16 / 26
QUATTORDICI *エリザベス視点*
しおりを挟む
お茶会の当日、詳しい事は教えていただけなかったけど、エドがわたくしの部屋に来たいという。 よほどの事がない限り女子寮に殿方が入るのは難しいけれど‥‥ わたくしはしばらく思索し、ついには了承したのですが‥‥ どうするつもりなのかしら? いつも思慮深いエドが何もなくそんな事を言い出すはずもないですし、お任せしても大丈夫ですわよね。
「リズ、ワタシよ、ワタシ! 中に入れて頂戴!」
部屋の前で声を潜めてわたくしを呼ぶエドを迎え入れようとしてドアを開けると、髪で顔を隠し、侍女服に身を包んだエドが立っていました。 一体何処で調達したのかしら? そう考えている間にエドは素早く部屋に入り「ちょっと書斎借りるわね。」と言って書斎に暫く篭ってしまったわ。 30分くらい開かなかった書斎のドアが開くと、見た事もない女性が立っていたのです。
ゆるく結い上げた銀糸の髪、背が高くメリハリの効いた肢体、それを生かして美しく見せる為の薄いグリーンの柔らかな生地で出来たマーメイドラインのドレス、長い睫毛に彩られたグリーントパーズの瞳、ぷっくりと艶々な唇、恐ろしい程美しく、完璧な貴婦人がそこに居たわ‥‥。 もしかしなくてもこの方は‥‥。
「え、エド‥‥? 本当にエドなんですの‥‥?」
「そうよ。 ふふ‥‥ すごいでしょ?」
「信じられない‥‥ どこから見ても完璧な淑女ですわ‥‥。」
わたくしそれに‥‥ とっても気になる事がありますの‥‥。
「あの、エド? ちょっと伺ってもいいかしら?」
「ん? いいわよ、なぁに?」
「その‥‥ どこから見ても女性に見えますが‥‥ えっと、その‥‥ む‥‥胸と‥‥」
わたくしが言いよどんでいるのを見て、察してくださったエドがそれはいい笑顔で答えてくれたんですが。
「あ、この胸とお尻が気になるのね? ふふ、これはね‥‥ 愛と夢が詰まってるのよっ。」
「あ‥‥ 愛と夢‥‥?」
「それ以上は教えられないわねぇ~ 企業秘密よっ」と言ってごまかされてしまいました‥‥。 愛と夢が詰まれば大きくなるのでしょうか? ‥‥今度詳しくエドに教えていただきましょう。
美しく着飾ったエドをぽ~っとした目で見ているわたくしと、いつにもまして機嫌よくニコニコしているエドの2人で連れ立ってお茶会の会場に移動している最中、エントランスに差し掛かった所にアイオス様がいらっしゃいました。
「ごきげんよう、アイオス様」
「やあ、エリザベス嬢。 何処か....」
あら、どうされたのかしら。 急に目を見開いたまま黙ってしまわれたわ。
「あ、あの.... エリザベス嬢.... この方は....?」
アイオス様の視線の先を見ると、エドが微笑んでました。 説明しようとしたところエドが手で遮り、わたくしの目の前に進み出て見事なカーテシーをしています。 ‥‥カーテシーなどする機会はほとんどないはずなのですが‥‥ エドはいつの間にマスターしたのでしょうか‥‥。
「お初におめもじ致します。 アイオス・フォン・ローズブレイド様。 わたくしはガーベラと申します。」
「レディ・ガーベラ‥‥」
エドがガーベラと偽りの名前を告げ、珍しくお顔を赤くされたアイオス様にくすりと笑って近づくと、耳元で(あら、分からないの? ワタシよ、ワ・タ・シ。 エドナーシュよ。 どお? どこから見ても貴族令嬢に見えるでしょ?)と自分の正体を明かすと、アイオス様のお顔が赤から青に、そしてまた赤にと忙しく変わり、(な、何がガーベラだよ! ちょっとでも見惚れた俺の純情を返せ!)と小声ですが言い合っているようです。 本当にこのお二人は仲がいいのですね。 わたくしが微笑みながらそう言うと「「違う、そうじゃない。」」とお二人が声をそろえて言うのです。 そんなところも仲がいいですわよね?
気が付けば周りにいる皆さまもこちらを注目しているようで、殿方が何人か話しかけたそうにこちらをちらちらとみているようですが、そろそろお茶会の会場に行かないと間に合わなくなってしまいます。
「エド、そろそろ行かないと時間がありませんわ。」
「そうね、それじゃアイオスまたね。」
アンジェリカ様の選んだ会場は学園内のカフェテリアの個室でした。 中に入ると早速アンジェリカ様が迎えに来られました。
「わぁ! エリザベス様本当に来てくださったんですね! どうぞこっちに来てくださいね! ‥‥あら? そちらはエリザベス様のお友達ですかー?」
「お初におめもじいたしますわ。 わたくしエリザベス様のまた従妹でガーベラと申します。」
「ガーベラ様ですね! 来てくれて嬉しいです! アンジェリカです。 アンジェって呼んでくださいね! ガーベラ様本当にスタイルが良くてまるでモデルさんみたいですねぇ~。」
ニコニコしながら歓迎してくれるアンジェリカ様が席に案内してくださいました。 エドは一瞬目つきが変わった気がしますが‥‥ 気のせいですね、きっと。 でもアンジェリカ様の仰ってた『もでる』とはなんでしょう?
テーブルにはすでに他の方もそろっているようで、わたくしたちの他に2人いらっしゃいました。 あまりお話したことはないですが、記憶にある貴族年鑑の絵姿を思い浮かべ、恐らく男爵家と子爵家のご令嬢だと思われます。
「それじゃみなさん揃ったので、始めましょうか!」
=============================
次回お茶会編です。
「リズ、ワタシよ、ワタシ! 中に入れて頂戴!」
部屋の前で声を潜めてわたくしを呼ぶエドを迎え入れようとしてドアを開けると、髪で顔を隠し、侍女服に身を包んだエドが立っていました。 一体何処で調達したのかしら? そう考えている間にエドは素早く部屋に入り「ちょっと書斎借りるわね。」と言って書斎に暫く篭ってしまったわ。 30分くらい開かなかった書斎のドアが開くと、見た事もない女性が立っていたのです。
ゆるく結い上げた銀糸の髪、背が高くメリハリの効いた肢体、それを生かして美しく見せる為の薄いグリーンの柔らかな生地で出来たマーメイドラインのドレス、長い睫毛に彩られたグリーントパーズの瞳、ぷっくりと艶々な唇、恐ろしい程美しく、完璧な貴婦人がそこに居たわ‥‥。 もしかしなくてもこの方は‥‥。
「え、エド‥‥? 本当にエドなんですの‥‥?」
「そうよ。 ふふ‥‥ すごいでしょ?」
「信じられない‥‥ どこから見ても完璧な淑女ですわ‥‥。」
わたくしそれに‥‥ とっても気になる事がありますの‥‥。
「あの、エド? ちょっと伺ってもいいかしら?」
「ん? いいわよ、なぁに?」
「その‥‥ どこから見ても女性に見えますが‥‥ えっと、その‥‥ む‥‥胸と‥‥」
わたくしが言いよどんでいるのを見て、察してくださったエドがそれはいい笑顔で答えてくれたんですが。
「あ、この胸とお尻が気になるのね? ふふ、これはね‥‥ 愛と夢が詰まってるのよっ。」
「あ‥‥ 愛と夢‥‥?」
「それ以上は教えられないわねぇ~ 企業秘密よっ」と言ってごまかされてしまいました‥‥。 愛と夢が詰まれば大きくなるのでしょうか? ‥‥今度詳しくエドに教えていただきましょう。
美しく着飾ったエドをぽ~っとした目で見ているわたくしと、いつにもまして機嫌よくニコニコしているエドの2人で連れ立ってお茶会の会場に移動している最中、エントランスに差し掛かった所にアイオス様がいらっしゃいました。
「ごきげんよう、アイオス様」
「やあ、エリザベス嬢。 何処か....」
あら、どうされたのかしら。 急に目を見開いたまま黙ってしまわれたわ。
「あ、あの.... エリザベス嬢.... この方は....?」
アイオス様の視線の先を見ると、エドが微笑んでました。 説明しようとしたところエドが手で遮り、わたくしの目の前に進み出て見事なカーテシーをしています。 ‥‥カーテシーなどする機会はほとんどないはずなのですが‥‥ エドはいつの間にマスターしたのでしょうか‥‥。
「お初におめもじ致します。 アイオス・フォン・ローズブレイド様。 わたくしはガーベラと申します。」
「レディ・ガーベラ‥‥」
エドがガーベラと偽りの名前を告げ、珍しくお顔を赤くされたアイオス様にくすりと笑って近づくと、耳元で(あら、分からないの? ワタシよ、ワ・タ・シ。 エドナーシュよ。 どお? どこから見ても貴族令嬢に見えるでしょ?)と自分の正体を明かすと、アイオス様のお顔が赤から青に、そしてまた赤にと忙しく変わり、(な、何がガーベラだよ! ちょっとでも見惚れた俺の純情を返せ!)と小声ですが言い合っているようです。 本当にこのお二人は仲がいいのですね。 わたくしが微笑みながらそう言うと「「違う、そうじゃない。」」とお二人が声をそろえて言うのです。 そんなところも仲がいいですわよね?
気が付けば周りにいる皆さまもこちらを注目しているようで、殿方が何人か話しかけたそうにこちらをちらちらとみているようですが、そろそろお茶会の会場に行かないと間に合わなくなってしまいます。
「エド、そろそろ行かないと時間がありませんわ。」
「そうね、それじゃアイオスまたね。」
アンジェリカ様の選んだ会場は学園内のカフェテリアの個室でした。 中に入ると早速アンジェリカ様が迎えに来られました。
「わぁ! エリザベス様本当に来てくださったんですね! どうぞこっちに来てくださいね! ‥‥あら? そちらはエリザベス様のお友達ですかー?」
「お初におめもじいたしますわ。 わたくしエリザベス様のまた従妹でガーベラと申します。」
「ガーベラ様ですね! 来てくれて嬉しいです! アンジェリカです。 アンジェって呼んでくださいね! ガーベラ様本当にスタイルが良くてまるでモデルさんみたいですねぇ~。」
ニコニコしながら歓迎してくれるアンジェリカ様が席に案内してくださいました。 エドは一瞬目つきが変わった気がしますが‥‥ 気のせいですね、きっと。 でもアンジェリカ様の仰ってた『もでる』とはなんでしょう?
テーブルにはすでに他の方もそろっているようで、わたくしたちの他に2人いらっしゃいました。 あまりお話したことはないですが、記憶にある貴族年鑑の絵姿を思い浮かべ、恐らく男爵家と子爵家のご令嬢だと思われます。
「それじゃみなさん揃ったので、始めましょうか!」
=============================
次回お茶会編です。
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです


邪魔しないので、ほっておいてください。
りまり
恋愛
お父さまが再婚しました。
お母さまが亡くなり早5年です。そろそろかと思っておりましたがとうとう良い人をゲットしてきました。
義母となられる方はそれはそれは美しい人で、その方にもお子様がいるのですがとても愛らしい方で、お父様がメロメロなんです。
実の娘よりもかわいがっているぐらいです。
幾分寂しさを感じましたが、お父様の幸せをと思いがまんしていました。
でも私は義妹に階段から落とされてしまったのです。
階段から落ちたことで私は前世の記憶を取り戻し、この世界がゲームの世界で私が悪役令嬢として義妹をいじめる役なのだと知りました。
悪役令嬢なんて勘弁です。そんなにやりたいなら勝手にやってください。
それなのに私を巻き込まないで~~!!!!!!
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか〜
ひろのひまり
恋愛
生まれ変わったらそこは異世界だった。
沢山の魔力に助けられ生まれてこれた主人公リリィ。彼女がこれから生きる世界は所謂乙女ゲームと呼ばれるファンタジーな世界である。
だが、彼女はそんな情報を知るよしもなく、ただ普通に過ごしているだけだった。が、何故か無関係なはずなのに乙女ゲーム関係者達、攻略対象者、悪役令嬢等を無自覚に誑かせて関わってしまうというお話です。
モブなのに魔法チート。
転生者なのにモブのド素人。
ゲームの始まりまでに時間がかかると思います。
異世界転生書いてみたくて書いてみました。
投稿はゆっくりになると思います。
本当のタイトルは
乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙女ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか?〜
文字数オーバーで少しだけ変えています。
なろう様、ツギクル様にも掲載しています。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
廃妃の再婚
束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの
父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。
ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。
それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。
身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。
あの時助けた青年は、国王になっていたのである。
「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは
結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。
帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。
カトルはイルサナを寵愛しはじめる。
王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。
ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。
引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。
ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。
だがユリシアスは何かを隠しているようだ。
それはカトルの抱える、真実だった──。

義弟の為に悪役令嬢になったけど何故か義弟がヒロインに会う前にヤンデレ化している件。
あの
恋愛
交通事故で死んだら、大好きな乙女ゲームの世界に転生してしまった。けど、、ヒロインじゃなくて攻略対象の義姉の悪役令嬢!?
ゲームで推しキャラだったヤンデレ義弟に嫌われるのは胸が痛いけど幸せになってもらうために悪役になろう!と思ったのだけれど
ヒロインに会う前にヤンデレ化してしまったのです。
※初めて書くので設定などごちゃごちゃかもしれませんが暖かく見守ってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる