クールを以って終了」となり、26回丁度で打ち切りとなった。

しかしながらどのエピソードを見ても傑作群と言っても良いほど、ドラマの珠玉揃いだった。筆者としては第7話「青い血の女」と、第15話「24年目の復讐」がお気に入りである。

 第7話では老人の孤独をテーマにエピソードが展開された。三沢の友人・鬼島が自身の父親を今で言う「老害」と言わんばかりに、隔離状態にしていた。その裏で鬼島の父親が溺愛していた人形が次々と、通行人を殺傷。三沢も軽傷で済んだものの被害に遭った。
このドラマの結末は、4歳の女児の遺体(鬼島の父の孫?)が念動力(思念が残存)で、引き起こしたことで原因が解明された。
 ドラマにおいてはSRIの三沢がメインとして行動するものの、人形に斬り付けられたり、警察から疑いの目で視られたりと、本人にしては「弱り目に祟り目」の心境だったであろう。この回の三沢は良く言って「受け身の名人」、悪く言えば「サンドバッグ」状態だった。
 やはり今回のもう「一人」の主役・女児の人形の凶行だった。もちろん殺害場面の怖いものを感じたが、それを上回るのが人形の顔のメイクだった。何らかの悪事を敢行する時、素顔を隠すのが一種の所作であろう。この人形の場合、白地の顔に吊り上がった青いアイシャドウを塗布。

 
他にも例があり昭和52年(1977年)放送の「新必殺仕置人」にて、念仏の鉄が当時人気絶頂のメタルバンド「KISS」のメイクで、吉原の遊郭街を疾走し、標的の肋骨を粉砕するショッキングな場面が窺えた。


また現実世界でも、プロレスラー・武藤敬司選手が「グレート・ムタ」なるペイントレスラーに変貌し、凶器攻撃や毒水を噴霧するなど悪の限りを尽くした。


 ただエンディングの映像は、見ていて何故か気が重たくなった。乳幼児の人形がゆっくりと愛らしく、動いているのは孤独な鬼島の父親を慰め労っているのは、筆者の思い過ごしだろうか?

 第15話は戦後から24年目、海中から旧日本軍の水兵が夜の横須賀に上陸し、駐屯中の米兵を次々と襲撃。SRIと町田は、戦後から24年目の現在(放送当時の昭和43年)に水兵が生きていられたのは、潜水艦で僅かばかりの酸素で存命が可能だと認識した。その後牧は水兵が出没する猿島へ単独潜入。暗い密室で見つけたのは例の水兵・木村の日記だった。まさか23年も玉音放送を聴くことなく、その薄暗い密室で過ごしていたのかと思うと、遣り切れない気持ちだったであろう。木村は全身にダイナマイトを巻き付け、ボートで停泊中の軍艦に体当たり。火柱とともに消えてしまった。
 この回の軸は「昭和16年12月8日」という日付である。その日は太平洋戦争開戦の日であった。

 
奇しくもその日、町田は警視庁に拝命された日であり、牧は自身の誕生日でもある。キャストもそうだが、当時のスタッフは戦前生まれの方々が多い。特に脚本家においては金城氏と上原氏は、沖縄にて米軍の猛攻を直に体験。市川先生においては、僅かばかりではあるが長崎にて被爆を体験した。「怪奇大作戦」に限った話ではないが、昭和のあらゆる特撮番組は少なからずとも「反戦と平和」を願って制作されたものと、いつまでも感じていたい。




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