陽のあたる場所

こたろ

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溺れる魚

溺れる魚7

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「…悔しいっスね。」


「悔しいよ…。


でも、決して向こうは間違ってないんだよ!

言われたその通りなんだよ…。


納得いかないなら辞めるしかない。



でも俺は昔散々親に迷惑かけたから、親孝行したいんだ。」



店長の両親は実家の近くでコンビニを経営していて

この店のオーナーも店長の父親だ。



よく"子は親の背中を見て育つ"と言うけれど、

店長が真面目に働いている様子を見ていると、その通りなんだなと感心する。


コンビニという誰もが利用する日常に溶け込んだお店で働くというのは

刺激がなくて退屈と捉える人が大半なのかもしれない。


しかし忘れてはいけないのが

その日常の風景こそが、実は一番必要でなくてはならないモノだったりするのだ。


つまりみんなのなくてはならないモノの為に働く人こそ、

本来感謝すべき人間であり、素晴らしい人材なのだ。


そのごく普通な日常を自ら楽しんで働いている店長は

俺の中では尊敬に値する存在で、大袈裟に言うならば

一生かかっても追い付けない存在だ--。



なぜなら、俺の好きな"ファッション"とは所詮自分のエゴの為でなのだ。


だからこそそれを仕事にしようものならば、

言わば自己中心的なエゴイストに過ぎないのだ。


しかし、そのエゴを必要としてくれる少数派がいるのもまた事実…。



「でもさぁ、やっぱり廃棄の事はずっと納得いかないままで…


働いていると俺の中でこうジレンマが…こう…


ぁああっ!!なんか自分の意志に反してるっ!!

…って、なんだかずっと自分の気持ちと戦い続けながら働いるんだよね(笑)」



「難しいですね…。

会社側からすれば結局利益が一番優先ですもんね。


悔しいですけど、結局その利益で自分達は生活できてるんですもんね…。」



時に人は非情な選択を迫られる事がある。


何かを捨てなきゃ大切なモノを守れないこともある…。



しかし、その"大切なモノを守る"という意志もまた、

ただの己のエゴに過ぎないのだ…。



例えばもし君が、たった1人安全な船に乗っていると仮定する。

船の左手には、見知らぬ人が2人溺れているとしよう…。


船の右手には、恋人が溺れているとしよう--。



さて、君ならばどうするだろう---?






仮に俺なら迷わずこう答える。


『右手の恋人を助けに行く』……と。
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