上 下
112 / 198

100話.エクスプロージョン!!

しおりを挟む
 その日、沢山の人が亡くなった――そして、沢山の人が蘇った。

 私は、[エクスプロージョン]の魔法を放つ覚悟を決めた。
 そして、貴族達に最後の通告を行なった。

「今から、アナタ達へ攻撃を行います。
 死にたくなければ、今の位置から進まないように」

 ……と、[スピーカー]を使い敵軍へ通告を行なった。

 貴族のリストアが手勢以外の3000名を命令をするが動く気配がない。
 リストアは手勢以外を動かす事を諦め――手勢の2000名の兵士を前進させ始めた。

 肝心のリストアは最後方から指揮をしていた。
 貴族の手勢の兵は前進を続け、2000人が[エクスプロージョン]の射程距離に入った。

 私が、ココで魔法を撃たなければ町の人間全て死ぬ。
 やるしかない……

 [エクスプロージョン]の魔法を二発ほど撃てば、兵士達は壊滅するだろう。
 
 兵士達を排除する為に私は魔法の詠唱を始めた。
 魔法の詠唱を始めた以上、魔法の発動をキャンセルするつもりはない。

 ……
 …………

 覚悟しろ!! 腐れ貴族ども……

 ミスリルの剣を構え、貴族の手勢の前線の兵を狙い[エクスプロージョン]の魔法を放った。
 魔法が発動し、大きな爆風が巻き起こる。

 爆風に巻き込まれ兵士達が吹き飛んでいた。
 中には爆風で爆散しているモノもいた。
 聞こえないはずのない、死にゆく兵士達の声が私の元に届いた。

 死にたくない……熱い……助けてくれ……
 ……と、聞こえるはずのない様々な声が聞こえたが無視した。

 続けて、二発目の[エクスプロージョン]の魔法を放った時……

【善行値と悪行値の相殺を開始します】
 ……と、何度か見た事のある注意書きみたいなモノが視界に表示された。
(例:インターネットや盗難の時の注意書き)

 私の中で、兵士達の恨み事や私に対する恨みの声が聞こえてきた。

 酷い……悪魔なのか……死にたくないよ……
 ……と、聞こえるはずのない声なき声を聴いた。

「ふざけるな!!
 お前らは人を殺しに来たんだろう!! 自分の都合のいいことばかり喋るな!!」

 私は急に叫んだ後に頭を抱えるようにして屈み込んだ。

 気分が悪い……
 気分が悪くなりすぎた為、胃液が逆流してきたので手で口を抑えた。
 リストアの軍はほぼ壊滅しており――既に、貴族は自軍を放り出し北の森へと逃げ出していた。

 死にたくない……人殺し……ひとでなし……
 助けて……たすけて……たすけて……タスケテ……

 私が殺した人々の悪感情が流れ込んでくるのを理解した。
 悪感情に私の心が折れそうになった時、レベルが40になった。
 人殺しによる経験値が加算されレベルが上がった。

 【レベル40になりました善行値と悪行値の計算を停止します】
 ……と、私の視界に表示された。

 軽く壊れかけた私は、そのまま屈み込んだままだった……

「大丈夫か?  町長」と、副町長のミルコが心配してくれた。
 ボルグは何が起きたのか理解できていないようだった。

 私は立ち上がり、「大丈夫、状況を教えて」と言った。


「当家の手勢は、ほぼ全壊で死者多数。
 後方にいた父は、その惨状を見て護衛も付けずに一目散に逃げ出したよ。
 すでに戦況は決まった。皆を降伏させてやってくれ」

 ……と、ボルグが状況を教えてくれた。

「あぁ、わかった」

 私は、[スピーカー]を使い勝利の宣言を敵軍に伝えた。

「サドタの街の諸君!! 君達の敗北だ。
 悪いようにはしないから――敗北を認め武器を外し両手を挙げて降伏してくれ」

 私の宣言を聞き、外部の兵3000人と生き残りの貴族の手勢は降伏した。

「マルコさん、ギルドで敵兵士達の捕縛をお願いします。
 決して暴力は振るわないようにして下さい」

「あぁ、任せてくれ。
 行くぞ私達の勝利だ!!」

「おーー!!」と、冒険者達を連れて兵士達を捕縛しに行った。

「スミス神父。教会の人間で怪我人の治療の手伝いをお願いします」

「ああ、任せてくれ」
 ……と言って、内側の城壁を降りてスミス神父は治療班を集めてくれていた。

 最後に、
「ミルコさんは、町からMP回復剤をあるだけ集めてください。
 ボルグさんは、あの敵兵士達をまとめてもらっていいですか?
 兵士の二人は、ケガ人を一箇所に集めてもらえるかな?」

「「「わかった」」」

「私は、生き残りの治療を行います」

 今の私は、[魔力視]のスキルを切っている。
 今、[魔力視]をつけると、悲惨な結果になるのが目に見えている。

 高台にいた人間を全て地面に降ろし各自作業にあたってもらった。 
 私が、ケガ人を治療していると……

「悪魔だ、魔王だ……」と、いう声が兵士達から聞こえた。

 生き残った兵士達は、私の姿を見て怯えている。
 圧倒的な勝利は人を恐怖させる事を理解することができた。

 兵士達の協力もあり、一通り怪我人の治療が済んだので、次は死人の対応だ。
 自己防衛の為に、切っていた[魔力視]のスキルを使った。
 悲惨な惨状を理解できた。人がいたであろう場所に魔力の残滓が残っている。

 残滓がある場所に向けて、[レイズ]の魔法をかけていく。
 魔力の残滓だったモノに肉体が形成され兵士が生き返った。

「アレ?  俺は爆風に飲まれて……お前は!!」

「あぁ、アンタか!!
 アンタには、施設を壊した恨みがあるから、アンタにはもう一度死んでもらった方がいいかな?」

「あの件はすまなかった。
 反省している、許してもらえないだろうか?」

「反撃しようとか、無駄なんで余計な気は起こすなよ!!
 すでに、アンタの大将は一目散で森の中に逃げて行ったよ」

「あぁ、わかった」

「武器を捨てて両手を挙げて、ここで待機しろ!! 俺は他の人間全て生き返らせる。
 もし、邪魔をするなら――もう一度、魔法を食らわすぞ」

「……」と無言になり、兵士は俯いてしまった。

 1/2ほどの兵士を生き返らせた所で、私の魔力が尽きてしまった。
 自然回復でMPを回復させていたら、下手すると[レイズ]の魔法のタイムリミットが来てしまうかもしれない。
 そうすると、死者が蘇生ができなくなる――それは回避したいのだ。
 それと、レベルが40から39へと下がっていた……

 兵士の命を奪って経験値に変換したのだ。
 [レイズ]の魔法によって、俺の経験値が兵士達に奪われているのか?
 そんな事を考えていた最中に、ミルコと神父が話しかけてきた。

「町長。町にあるMP回復剤を集めてきたぞ!!」

「ハジメ君。
 蘇生した直後の人間は体力が少ないみたいなので、私達がその後の対応は受け持つよ」
 ……と、副町長の二人が言ってくれた。

「助かります、二人とも」

 MP回復剤をミルコから受け取り、[栄養ドリンク]とMP回復剤を飲んで蘇生作業を再開した。
 強引にMP回復を繰り返し辺りは暗くなってきたが、[魔力視]で確認できる分の死者の蘇生は全て完了した。
 私のMPは完全に尽き、経験値がごっそりと奪われたのを実感したが――なんとか、レベル39は維持できていた。
 
 私は全ての人間を救えた事に安堵して、その場に倒れた。
「ハジメ君!!」「町長!!」と、ギルド長と副町長の二人が私の元に駆けつけてきた。

 私を心配する声が聞こえたが、今はもう眠りたい。
 そのまま、私は気を失ってしまった……
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。

みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました

ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが…… なろう、カクヨムでも投稿しています。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜

平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。 『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。 この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。 その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。 一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

処理中です...