とある虫の転生顛末

雅楽と化す

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虫に転生してしまった

スキルの確認と初戦闘

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ふんふふんふふーん♪
鼻歌を心で歌いながらどんどん俺は進む、心の中だから鼻歌じゃないか。
そんなどうでもいい話を考えながらご飯を探し回る一般通過幼虫こと俺ですね、はい。
奥の方に進んだからあの毒キノコとかあると思うんだが…、
まあ都合のいい展開なんてそうそうないだろうな~。
こんな下らないことを頭のなかで喋って歩いているとなんと例の毒キノコらしいキノコが生えている木を見つけた。
やったぜ、あからさまな御都合主義にばんざーい!
早速キノコに近寄り、観察と念じる。
すると頭になにやら簡易的なイメージが入り込んでくる。
〈有毒〉
ほぉー、へー。観察なんて名前だから単にあの黒いオーラが見えやすくなるみたいな効果かと思ったんだけど予想を越えたな。
これで食べ物集めの時に惑わされないですむぞ!ヤッタゼ!
本当はそんなに使えなさそうなスキルだな~って思ってたのは秘密。
んじゃまあ、毒ってわかったしスキルの使用練習でもしますか。
今使えそうなスキルは[溶解液]と[歯軋り]。
[溶解液]の方が戦闘に使えそうな感じがするな、よし!溶解液を先に使って後で歯軋りを使ってみよう。
ふぅん![溶解液]!
うっ!?急激に吐き気がっ……!ヴぅぅ………。
突然、体の内側から込み上げてくる激しい不快感…つまり猛烈な吐き気が喉へ迫ってくる。
こっ、これ……吐かないと…。うぅ…おぼぼぼぼぼぼぼぼぼ………。
俺の口から溢れでるゲロは、重力にしたがってそのまま落ちると思ったが、なんとゲロはそのまま直線に射出され目の前にあった毒キノコに当たった。
そして驚いたことに毒キノコがドロッと、溶けていた。
え……?やばくね?俺のゲロ、酸性強すぎ…。ってこれ多分[溶解液]の効果か。
[溶解液]の効果は凄いけど毎回使う度にあの吐き気に襲われるのか……。直ぐに吐くようにすればそんなにないのかな。
じゃ、溶解液は終わるとして次は[歯軋り]使ってみようかな。
[歯軋り]!
そう心の中で唱えると突然ギリギリギリギリというような音が俺の体から出た。
こんな音聞いたら普通は不快だろうが俺にはそう感じなかった、自分の音だからだろうか?
ふと違和感を感じ、後ろを振り返る。
俺ほどの大きさの八枚の花弁を持った花がザワザワという葉が擦れるような音を発している。
あ、そうだ。[観察]!
観察で少しは情報がわかるはず…。また頭に簡易的なイメージが入ってくる。前と違うのは少し頭にズキッと痛みが走ったということだ。
 〈有害〉
『熟練度が一定に達しました。スキル[観察]がLv2になりました』
有……害…………?害を…なすってコト?!
その数秒後、細い蔓があの花からこっちに向かって伸びてくるのが見えた。
げっ!?避けないとヤバそう!確認は後だ!
たった2しかない速度で必死に避けた、直後ベチンッという音が横から聴こえた。音が鳴ったのは蔓が地面を叩いているからだったのだ、叩かれた場所は少しへこんでいた。
ひぇあっ!
地面が少しでもへこんでるなら俺の貧弱ステータスだと一撃必殺になるかも……。
けど多分あいつは花だからあそこから動けないはず!
まぁ、だからといってこっちからも何も出来ないんだよね。ハッハッハッハッハー、じゃないんだな。
さて、こうなったら逃げれはするんだけどやっぱり、何となく初めての戦いで逃げたくはない。
だってカッコ悪いじゃん、そんな感じ。
今、俺の攻撃手段は噛み付くことと、[溶解液]。噛み付きはやったこと無いけど、[溶解液]はあの威力だ。確実に倒せる!
いくぞぉ!!
「ギミィィ!!」
「…!……!」
威嚇をしてみたがあいつはずっとザワザワしている。俺にいつでも攻撃できますよ、って言ってるように蔓を構えている…。
初めての、戦闘だっ!
「ミッッ!」
「……!…!…!」
俺は今出せる全力を足に込めて花に飛び掛かった!花も飛び掛かってくる俺に向けて蔓を伸ばしてくる!
だがここで[歯軋り]!
ギリギリギリギリギリギリと不快な音が発せられる、すると蔓の動きが一瞬止まった。花本体も身を竦めている。
よし!やった!今さっき使った[歯軋り]には対象を不快にさせる能力があるらしい、だから一瞬でも動きを鈍らせれるかもと思ったが……ビンゴだ!
俺は飛び掛かった勢いのまま、進行方向の蔓に体当たりし本体の目の前に飛び出した。
このまま噛み付く!この身体の小さな口を目一杯開け、奴の花弁の一枚に食いついた。
奴はたまらず身体を振り乱した、それに伴って噛み付いた俺も振り回される。
身体が地面に何度も叩きつけられ、皮が弾け、強い痛みに襲われる…。意識も朦朧としてきた…。
まだだ、これを叩き込めば………!俺は心の中で念じた。
[溶解液]!
猛烈な吐き気に襲われる…、だが絶対コイツから口を離すな!全部ぶっかけてやる!!
そして俺の喉から花弁へ、[溶解液]が花に触れる。
「……!!!……………!…!……!!」
何か感じたのか花はより一層暴れたが[溶解液]によりみるみる溶かされ次第に動きが鈍り、そして動かなくなった…。
『熟練度が一定に達しました。[溶解液]がLv2になりました』
…やった、やったぞ!俺は倒したんだー!イエーイ!!
このまま小躍りでもしたい気分だが俺も限界だ。とてもお腹減ったし、身体中痛いし……。
この花って食べられるのかな?
こうして、俺の初戦闘はなんとか勝利で決まったのだった。
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