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低学年編
別れ
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大会から一週間後。練習の最後に監督が全員を集めて言った。
「実は、真守が練習にいるのは今日で最後だ。真守、みんなにあいさつして」
「当然のことで驚かせちゃってごめんね。僕は今日でこのチームを辞めます。もちろん、サッカーは続けるから、またいつか試合しようね!今までありがとう!」
みんなは拍手していたが、僕はショックで何もできずに立ち尽くしていた。真守がやめる?なんで?意味がわからない。頭がグラグラする。一回落ち着こうと、深呼吸をする。止まっていた肺が大きく膨らんで、酸素が全身に行き渡る。冷静になってもう一度考えてみる。真守がこのチームを辞める。でもサッカーは続ける。なんだ、簡単なことじゃないか。真守は誰よりもサッカーが上手い。しかも、お父さんはプロサッカー選手だ。今よりもずっと強いチームに行くのだろう。そして、もっともっと上手くなってサッカー選手になるんだろう。そう思うと、真守は今、目の前にいるのに、なんだかずっと遠くの存在に感じられた。真守に声をかけることができないまま解散になり、みんな帰っていった。言いたいことはたくさんある。だけど、なんて声をかければいいのか分からなかった。モヤモヤした気持ちを抱えたまま、車に乗り込もうとしたとき
「まって!」
真守が叫びながら走ってきた。僕の前に立つと、真守は息を切らしながら
「今までありがとね。先週の試合、ゴール決めてくれて、初めて勝ててめっちゃ嬉しかった!またいつか試合しようね!」
裏切り者とか、何で辞めるんだとか言ってやろうかとも思っていたけれど、真守の真っ直ぐな言葉を受けて、そんな気持ちはなくなった。むしろ、憧れや感謝の思いがあふれ出してくる。
「いや、真守がゴールを守ってくれたから勝てたんだよ。こっちこそありがとう」
憧れを伝えるのは恥ずかしいので、感謝だけをしっかり伝える。すると、真守が急に真剣な顔つきになって言った。
「いつか試合するときはさ、ゴール決めさせないからね?」
その言葉に、僕はしびれた。確かに、今の僕では真守からゴールを決めるなんて無理だ。でも、いつか試合をするときには、真守からゴールを決めなければ試合には勝てないのだ。そう気づいたとき、改めて、真守が違うチームにいくことを実感する。それと同時に、決意する。
「いや、絶対決めるよ。もっともっと上手くなるから。真守がいなくたって勝てるチームになるからな!」
僕の決意を聞いて満足したのか、真守はにっこり笑う。
「それは楽しみだなぁ。じゃあまたいつかその日まで!」
そう言って、真守は走っていった。僕は、真守に憧れて上手くなりたいと思った。真守みたいになりたいと思った。でも、もうそれではダメだ。真守と対等に戦える選手になりたい。そして、真守からゴールを決められる選手になりたい。そのために、僕は今日、憧れを捨てた。
「実は、真守が練習にいるのは今日で最後だ。真守、みんなにあいさつして」
「当然のことで驚かせちゃってごめんね。僕は今日でこのチームを辞めます。もちろん、サッカーは続けるから、またいつか試合しようね!今までありがとう!」
みんなは拍手していたが、僕はショックで何もできずに立ち尽くしていた。真守がやめる?なんで?意味がわからない。頭がグラグラする。一回落ち着こうと、深呼吸をする。止まっていた肺が大きく膨らんで、酸素が全身に行き渡る。冷静になってもう一度考えてみる。真守がこのチームを辞める。でもサッカーは続ける。なんだ、簡単なことじゃないか。真守は誰よりもサッカーが上手い。しかも、お父さんはプロサッカー選手だ。今よりもずっと強いチームに行くのだろう。そして、もっともっと上手くなってサッカー選手になるんだろう。そう思うと、真守は今、目の前にいるのに、なんだかずっと遠くの存在に感じられた。真守に声をかけることができないまま解散になり、みんな帰っていった。言いたいことはたくさんある。だけど、なんて声をかければいいのか分からなかった。モヤモヤした気持ちを抱えたまま、車に乗り込もうとしたとき
「まって!」
真守が叫びながら走ってきた。僕の前に立つと、真守は息を切らしながら
「今までありがとね。先週の試合、ゴール決めてくれて、初めて勝ててめっちゃ嬉しかった!またいつか試合しようね!」
裏切り者とか、何で辞めるんだとか言ってやろうかとも思っていたけれど、真守の真っ直ぐな言葉を受けて、そんな気持ちはなくなった。むしろ、憧れや感謝の思いがあふれ出してくる。
「いや、真守がゴールを守ってくれたから勝てたんだよ。こっちこそありがとう」
憧れを伝えるのは恥ずかしいので、感謝だけをしっかり伝える。すると、真守が急に真剣な顔つきになって言った。
「いつか試合するときはさ、ゴール決めさせないからね?」
その言葉に、僕はしびれた。確かに、今の僕では真守からゴールを決めるなんて無理だ。でも、いつか試合をするときには、真守からゴールを決めなければ試合には勝てないのだ。そう気づいたとき、改めて、真守が違うチームにいくことを実感する。それと同時に、決意する。
「いや、絶対決めるよ。もっともっと上手くなるから。真守がいなくたって勝てるチームになるからな!」
僕の決意を聞いて満足したのか、真守はにっこり笑う。
「それは楽しみだなぁ。じゃあまたいつかその日まで!」
そう言って、真守は走っていった。僕は、真守に憧れて上手くなりたいと思った。真守みたいになりたいと思った。でも、もうそれではダメだ。真守と対等に戦える選手になりたい。そして、真守からゴールを決められる選手になりたい。そのために、僕は今日、憧れを捨てた。
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