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出会い

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 瑛太は意味が分からずドアを閉めた。一回落ち着こう。あのカモがインターホンを押したのだろうか。そんなことがあるのだろうか。いや、それはありえないだろう。一人の時間が長すぎて自分の頭がおかしくなったのかと思い、確認のためにもう一度ドアを開けてみる。すると、さっきまでそこに居たはずのカモはいなかった。やっぱり見間違いだった。安心なような逆に怖いような不思議な感覚に襲われた。きっと、気付かないういち疲れが溜まっていたのだ。今日は早く寝ようと思いながらリビングに戻る。すると、リビングの真ん中にさっきのカモがネギを背負ってちょこんと立っているではないか。瑛太は、目を擦ってもう一度よく見てみる。やっぱりいる。もう何が何だがわからなくなり、瑛太が不思議そうにカモを見つめているとカモが口を開く。
「じろじろ見よって失礼なやつじゃな」
今度は耳までおかしくなったのかと、両耳をかっぽじってみる。
「幻聴じゃなわい。ワシが喋っとるんじゃよ」
あーやばい。本格的に頭がおかしくなったようだ。熱があるのかもしれないと思い、体温計で熱を測ってみる。
「頭もおかしくなっておらんよ。どこまでも失礼なやつじゃな」
「ほんとに?」
目の前の喋るカモが、あまりにもリアルなので瑛太は恐る恐る質問してみる。
「いかにも。ワシはカモ爺。ワシに会えるとはお主は運がいいのぉ」
もうどこから突っ込んだらいいか分からないが、まずは見た目から聞いてみる。
「なんでネギを背負ってるんですか?」
「まず最初にそこかいな。まぁええけども。お主、鴨がネギを背負うってことわざ知らんのか?」
昨年、受験勉強をしたときに問題に出てきた気がする。なんという意味だったか。
「たしか、良いことが重なり好都合なこと、でしたっけ?」
「ちゃんと分かっとるじゃないか。えらいのぉ」
「で、それと何の関係があるんですか?」
ことわざの意味は分かったが、それと今の現状が繋がらない。カモには会ったが、特に良いことは何も起きていない。
「この姿見るといいことありそうじゃろ?」
「それだけ?」
「うむ。それだけじゃ」
はぁ。もはや呆れて何も言えない。不思議な喋るカモが現れて、良いことが起こることわざとか言い出したから、何かすごいことが起こるのかと思ってしまった。だが、現実はことわざに沿ってカッコつけただけの喋る年寄りカモが現れただけだ。
「あの、俺もう寝るんで帰ってもらってもいいですか?」
「?」
瑛太の帰って欲しいという言葉に、カモは首を傾げて何も言わない。
「え、あの、帰って下さい」
「ワシの家は今日からここじゃよ」
「は?」

こうして、一人ぼっちの大学生と、喋る年寄りカモの同居生活が始まった。
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