上 下
11 / 24

第11話 復讐者リベンは次なる復讐対象の元へ行く

しおりを挟む
~◆ビチの屋敷◇~

 「コザとカイステがあの役立たずのリベンにやられたですって?」

 勇者パーティの一人ビチはとある人物から報告を受けていた。

「そうだ」

 その人物はそう一言だけ呟くと、彼女は気分悪そうにただもし黙った。

「どうした?」

「何でそんなことをこのあたし耳に入れるの?コザとカイステはもうじき勇者パーティから追い出されるような無能者じゃないの。これからあたし彼氏とバカンスに行く予定なんだけどさ」

 ラチャは勇者パーティの魔術師であり、コザ、カイステと並び称される無能者であり、無能三人衆の中では唯一の女性だ。

 容姿は本部の勇者パーティに所属のエルミアとは異なり、非常に醜い容貌をしており、歳は四十二歳であるにもかかわらず、若者のようなひらひらした服に強欲な豚のような人相に加え、赤子のようにぶくぶくした太った手には枷のような指輪がキツそうに挟まっており、キツイ香水の匂いが漂うなんと不潔で醜悪な見た目をしていた。

 彼女もまたリベンを追い出した一人であり、コザやカイステと並んで、アレックスに毎日のように追放するように進言していた。

 さらにコザやカイステよりも厄介な存在であり、とある貧しい家庭で育った婚約者を金の力で奪い、婚約破棄に追い込んでいる。

 日ごろから働きもせず、新人(特に若い女の子)に当てり散らしていた。

 そう言うことでコザとカイステと並んで、勇者パーティから追放されそうな一人であると噂されているが、彼女はそれをエルミアを始めとする若手のせいとしている。

「次の標的がお前だと思った。それだけだ」

 ビチはその発言に怒った。

「はぁー!?何でこのあたしがリベンの標的になるわけ!?それ言ったら、先にあんたを狙うでしょう!普通は!?」

 その言葉に謎の人物はため息をつきながらこう言った。

「誰に意見してんだ?豚が」

 その言葉にビチはびくっとなった。

「お前と俺の立場であれば、奴ならば格下のお前を先に狙うだろう。それにお前は奴からの恨みを買っている。奴が先にコザとカイステを狙ったのが、奇跡に等しいわ」

「ふざけてんじゃないわよ!!あいつがあたしに反抗的な態度を取っているのが悪いのよ!!だいたい、あいつは使えな…」

「俺から見ればリベンも貴様も役立たずに違いねぇ!!てめぇみたいな豚ババアがこの俺に意見すんじゃねぇぞ!!」

「ひぃ!!」

 謎の人物はビチを怒鳴りつけると、彼女は黙った。

「いいか、よく聞け!!リベンを討て。そして、コザとカイステの仇を取るんだ。そうすれば、上にはいい報告してやる。もし、できねぇなら…わかってんだろうな?」

 その言葉にビチは押し黙った。

「リベンは必ずお前の前に現れる。殺るか殺されるかだ。お前にはパーティの一員として期待している」

 謎の人物はそう言い残すと、その場から立ち去った。

 怒りに震えるビチは部屋から勢いよく飛び出すと、彼女の元で働いている事務職員たちの元へ来た。

 職員たちは彼女が入ると、部屋の中に凍り付いた雰囲気が漂った。

 彼女はずかずかと大きな足音立てながら、最近入った若い女性職員の近くに来ると、机をバンと叩いた。

「あんた仕事は?」

 その言葉に女性はびくっとなり、立て込んでいる仕事を止めた。

「えっ…今やっていますが…」

 ビチは何も言わず、彼女が終わらせた仕事書類を奪った。

 すると、突然目をかっと開き、女性にこう怒鳴りつけた。

「あんたここ間違えてんだけど!!あんた入って何か月なの!?」

 ビチは怒鳴りながら、書類をバンと力任せに叩きつけた。

 女性は恐怖でびくびくしつつも、彼女にこう答えた。

「そちらの書類ですが、先輩にも書類にミスがないか、見てもらいました。その時ミスはないと言われました」

 彼女の言う通り、書類にミスなどなかった。

 強いて言うならば、ちょっと字を間違えたから訂正印を押しているぐらいだろう。

 すると、ビチは大量の書類をビリビリ破き捨てた。

「言い訳してんじゃないわよ!!私あんたに何度も教えたはずでしょうが!?いい!!今日中にその書類を仕上げなさい!!言っておくけど、あんたみたいなただ飯食いに払う給料はないから!!その分の給料は払わないから!!」

 彼女はそう言うと、ギロリと周囲で黙ってみている人間にこう怒鳴りつけた。

「あんたらもだよ!!今日はみんな給料なしで働きなさい!!あたしは忙しいから!!」

 彼女はそう言うと、部屋から勢い出た。

 おそらく、ビチを金づるにしている彼氏の元へいくつもりだろう。

 だが、彼女は知らなかった。

 復讐の化身がそちらに向かっていることを。

~◆ザギグの街・噴水広場◇~

 噴水広場ではワニガメの大群が占拠していた。

「うおおおおおおおおおおお!!どこだ!!クソ豚女!!」

 謎の人物の言う通り、リベンはワニガメたちにビチを居場所を探らせていた。

 ワニガメたちは陸地にいるのが嫌なのか、速攻で噴水の中へと入って行った。

「何さぼってんじゃああああああああ!!てめぇら!!」

 リベンは噴水の中に腕を突っ込んだ。

 バクッ!!

 しかし、腕をまるごと食われた。

「ぐわあああああああああ!!おれの腕が!!おれの腕が!!」

「のっけからうるせぇなこのおっさんは!!」

 リベンは痛みからのたうち回ると、救世主が現れた。

「お困りのようだね」

「そ、その声は!!」

 彼の前に現れたのは恰幅のいい機械義手整備士だった。

「ハッミカーさん!!」

「誰だよ」

 ロークスの冷たい突っ込みの後、ハッミカーは笑ってこう言った。

「腕を見せなさい。新しい腕を差し上げましょう」

 彼はそう言うと、リベンに新しい腕をつけた。

 そう、ダブルドリルアームをつけてあげた。

「わっーありがとう!!ハッミカーさん!!」

 彼はそう言って、ハッミカーの腹部にドリルで掘った。

 ギュイイインンンンンンンンンン!!

「ぎゃああああああああああ!!」

 そして、ハッミカーから流れ出る大量の血はそのまま芭唖火保二刀流奥義“血の案内”が始まった。

「あら、案内板が…」

「鮮血に染まってんだろう!!少しは驚けや!!」

 血の案内はビチの場所を示した。

【う~ん、右のほう!!】

「なるほど!!わかるかぁああああああああああああああああ!!」

 血の案内は殴られると、飛沫となって飛び散った。

「えっ、やめちゃうのですか!?」

 フラムが驚くと、リベンはにやりと笑った。

「その心配はない」

 その血の臭いに引きつけられたのか、ワニガメたちは噴水から出てきた。

 そして、血を足につけると右の方へ歩き出した。

 ゴリラみたいな怪物が。

「お前が案内すんのかよ!!」

「誰もてめぇに頼んでねぇ!!」

 ゴリラみたいな怪物は頭から殴られると、割り箸を口から大量に噴き出した。
~◇ビチの屋敷◆~
 ビチのパワハラを受けた女性職員はトイレで一人で泣いていた。

「うっ…ひくっ…」

 だが、そんな彼女の前に大量の割り箸が屋敷に刺さったのが、トイレの窓から見えた。

「きゃああああああああああああ!!何!?何事なの!?」

 そして、その割り箸の下をゴリラみたいな怪物が雑コラみたいな動きで、何かから逃げている様子であった。

「ウホホホホホホホウホンッ(こんな生活もう耐え切れない!!実家に帰らせてもらうわ)!」

「何あの化け物!?考えた奴出てきなさいよ!!」

 彼女は驚くのも束の間、追撃が来た。

「待てやゴラァ!!結婚しねぇとぶち殺してやるぜ!!このストーカー化け物女郎が!!」

 次に出てきたのは2mを越える身長を持つ、筋肉ムキムキのおっさんだ。

 そいつはトゲ付きの鉄球を振り回しながら、化け物を追いかけていた。

(何なの、あのおじさん!!見た目奇抜すぎんだけど!!つーか、あの化け物メスなの!?)

 いいえ、雌雄同体です。

 基本的にはオスが多いらしい。

 そして、その後ろを地味な少年が傘を剣に見立てて遊んでいた。

「ふっ、オレのエクス傘バーが火を噴くぜ」

(滑っているわよ、少年)

 女性はロークスを冷ややかな目で見た。

「男の子って、こういうの好きだよね~」

 赤い髪の可憐な少女がロークスが傘を弄っているのを見てクスクスと笑った。

(あっ、可愛い娘もいるのね…って、スタイルが全然可愛くねぇ!!寄越しなさい!!そのむっちりとした胸と尻!!)

 だが、そうこうしている間に化け物が窓ガラスを叩き割って屋敷へ侵入した。

「きゃあ!!」

「助けて(ウホッ)!!」

「喋った!?」

 そして、次は壁をぶち破って、あの男が入ってきた。

「さて、あのババアはどこかな?」

 さぁ、仕返しの始まりだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

二度も親を失った俺は、今日も最強を目指す

SO/N
ファンタジー
主人公、ウルスはあるどこにでもある小さな町で、両親や幼馴染と平和に過ごしていた。 だがある日、町は襲われ、命からがら逃げたウルスは突如、前世の記憶を思い出す。 前世の記憶を思い出したウルスは、自分を拾ってくれた人類最強の英雄・グラン=ローレスに業を教わり、妹弟子のミルとともに日々修行に明け暮れた。 そして数年後、ウルスとミルはある理由から魔導学院へ入学する。そこでは天真爛漫なローナ・能天気なニイダ・元幼馴染のライナ・謎多き少女フィーリィアなど、様々な人物と出会いと再会を果たす。 二度も全てを失ったウルスは、それでも何かを守るために戦う。 たとえそれが間違いでも、意味が無くても。 誰かを守る……そのために。 【???????????????】 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー *この小説は「小説家になろう」で投稿されている『二度も親を失った俺は、今日も最強を目指す』とほぼ同じ物です。こちらは不定期投稿になりますが、基本的に「小説家になろう」で投稿された部分まで投稿する予定です。 また、現在カクヨム・ノベルアップ+でも活動しております。 各サイトによる、内容の差異はほとんどありません。

【北の果てのキトゥルセン】 ~辺境の王子に転生したので、まったり暮らそうと思ったのに、どんどん国が大きくなっていく件について~

次元謄一
ファンタジー
タイトル変更しました→旧タイトル 「デッドエンドキングダム ~十五歳の魔剣使いは辺境から異世界統一を目指します~」 前世の記憶を持って生まれたオスカーは国王の落とし子だった。父の死によって十五歳で北の辺境王国の統治者になったオスカーは、炎を操る魔剣、現代日本の記憶、そしてなぜか生まれながらに持っていた【千里眼】の能力を駆使し、魔物の森や有翼人の国などを攻略していく。国内では水車を利用した温泉システム、再現可能な前世の料理、温室による農業、畜産業の発展、透視能力で地下鉱脈を探したりして文明改革を進めていく。 軍を使って周辺国を併合して、大臣たちと国内を豊かにし、夜はメイド達とムフフな毎日。 しかし、大陸中央では至る所で戦争が起こり、戦火は北までゆっくりと、確実に伸びてきていた。加えて感染するとグールになってしまう魔物も至る所で発生し……!? 雷を操るツンデレ娘魔人、氷を操るクール系女魔人、古代文明の殺戮機械人(女)など、可愛いけど危険な仲間と共に、戦乱の世を駆け抜ける! 登場人物が多いので結構サクサク進みます。気軽に読んで頂ければ幸いです。

見捨てられたのは私

梅雨の人
恋愛
急に振り出した雨の中、目の前のお二人は急ぎ足でこちらを振り返ることもなくどんどん私から離れていきます。 ただ三人で、いいえ、二人と一人で歩いていただけでございました。 ぽつぽつと振り出した雨は勢いを増してきましたのに、あなたの妻である私は一人取り残されてもそこからしばらく動くことができないのはどうしてなのでしょうか。いつものこと、いつものことなのに、いつまでたっても惨めで悲しくなるのです。 何度悲しい思いをしても、それでもあなたをお慕いしてまいりましたが、さすがにもうあきらめようかと思っております。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

転生メイドは絆されない ~あの子は私が育てます!~

志波 連
ファンタジー
息子と一緒に事故に遭い、母子で異世界に転生してしまったさおり。 自分には前世の記憶があるのに、息子は全く覚えていなかった。 しかも、愛息子はヘブンズ王国の第二王子に転生しているのに、自分はその王子付きのメイドという格差。 身分差故に、自分の息子に敬語で話し、無理な要求にも笑顔で応える日々。 しかし、そのあまりの傍若無人さにお母ちゃんはブチ切れた! 第二王子に厳しい躾を始めた一介のメイドの噂は王家の人々の耳にも入る。 側近たちは不敬だと騒ぐが、国王と王妃、そして第一王子はその奮闘を見守る。 厳しくも愛情あふれるメイドの姿に、第一王子は恋をする。 後継者争いや、反王家貴族の暗躍などを乗り越え、元親子は国の在り方さえ変えていくのだった。

【完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

処理中です...