気付くのはいつも遅すぎて

横田碧翔

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席替えの結果は最悪だった。仲良いやつらとは斜めに教室の端と端で別れた。しかも、裕也とそれ以外で別れたのだ。しかも、後ろにはいつもイヤホンして1人でいる名前も知らない女子がいた。この数ヶ月、誰かと話しているのはほとんど見たことがない。ミステリアスを飛び越えて、ただただ不気味なやつだった。
「じゃあ夏休みまでの間、この席でよろしく」
そう言って先生が教室から出て行く。それを見届けると同時に
「この席はきついなーw」
見事に裕也以外の仲良しで固まったやつらが絡んでくる。
「出会いはどう?後ろの子とかオススメだけどwww」
さらに追い討ちをかけてくる。
「まぁもういいよ。夏休みまで2週間くらいだし。」
いくら仲良しとはいえ、今日はあんまりこのノリで会話したい気分ではなかった。それを察してくれたのか
「ま、そうだな」
そう言って自分たちの席へ帰っていった。1時間目までの間は寝て過ごそう。そう思って机に伏せてみるが全く眠れない。頭に浮かんでくるのは美紀のことばかりだった。下を向いているからなのか涙が溢れてくる。朝から教室で泣いてるやつとかいくらなんでも痛すぎる。深呼吸をして、心落ち着かせると、ゆっくり起き上がりながら机の涙を袖で拭きとった。思ったよりも袖が濡れて気持ち悪かったが、泣いていたことがバレるよりはマシだと思って我慢する。
「大丈夫?」
急に声をかけられ、驚いて振り返ると声をかけてきたのは後ろの席の不気味な人だった。
「大丈夫だけど、なんで?」
泣いていたのがバレたのかと思って少し焦る。
「いや、なんか朝から元気なさそうだし、今も肩が震えてたから。」
泣いてたからと言わないのはバレてないのか優しさなのか。そんなことよりも声をかけてきたことが驚きだ。いくら元気がないからといって、話したこともない人にいきなり声をかけるだろうか。優しさなのは伝わってくるが、その優しさが逆に不気味だった。
「大丈夫だよほんとに。ありがとうね。」
これ以上、会話を続ける気もなかったので前を向いて1時間目の準備をする。その前に、後ろでニヤニヤしながらこっちを見てる視線に気付いたが、それに対して何か言う元気はなかった。

 放課後、部活がオフだったので美紀とのことを、誰かにいじられる前に帰ろうと思い、すぐに教室を出て駅に向かう。いつもより1本早い電車に乗って帰れば安心だ。駅に着くとちょうど電車が来るところだった。
「ねぇ」
電車に乗れると安心した瞬間、横から声をかけられる。結局いじられるのかと思って横を見ると後ろの席の不気味な人がいた。
「なんですか?」
さすがに意味わからなすぎて、返事が敬語になる。
「マック行こうよ」
もっと意味がわからない。
「なんでですか?」
「元気なさそうだからさ、奢ってあげるよ」
「いや、そこまでしてもらわなくても」
「元気ないことは否定しないんだね。まぁ遠慮するなよ」
電車が来たので、とりあえず2人で乗り込む。
「いや遠慮とかじゃないので大丈夫です。」
もう不気味を通り越して恐怖だった。なんなのだこの人は。
「振られたんでしょ?彼女に。」
その話がしたくないから早く帰ってきたのに台無しだ。
「だったらなんですか?」
「私にチャンスを下さい」
いきなり敬語でマジトーンのお願いをされる。
「いやいや、今まで話したこともないじゃん。」
「だから話そうよ」
言ってることは間違っていないが、何か大事なことが間違っている。
「1時間だけでもいいからさ。ね?なんならハンバーガー食べ終わったら帰ってもいいよ?タダ飯ラッキーくらいに思ってさ。」
まぁ帰って1人になってもいろいろ考えてしまう気はしていた。ここまで言われると、ハンバーガー食べるくらいなら付き合ってもいい気がして
「じゃあ、30分だけ」
そう言って、最寄駅ではない次の駅で降車した。
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