陽のあたる場所

溺れる魚

溺れる魚6

その翌日、コンビニに出勤すると…


「…え？マジっすか…。」


「な、悲しいよな。

こんな時でも余るモンがあるなんて…。」


異常な"買い占め"現象が続く中、

コンビニでは少ないながらも廃棄の商品があった…。



その理由としては弁当やおにぎりなど、賞味期限が早い物より

乾物やレトルトなど保存食系が売れる傾向にあるからだ。


そして、入荷される弁当やおにぎりの種類がごく僅かで偏っていたからだ。



その状況をみると、店長も俺もなんだか言いようのない憤りを感じていた…。



それは、僅かしかない残った品揃えに対して

『なんだ。これしかないのかっ!!』

とケチをつけて帰る人間が異常に多かったからなのだ…。



なんだか悔しくて…

俺は休憩中余った廃棄のパンを食べていた。


確かに廃棄が出るのはしょうがない事だ。

ただ、みんなこんな状況でも選り好みをする人の多さが悔しかった…。



「俺さぁ実は昔、この廃棄のことで上の人と揉めたことがあるんだよ。」


「どうしてですか？」


「俺、廃棄って大嫌いなんだよ！


捨てるだけで誰にも利益がない。


だから廃棄を出したくなくて、弁当なんかの仕入れを少なくしてたんだよ。


そしたら怒られてさぁ!!」


「あぁ…。」



俺ももうコンビニ歴は10年以上だから、上層部の意見も理解はできる…。



その理由は…


「廃棄がほとんどない。

イコール、『売れかもしれない商品の可能性さえも潰してしまっている』って言われてさぁっ!!」


「なるほどぉ…。」


「だって、だからと言ってたくさん仕入れたら

たくさん廃棄が出るに決まってるじゃないか!!」


「…そうですね。」


「でもそれでも『仕入れを増やせ』ってしつこいからアッタマきて

『俺は廃棄を出したくないから仕入れを増やしたくないっ!!

コンビニのそのシステムを変えてくれっ!!』

って怒鳴りつけたんだよっ!!」



「そしたら…？」



「そしたらさぁ…



『コンビニとはそういうものなんです。






納得いかないのであれば、

あなたがコンビニを辞めるしかないです』

って言われたんだよ…。」