2 / 2
出会い
2話
しおりを挟む
瑛太は意味が分からずドアを閉めた。一回落ち着こう。あのカモがインターホンを押したのだろうか。そんなことがあるのだろうか。いや、それはありえないだろう。一人の時間が長すぎて自分の頭がおかしくなったのかと思い、確認のためにもう一度ドアを開けてみる。すると、さっきまでそこに居たはずのカモはいなかった。やっぱり見間違いだった。安心なような逆に怖いような不思議な感覚に襲われた。きっと、気付かないういち疲れが溜まっていたのだ。今日は早く寝ようと思いながらリビングに戻る。すると、リビングの真ん中にさっきのカモがネギを背負ってちょこんと立っているではないか。瑛太は、目を擦ってもう一度よく見てみる。やっぱりいる。もう何が何だがわからなくなり、瑛太が不思議そうにカモを見つめているとカモが口を開く。
「じろじろ見よって失礼なやつじゃな」
今度は耳までおかしくなったのかと、両耳をかっぽじってみる。
「幻聴じゃなわい。ワシが喋っとるんじゃよ」
あーやばい。本格的に頭がおかしくなったようだ。熱があるのかもしれないと思い、体温計で熱を測ってみる。
「頭もおかしくなっておらんよ。どこまでも失礼なやつじゃな」
「ほんとに?」
目の前の喋るカモが、あまりにもリアルなので瑛太は恐る恐る質問してみる。
「いかにも。ワシはカモ爺。ワシに会えるとはお主は運がいいのぉ」
もうどこから突っ込んだらいいか分からないが、まずは見た目から聞いてみる。
「なんでネギを背負ってるんですか?」
「まず最初にそこかいな。まぁええけども。お主、鴨がネギを背負うってことわざ知らんのか?」
昨年、受験勉強をしたときに問題に出てきた気がする。なんという意味だったか。
「たしか、良いことが重なり好都合なこと、でしたっけ?」
「ちゃんと分かっとるじゃないか。えらいのぉ」
「で、それと何の関係があるんですか?」
ことわざの意味は分かったが、それと今の現状が繋がらない。カモには会ったが、特に良いことは何も起きていない。
「この姿見るといいことありそうじゃろ?」
「それだけ?」
「うむ。それだけじゃ」
はぁ。もはや呆れて何も言えない。不思議な喋るカモが現れて、良いことが起こることわざとか言い出したから、何かすごいことが起こるのかと思ってしまった。だが、現実はことわざに沿ってカッコつけただけの喋る年寄りカモが現れただけだ。
「あの、俺もう寝るんで帰ってもらってもいいですか?」
「?」
瑛太の帰って欲しいという言葉に、カモは首を傾げて何も言わない。
「え、あの、帰って下さい」
「ワシの家は今日からここじゃよ」
「は?」
こうして、一人ぼっちの大学生と、喋る年寄りカモの同居生活が始まった。
「じろじろ見よって失礼なやつじゃな」
今度は耳までおかしくなったのかと、両耳をかっぽじってみる。
「幻聴じゃなわい。ワシが喋っとるんじゃよ」
あーやばい。本格的に頭がおかしくなったようだ。熱があるのかもしれないと思い、体温計で熱を測ってみる。
「頭もおかしくなっておらんよ。どこまでも失礼なやつじゃな」
「ほんとに?」
目の前の喋るカモが、あまりにもリアルなので瑛太は恐る恐る質問してみる。
「いかにも。ワシはカモ爺。ワシに会えるとはお主は運がいいのぉ」
もうどこから突っ込んだらいいか分からないが、まずは見た目から聞いてみる。
「なんでネギを背負ってるんですか?」
「まず最初にそこかいな。まぁええけども。お主、鴨がネギを背負うってことわざ知らんのか?」
昨年、受験勉強をしたときに問題に出てきた気がする。なんという意味だったか。
「たしか、良いことが重なり好都合なこと、でしたっけ?」
「ちゃんと分かっとるじゃないか。えらいのぉ」
「で、それと何の関係があるんですか?」
ことわざの意味は分かったが、それと今の現状が繋がらない。カモには会ったが、特に良いことは何も起きていない。
「この姿見るといいことありそうじゃろ?」
「それだけ?」
「うむ。それだけじゃ」
はぁ。もはや呆れて何も言えない。不思議な喋るカモが現れて、良いことが起こることわざとか言い出したから、何かすごいことが起こるのかと思ってしまった。だが、現実はことわざに沿ってカッコつけただけの喋る年寄りカモが現れただけだ。
「あの、俺もう寝るんで帰ってもらってもいいですか?」
「?」
瑛太の帰って欲しいという言葉に、カモは首を傾げて何も言わない。
「え、あの、帰って下さい」
「ワシの家は今日からここじゃよ」
「は?」
こうして、一人ぼっちの大学生と、喋る年寄りカモの同居生活が始まった。
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
【完結】捨ててください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。
でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。
分かっている。
貴方は私の事を愛していない。
私は貴方の側にいるだけで良かったのに。
貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。
もういいの。
ありがとう貴方。
もう私の事は、、、
捨ててください。
続編投稿しました。
初回完結6月25日
第2回目完結7月18日
藤宮美樹最凶伝説
篠原 皐月
キャラ文芸
彼女の前に、道はない。彼女の後に、道ができる。
両親から様々な遺伝子と可能性を引き継いだ、最強を超える最凶な、とある女の子の「山椒は小粒でもピリリと辛い」を地でいく、(本人と一部の)笑いと(周囲の大多数の)涙溢れる、成長物語です。
【裏腹なリアリスト】の要所要所でいい味を出していた、美子・秀明夫婦の長女、美樹(よしき)が主人公の【裏腹~】スピンオフ作品。【半世紀の契約】後日談でもあります。
はっきり言ってコメディです。ちょっとシリアスだったり世知辛い話題が入っていたりしますが、コメディ以外の何物でもありませんので、そこの所をご了承の上、お読み下さい。カクヨム、小説家になろうからの転載作品です。
ルナール古書店の秘密
志波 連
キャラ文芸
両親を事故で亡くした松本聡志は、海のきれいな田舎町に住む祖母の家へとやってきた。
その事故によって顔に酷い傷痕が残ってしまった聡志に友人はいない。
それでもこの町にいるしかないと知っている聡志は、可愛がってくれる祖母を悲しませないために、毎日を懸命に生きていこうと努力していた。
そして、この町に来て五年目の夏、聡志は海の家で人生初のバイトに挑戦した。
先輩たちに無視されつつも、休むことなく頑張る聡志は、海岸への階段にある「ルナール古書店」の店主や、バイト先である「海の家」の店長らとかかわっていくうちに、自分が何ものだったのかを知ることになるのだった。
表紙は写真ACより引用しています
あやかし探偵倶楽部、始めました!
えっちゃん
キャラ文芸
文明開化が花開き、明治の年号となり早二十数年。
かつて妖と呼ばれ畏れられていた怪異達は、文明開化という時勢の中、人々の記憶から消えかけていた。
母親を流行り病で亡くした少女鈴(すず)は、母親の実家であり数百年続く名家、高梨家へ引き取られることになった。
高梨家では伯父夫婦から冷遇され従兄弟達から嫌がらせにあい、ある日、いわくつきの物が仕舞われている蔵へ閉じ込められてしまう。
そして偶然にも、隠し扉の奥に封印されていた妖刀の封印を解いてしまうのだった。
多くの人の血肉を啜った妖刀は長い年月を経て付喪神となり、封印を解いた鈴を贄と認識して襲いかかった。その結果、二人は隷属の契約を結ぶことになってしまう。
付喪神の力を借りて高梨家一員として認められて学園に入学した鈴は、学友の勧誘を受けて“あやかし探偵俱楽部”に入るのだが……
妖達の起こす事件に度々巻き込まれる鈴と、恐くて過保護な付喪神の話。
*素敵な表紙イラストは、奈嘉でぃ子様に依頼しました。
*以前、連載していた話に加筆手直しをしました。のんびり更新していきます。
路地裏猫カフェで人生相談猫キック!?
RINFAM
キャラ文芸
「な、なんだ…これ?」
闇夜で薄っすら光る真っ白な猫に誘われるようにして、高層ビルの隙間を縫いつつ歩いて行った先には、ビルとビルの隙間に出来たであろうだだっ広い空間があった。
そしてそこに建っていたのは──
「……妖怪屋敷????」
いかにも妖怪かお化けでも住んでいそうな、今にも崩れ落ちてしまいそうなボロ屋だった。
さすがに腰が引けて、逃げ腰になっていると、白い猫は一声鳴いて、そのボロ屋へ入っていってしまう。
「お…おい……待ってくれよ…ッ」
こんなおどろおどろしい場所で一人きりにされ、俺は、慌てて白い猫を追いかけた。
猫が入っていったボロ屋に近づいてよく見てみると、入口らしい場所には立て看板が立てられていて。
「は??……猫カフェ??」
この恐ろしい見た目で猫カフェって、いったいなんの冗談なんだ??絶対に若い女子は近付かんだろ??つーか、おっさんの俺だって出来ることなら近寄りたくないぞ??
心を病んだ人だけが訪れる、不思議な『猫カフェ』の話。
ガールズバンド“ミッチェリアル”
西野歌夏
キャラ文芸
ガールズバンド“ミッチェリアル”の初のワールドツアーがこれから始まろうとしている。このバンドには秘密があった。ワールドツアー準備合宿で、事件は始まった。アイドルが世界を救う戦いが始まったのだ。
バンドメンバーの16歳のミカナは、ロシア皇帝の隠し財産の相続人となったことから嫌がらせを受ける。ミカナの母国ドイツ本国から試客”くノ一”が送り込まれる。しかし、事態は思わぬ展開へ・・・・・・
「全世界の動物諸君に告ぐ。爆買いツアーの開催だ!」
武器商人、スパイ、オタクと動物たちが繰り広げるもう一つの戦線。
旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします
暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。
いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。
子を身ごもってからでは遅いのです。
あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」
伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。
女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。
妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。
だから恥じた。
「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。
本当に恥ずかしい…
私は潔く身を引くことにしますわ………」
そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。
「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。
私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。
手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。
そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」
こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる