幸せのDOLCINI

紗衣羅

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DICIASSETTE

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あの怒涛のお茶会からの数ヶ月間も、些細な事だけど色々あったわ。 ヒロインちゃんが令嬢方に嫌味を言われると泣きついたり、庭園を歩いていたら転ばされてドレスを泥だらけにされたと言ったり、文具類を紛失したのを盗まれたと騒いだり‥‥… 全部ね、リズのせいなんですって。 その度に血相変えてジェラルドがやってくるのよ。 もうね、ホントいい加減にしてほしいわよね。

そんなイライラが続く中、中間考査も終わり、ワタシ達は初めての長期休暇に入ったわ。 ワタシは王都にあるタウンハウスに帰宅した。

「おかえりなさいませ、坊っちゃま。 旦那様と奥様がサロンでお待ちです」

「ただいまぁウイリアム。 分かったわ、サロンね」


持ってきた荷物をジョージに任せ、玄関で出迎えてくれたウイリアムに言われてサロンに向かうと、お父様とお母様が仲睦まじくお菓子の食べさせあいをしてたわ… いやさぁ、いいんだけど、いいんだけどさぁ、息子が帰ってきたの分かってるんだから自重してほしいわよねぇ。 わざとらしく「ハァ~~....」と大きな溜息を吐くと、今気が付いたとばかりに驚いてみせたわ、まったく。


「おや、エドおかえり~。 学園はどうだったんだい~? 何か面白い事でもあったかい~?」

「‥‥…ただいま帰りました、お父様お母様。 面白いことはありましたよ、色々と。」


ふふふ。とお父様が意味ありげに笑い、お母様を優しく隣に座らせるとスッと書類の束を私に差し出してきた。

「‥‥… エドから貰った手紙の件については承認しよう。 すでに準備は整えさせてるよ。 それからコレはお父様からのプレゼントだ。 」

お母様に向けるあまぁ~~い顔から一転、悪い顔になって「身の程を弁えないお猿さん達は、ちゃんと躾しないと木に登っちゃうからね。」って‥‥…。 お父様ったら黒いわ....。 そんなお父様とニコニコと笑顔を崩さないお母様を見ながら、お父様から受け取った書類に目を通してみる。


「‥‥なるほど、さすがはお父様ね。 これは後々の切り札に使わせていただきますわ。」

「ああ、きっとエドならうまく使えると思うよ。 ふふっ、楽しみだねぇ~」


さてっと、お父様に思いがけないご褒美をもらったし、おふたりのお邪魔しちゃまずいし(って言うかもういたたまれないのよっ) お暇しようかしらね。 ワタシは二人に向かってウインクしつつ、手をヒラヒラさせて席を立つ。


「それじゃワタシはこれで失礼しますわ。 お父様お母様お邪魔いたしました。 どうぞごゆっくり~」

「あらエド、もう行っちゃうの? 」

「ええ、3日後にアイオスやリズを呼んでお茶会するので、その準備始めようかと」

「あら、うふふっ。 本当に貴方達仲がいいわねぇ。 それじゃ新作のお菓子、期待してるわぁ。」


新作‥‥新作ねぇ‥… 何がいいかしら。 夏っぽいのを考えてみようかしらね。





*********************




お茶会当日、エリザベスが専属侍女のテレサとマギーに身支度をしてもらって、出かける準備をしていると、ノックもなしに「お姉様~」と言う甘ったるい声とともに異母妹のアリサが入ってきた。

「お姉様、せっかくのお休み… あら? 何処かに行くのですかー?」

「アリサ… え、ええ。 今日はエドナーシュ様のお茶会にご招待していただいているの」


あまり時間も無いので、振り返らずにそのまま髪を整えられていると、不意に鏡の中のアリサが俯いているのが見えた。 アリサは顔を俯かせて両手をぎゅっと握り込み、ふるふると体を震わせてぽつりと呟いた。


「‥‥るい…」

エリザベスがよく聞き取れず「え?」と聞き返すと、鏡の中のアリサにキッと睨まれた。


「ずるいずるい!お姉様は何でも持っているじゃない! ジェラルド王子様って言う婚約者もいるし、頭も顔もいいし! 私がエドナーシュ様が好きなの知ってるくせに! お姉様ばっかり! もうやだ!!」


アリサはそう言い捨てて、ドアを荒々しくバタン!と閉めて走っていってしまった。


(アリサは何を‥‥ わたくしがずるい‥‥?)


「‥‥あまり、気にされない方がよろしいですよ、エリザベス様。」

「そうそう、エリザベス様がどれほど努力され、ご苦労されているかはわたくしとマギーがよく存じております。」


侍女二人はエリザベスを気遣うように微笑んでみせた。 それでもやっぱり妹にあんな風に責められエリザベスは気持ちが沈むのだ。

俯いてしまった美しい自分達の主に、マギーは殊更明るい笑顔で声をかけた。


「さあさあ! エドナーシュ様が美味しいお菓子を作ってまっててくださいますよ。 急がないと時間がなくなってしまいます。 後のことは気になさらず、楽しいことを考えましょう、ね?」

「そうね‥‥ エドをお待たせしたらいけないものね‥‥」


そう言って弱々しく微笑んだ。


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