気付くのはいつも遅すぎて

横田碧翔

文字の大きさ
上 下
3 / 11

3

しおりを挟む
 あまりに唐突で、別れたことの実感が湧かなかった裕也だが、美紀と別れたことを実感したのは次の日の朝だった。
 アラームが鳴ると、手探りでスマホを探す。寝ぼけながらもアラームを止めると、そのままLINEを確認する。いつも早起きの美紀は、必ず「おはよ~!」とLINEをくれていた。それに返信をしてから、支度を始めるのが裕也の日課だった。だが、その日は当然ながらLINEはきていない。なんだか、それがとてつもなく寂しかった。起きて支度をする気になれなかった。何気ない朝のあいさつが、こんなに大きなものになっていたことに気付く。まぁ昨日の今日だしな、そのうち慣れるだろう。そう思って、なんとか起き上がって支度を始める。今ごろ美紀は何をしているだろうか。何を考えているだろうか。その日は、1日中、美紀のことが頭から離れなかった。
 次の日、朝はまた昨日のような寂寥感に苛まれた。こっちから、おはようとLINEをしようかとも思ったが、どうにもバツが悪くてそれはできなかった。朝から最悪の気分のまま、電車に揺られて学校に行く。教室に入ると、仲の良い男子たちが駆け寄ってくる。
「お前別れたの?」
「そうだよ」
「やっぱ!やば!ウケるw」
ペア画像だったLINEのホーム画面が変わったことにこいつらは気づいたのだろう。分かってて聞いてくるからタチが悪い。しかも励ますどころかバカにしてくる。まぁそれでこそこいつらなんだが。
「ねぇなんでなんで!なんで別れたの!」
「なんでもいいだろ」
「いや気になるじゃん!どっちから?振った?振られた?w」
「振られた…」
「そっか、まぁうまくいってなかったしな。いい人見つかるって!」
まぁ態度はムカつくが言ってることも一理あった。実際、最近はうまくいってなかったのだし、振られても仕方がないと言えばそうかもしれない。それに高校生活だって、まだ始まって3ヶ月。いい出会いだってきっとあるだろう。そう思うとほんの少しだけ気持ちが楽になった。
 「そういえば、今日席替えじゃね?これはあるね出会いw」
「さすがにねーよ」
「いやーあるある。あんま話したことないけど、近くになったから話してみたら惚れちゃうパターン」
「少女マンガか」
そんなやり取りをしてる間にチャイムが鳴り、先生が入ってくる。
「朝の会やるぞー座れー。席替えもあるんだからチャチャっと済ますぞー。」
そんなすぐに良い出会いあるわけないと思うが、ほんの少し、ちょっとだけ、かなり期待している自分がいた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

この広い世界で2人は出逢う

月風 夜闇
恋愛
~この広い世界でシリーズ第1弾~ 中学二年生になった篠宮彩夏と黒峯辰馬の出逢いの話 篠宮彩夏と黒峯辰馬それぞれの視点から見た話になっています

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

好きな人がいるならちゃんと言ってよ

しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話

危険な残業

詩織
恋愛
いつも残業の多い奈津美。そこにある人が現れいつもの残業でなくなる

処理中です...