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150話.大商い!!

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 午後からの仕事は、最初に[サドタの街]へ移動して4号店の様子を見てきた。

 まだオープンして二日目だし、備品や食品在庫の準備は多めに行なっているので在庫切れを起こす事はない。
 相変わらずお客さんが多いのが売り場に立つだけで解る。
 そんな中レクターがソワソワしながらお店の様子を見ていた。

「こんにちは、レクターさん。
 今日はギルドの仕事しなくていいんですか?」

「おぉ、聞いてくれ!! にーちゃん。
 昨日のこの店の売り上げがな、ギルド施設の売り上げより上だったぞ!!」

「初日でソレですか……。
 この調子で頑張っていただいて商品を一杯仕入れて貰わないとですね。
 ただ……ギルド長が4号店の事を毎回心配してると問題なので、このお店の店長を決めてから店の運営させないとダメですよ!!」

「二号店の人間をこの店の店長に回してもらえないだろうか?」

「引き抜きですか?  それは困りますねぇー!!」

「そこをなんとか?」

「それじゃ、私から条件があります。
 引き抜きなんです、ウチより給料を多く支払う事。
 次に、住む所に関してはギルドが用意をしてください。
 条件が悪かったとか言われるような事があれば貴重なウチの人材ですし、すぐに2号店へ引き返させますよ」

「それを飲めば……
 引き抜きしても構わないのだな?」

「店長候補だけですよ。
 店長になりたい野心家は今ヘルプ出来ている連中の中にいると思いますからね」

「1ヶ月かけて店長候補を引き抜いてみせるよ」

「それなら、こう言えばいいですよ。
 このお店もだから安心して店長業務についてくれってね」

「4号店だものな……」

「それじゃ、これから大商いがあるんで……
 この辺で失礼します」

「また何かやらかしたのか!!」

「それは秘密です……」と言って、私はこの場を離れた。

 次は貴族様の所に行かなきゃな。
 二階堂殿……の理由が良く解ったよ。
 良くも私を嵌めてくれたなと思いつつも貴族のボルグ評価されていた事に驚いた。

 いつも通りに貴族の城の前に到着した。
 門兵に話しかけて案内を受けて、ボルグ様のいる大広間まで移動した。

「良く来たな二階堂殿!! 
 伯爵位の件と、マーガレット様との結婚の件おめでとう!!」

「えっ? なんでそこまで知ってるの?」

「貴公なら喜んで受けるだろう?
 マーガレット様は、あれだけの器量良しで好意を全力でぶつけてくる相手だ。
 貴公に断れる訳がない」

「となると、男爵位は単なる呼び水だったということかな?
 伯爵位を断れなくする為の……」

「まぁ、そうなるな……」

「通りで、二階堂殿な訳だよ。
 まぁ、それでも貴方に認められていた事は嬉しく思います」

「そうか、それなら良かった」

「けど、領地が減るので[セカンタの街]の領主のボルグ様としては辛くないですか?」

「元々から、南の森を抜けねば行けぬ。
[セカンタの町]だ、父はあんな稼ぎにならない領地いらぬといつもボヤいていたよ。
 今は全くの別物になってるがな」

「そうですか……
 それならいいんですけど」

「今日は何の用でココに?」

「二つほど要件があって来ました。
 一つは、この街にギルドと協力して4号店を出店しました」

「ホウ!! 私が知らぬ間にそんな事をしていたのか」

「それこそ、貴方のお父上が悪さをしに来る前から出店の準備をしてましたよ。
 次に、ご注文の品が全て出来上がりましたので納品させて頂きます」

「あの鏡の魔道具か?」

「ハイ。そうです」

「一枚5万ゴールドはするんだったよな?
 20枚で100万ゴールドか……。直ぐに代金を用意出来ぬがそれでも良いか?」

「代金の一割の10万を頭金として頂ければ、代金の支払いは後ほどでいいですよ」

「そうか、それは助かる。
 セバス!! 10万ゴールドを用意してくれ」

「直ちに用意致します」

 ‥…って、セバスさんこの部屋の入口付近に居たんだね。
 彼は黒子に徹してるから居る事に気づけないなぁ。

「それで、どこに鏡を置きましょうか?
 商品は梱包済みなのでココにおいても大丈夫ですよ」

「それでは、私の目の前に置いておいてくれ。
 私も検品に立ち会うのでな……」

 マジックバック(仮)から鏡を1枚ずつ取り出して、20枚の鏡をゆっくりと地面に降ろしていった。
 ボルグの指示により兵士達が鏡の検品を始めた。

「全品問題ありません!!」と、兵士が言った。

「セバス!!  10万ゴールドを……」とボルグが言い、執事のセバスは主のボルグにお金の入った袋を手渡した。

「これが、商品の前金だ。
 受け取ってくれ」とボルグ言われて、私は代金を受け取った。

「どうも!! 残りの代金の支払いはいつでもいいんで……
 アレだったら4号店に支払ってくれてもいいですよ。
 4号店には毎日様子は見に行くので、その時に取りに伺いますから」

「そうか……貴公が来るのを待つより、ソチラの方が簡単そうだな」

「ハイ。首をながーくして代金の入金をお待ちしてますね。
 それでは失礼します……」と言って、この場を離れてから【転送魔法】を使い教皇のいる城下街の協会へと移動した。

 いつも通りに教皇の部屋へ行き鏡を納品した。
 教皇に対して代金の支払いは直接お屋敷に持って来てくださいとお願いした。
 次に、国王陛下への納品があるので教皇に付き合ってもらい国王陛下にあった。

「良く来てくれたな。
 二階堂君。今日は娘に会いに来てくれたのかね?」

「あははは、そうですね。
 それもありますけど……今日は、ご注文の品を届けに参りました」

「商談してから時間は経っておらぬのに納品可能な迄に商品を作ったのか?」

「あぁー。
 商談をさせていただいていた最中も商品を作ってましたので……
 既に梱包をしておりますので、こちらで商品の確認をお願いします」

「解った。
 兵よ!! 商品の確認を行え」

 注文された30枚の鏡をゆっくりと地面に降ろした。
 地面に降ろされた鏡を兵士達が確認作業を行う、特に問題もなく確認作業は終了した。

「30枚で150万じゃな……
 ところでこの鏡は量産可能なのか?」

「出来なくはないですけど、する気がないですね。
 こんなモノが増えれば緊張する機会が増えるだけですから。
 製法も方法も伝え聞いただけなので、再び作る予定はありません」

「なるほど!! それならば鏡の価値が上がる事はあっても下がる事は無いな。
 解った。即金で全額支払おう」

「一部だけでも大丈夫ですけど?」

「国王たる私が娘の婿殿に、そんな恥ずかしい真似は出来ぬだろう?」

 まさかの一括入金に驚いたが、手渡された鏡の代金をマジックバッグ(仮)に入れた。

「それにしても……
 貴公のマジッグバッグには上限が見当たらないな」

「私が商人でいられるのも、このアイテムのおかげですよ」

「そうか、そうか……。
 それなら私が欲しがる訳にはいけないな、娘の婿が苦しくなるだけだしな」

 陛下の言葉に照れを感じたので軽く頭を掻くような仕草した。

「話は変わりますが……
 頂いたお屋敷なんですけど、空いている土地に建物を建築してよろしいでしょうか?」

「構わない好きにやってくれ」

「本当は、半年後挙式の後に建築開始の予定だったんですけど。
 ウチのスタッフが優秀すぎて……
 先日[サドタの街]に飲食店を完成させたんですよ。
 それで手持ち無沙汰なので仕事をくれと従業員から直談判が今朝方きてですね」

「なるほど、それでこの街でも店を作る事になったと……
 それはそうと、貴公は今いくつの建築を掛け持ちしているのだ?」

「今は[セカンタの町]の川の治水工事をかなり前から始めていますね。
 今日から始めた作業は二つで、一つは[セカンタの町]の歓楽街に大きめの施設を一つと、この街に5号店の建設予定です」

「なるほど……
 縦横無尽に色んな町の発展に尽くしているのだな」

「建設で思い出しました。
 一つ私が貴族になったからこそ、やりたい事があります!!」

「なんだ?  言ってみよ!!」

 先日、[サドタの街]のギルド長と話した内容と同様の冒険者の終活を危惧しているという旨を伝えた。
[死の森]での自殺をなくす為の活動として大規模な農園と、警備業、学校の建設等を考えている旨を国王陛下に伝えた。

「その件、しかと聞き届けた。
 貴公がその件に着手した際は私からも支援を出そう」

「ありがとうございます!!」

 アッサリと決まってホッとしたような……

「あっ、すいません。
 マーガレットさんとお話してきてよろしいでしょうか?」

「あははは……かまわない行って来るがいい。
 私は教皇と話をしているのでな」

 その後、マーガレットと話をして挙式の内容や屋敷の敷地にお店を建てる件などの話をして過ごした。
 そして、お屋敷に帰るとお昼ご飯を貰えなかったリリスが拗ねていたので、いっぱい甘えさせた。
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