気付くのはいつも遅すぎて

横田碧翔

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 「部活頑張ってね❤︎応援してるよ❤︎」
「ありがとう❤︎頑張ってくるね!」
学校の最寄り駅の改札を出てから、いつも通り、相手に合わせてLINEの返信をする。めんどくさいが、彼女を怒らせるともっとめんどくさいので我慢する。高1の夏休み、裕也はクラスメイトの真美と付き合って1ヶ月記念日を迎えようとしていた。

 2ヶ月前。裕也には中学時代から付き合ってる彼女がいた。名前は美紀。中3のときに同じクラスで、去年の夏休みに裕也から告白をして付き合うことになった。それからは毎日が幸せで幸せでたまらなかった。受験勉強も一緒にして、別々の高校ではあったが、2人とも第一志望校に合格。高校に行ってもずっと仲良しなんだと思っていた。だが、そう上手くはいかなかった。高校に入ると裕也は部活に打ち込んだ。裕也の学校はサッカーの名門校で、とにかく多忙を極めていた。そのせいで、なかなか会う時間も作れず、連絡の頻度も減っていった。



「ねぇ、今日会えないの?ウチきなよ、誰もいないよ今日。」
「ごめん、ちょっと用事が。また今度誘って欲しいな。」
これで家に誘われるのは何度目だろうか。付き合って1ヶ月もたっていないのに。明らかに下心が見え見えでうんざりしていた。付き合う前は優しくていい人だったのに。彼は同じクラスの男子で、特に仲が良かったわけではないのだが、裕也とのことで悩んでいた私によく話しかけてくれて、相談に乗ってくれていた。彼の嫌なところを言うと
「それはなぁひどいよなぁ。俺だったら絶対そんなことしないけどな。」
いつも優しく同意して慰めてくれた。こんな人が彼氏だったらいいのに。そう思ってしまうことが何度もあった。そんなとき、美紀は喧嘩して裕也と別れた。高校に入ってからはあまりうまくいっていなかったけれど、1年近く付き合った裕也と別れるのはやはり辛かった。そのときも声をかけて励ましてくれたのは彼だった。傷心の乙女は優しくて甘い言葉に弱いものだ。優しい彼にだんだん惹かれていった。だが、付き合ってからは態度が一変した。廊下や教室でもすぐにベタベタ体を触ってしてくるし、親がいない日はとにかく家に誘ってくる。それでも、やめてと言えばやめてくれたし、「好きすぎて」と言われると強くは言えなかった。
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