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85話.選挙……そして、町長就任。

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 砂漠にいる、ラッキーインセクトを複数討伐して一週間ほど月日が経った。

 本日より、酒屋が空きテナントに入るので空きテナントが全て埋った。
 次に、飲食スペースや3号店の施設に警備の人間が立つようになる。
 お酒が商材として増えた為、飲食スペースは更に賑わいを増していた。
 施設の警備を増やしていたこともあり、トラブルが起きることなく営業を続けることが出来た。
 これも、テナントと皆や、ギルド長や町長の協力のおかげだろう。

 酒屋のオープン当日に、建築スタッフの皆に酒を無料で振舞ったら……
 翌日の建築スタッフの状態が散々な事になった。それから以降はエール(ビールみたいな飲み物)を、一日一杯までは経費で落とせるように修正した。
 まさかの限界を超えて酒を飲みまくり、翌日の建築作業に悪影響起こすまで飲むとは……ドワルド達の飲みっぷりを甘く見た結果だろう。

 そんな感じの細々した身内のトラブルはあったが――
 これといってめぼしいこともなく、選挙活動の開始日がやってきた。

 ある種、リストアという貴族に嫁のお披露目をする為に顔見せに行くのだ。
 彼女達の衣装を新調しておくのがいいだろう。
 最初に、エミリーとシェリーを服屋へ連れて行き、彼女達のドレスを二週間で仕立ててもらう事にした。
 その次に、エミリーに3号店の店長業務を代行してもらい、キャリーを服屋へ連れて行った。

「あら、お客さん。また来たのかい!! 
 今度は、キャリー連れてきたの?」と、服屋のオバちゃんが言ってきた。

「まぁ、そうなんです。
 彼女にもドレスが必要なので、仕立ててもらっていいですか?」

「お客さんは、エミリーとシェリーだけ……じゃなく、この子も嫁にしたのね」

「成り行きで……」

「お兄さん。
 成り行き……って、酷いです!!」

「あぁ、ごめんごめん」

「なんだい、お客さん。三人の嫁、全員に尻にひかれてるのかい?」

「いえいえ、いつもはキッチリと、私が……してないですね。
 いいんです。三人とも可愛いし、みんな働き者ですから」

 うーん、嫁の尻にひかれてるのかな?
 俺は割と自由にやらせてもらってると思うけど、外から見るとそう見えるのかな?

「それは、いいんです。
 キャリーの分のドレスも二週間後に必要なんで、仕立てをお願いします」

「わかったよ。ドレスを三着も一気に仕立ててお金は大丈夫かい?」

「臨時収入がありましたから。問題ないですよ」

 七匹分のラッキーインセクトの魔石があるのだ、臨時収入というレベルではない程に稼げるのは確定している。

「服を受け取りにきた際に代金を支払いますね」

「あぁ、それで構わないよ」
 ……と、服屋のオバちゃんと話をしてから服屋を出た。

「ドレスが出来たら……
 貴族に会う事になるんだけど大丈夫?」

「私達より――お兄さんが大丈夫ですか? 
 いざ戦闘になったら、お兄さんが人殺しに……」

「あぁ、一時的にそうなるかもしれないけど……
 結果的に被害を出さない方法はあるんだ」

「そうなんですか……?」

「できることなら、攻撃的な手段にならないように自分も手を打ってみるから、それで駄目なら#町_・__#に害をなす敵を排除するだけだよ」

「気は早いですけど、町長さんですからね。お兄さん」

 ……等と、キャリーと話をしているうちに施設に着いた。

 うちの店(3号店)の前で演説してる奴がいる。

「この店の社長は複数人の若い女をはべらせているようなクズだ!!
 町長になるべき器じゃない!!」

 おー、露骨な人間批判だなぁ……

「キャリー、エミリーと仕事を変わって店長業務に戻っていいよ」

「お兄さんは、どうするんですか?」

「アレが面白いので見とく……」

「程々に、してくださいね。
 あーいうのを聞いてると、社員一同が気分悪いですから」

「わかった。程々にして、ギルドに連絡入れとくよ」

「そうしてください」と、話をしてからキャリーと別れた。

 この人は、町長選挙の対立候補さんかな?

 私の悪口ばかり言っていて、自分が町長になったらどういう風にしたいとか無いのかな? 
 好奇心は猫を殺すという言葉があるが――好奇心がまさってしまったから、対立候補相手に突撃するしかない。

 正直な話、圧倒的に負けしかない状態で挑んでくるあたり世情にニブイ人なんだろう。
 つまり、私のことも知らないはずだ……

「あの、今、何をやられてるんですか?」と、演説をしている人に聞いた。

「ここの社長の悪行を皆に伝えているんだよ!!」

「へぇー。他にどんな悪行を重ねてるんですか?」

 ……
 …………

 へぇ……。
 この人が言う話をまとめると、私は人間ではなく魔王かなんかだそうだ?
 魔王による経済侵略。まぁ、言おうとしている事は解らないではないな。
 うむ、非常に面白い……もっと聞いてと思っていたら。

 エミリーとシェリーが施設から出てきた。

「ハジメさん。何やってるんですか?
 その人は貴方の選挙相手ですよ」

「いやぁ、面白かったんでつい……」

「お兄ちゃん。一緒に帰ろー」「そうだね。一緒に帰ろう」

「元シスターの旦那……って、お前が二階堂ハジメか!!」

「あー、どうも。
 ここの施設の社長のハジメです」と、俺は軽いノリで挨拶をした。

「私個人として、話を聞いてる分には面白いですけど……
 もう少し言葉は選ばれた方がいいですよ」

「余計なお世話だ」

「私達はこれで帰りますんで、あまりに酷いと営業妨害扱いになるので程々にして引き上げてくださいね。
 ドクタージャンパーさんでしたっけ?」

「ドクタージッパーだ!!」

 勝手なイメージだが……
 跳ねてるイメージあったので、名前を間違えた。

「そうでしたね。選挙結果が出るまでお互い頑張りましょうね」
 ……と、ジッパー氏と話したあと、彼女達と一緒に自宅に帰った。

 そして、一週間の選挙活動期間の間ギルド側の言う通りに、ちょくちょく顔だけ出して、一週間が終わった。
 これから一週間は投票期間になる。

 ギルドの貸しスペースに、投票所があるので町民がココに投票に来ている。

 投票スペースで、そこに自分の番号を管理の人に伝えて、誰に投票するかを伝える形式だ。
 各家庭に番号用紙が配られるので、それを持って投票所に行き投票先を伝えるだけだ。
 投票所を確認してしまえば……あとは、なるようになるだけだ。

 それから、一週間が過ぎ投票結果が確定して号外が出ていた。

『セカンタの町、新町長 ニカイドウハジメ氏』
『圧倒的な得票差による選挙となった』
『対立候補のジッパー氏は334票と振るわず』

 それから号外の記事には、私のこの町での実績等が表記されていた。

 なんだ? 2号店のオープン前なのに、やけに騒がしいぞ……?
 従業員達が一階の売り場に集まっていて、私が一階に降りたと同時に声をかけられた。

「町長就任、おめでとうございます」

 あぁ、そういうことか……
 それなら、町の責任者らしく挨拶でもしておくかな。

「どーも皆様、これからは町長として少しでも良い町にできるよう頑張ります」
 ……と、挨拶したら、皆が一斉に拍手をしてくれた。

 その後、お店にギルド長が訪ねて来た。
「町長就任おめでとう。
 今から町長の仕事場へ案内するから、ついて来てください」

「はい」と言って、ギルド長の後をついていった。

 アレ? ここって、元町長の住んでた所じゃないか?

「ここは元町長さんが、住んでる所ですよね?」

「町長は、この建物の居住スペースを自由に使っていいんだよ」

「なるほど!! それじゃ、ミルコさんは引越しの最中です?」

「それなんだが……
 君の選挙にかかりきりで、引っ越しの準備が済んでないらしい」

「それなら、ここにはミルコさんに住んでてもらっていいですよ」

「そうか!! それなら兄さんにそう伝えるよ」

 ギルド長は、建物の入り口のドアノッカーで扉を叩き。

「兄さん、マルコです。
 新町長を連れて来ました」

 扉が開いた。元町長のミルコさんが建物から出てきた。

「やぁ、二人とも今日は早いね」

「兄さん。引き続きココに住んで良いと、ハジメ君が言ってくれたよ」

「そうか、それは助かるよ。
 新しい住まいを探すにも時間かかるし」
 ……と、マルコさんとミルコさんで勝手に会話を進めていってる。

「それで町長の仕事部屋なんだが……ついて来てくれ」

「はい」と言って、ミルコさんの後をついて行く。

「ここだよ……」

 町長室と書かれた部屋だ。
 部屋に入ると、やけに偉そうな机と椅子が置いている。

 うわっ!! こういう偉そうな部屋は、自分には無理だ。

「ここも、ミルコさんが使いません?  私は基本色々と飛んで回ってますし。
 私は応接室か、一般職員と同じ部屋でいいですよ。
 町長の権限関連は、ミルコさんにやってもらうつもりですし」

「そうか、それじゃ……
 そうさせてもらおうかな」

「あと、ミルコさんが副町長になる事で給料が下がるのなら、私の給与分を減らしていいんで町長の給与分を取っといて下さい。
 この業務で、私はお金を稼ぎたいとは思っていないので……」

「あくまでも商売で稼ぎたいのかい? 町長」

「そうですね。それが性に合ってます」

「兄さん。そうなると今までとあまり変わらないね」

「そうみたいだな……。
 もう一人の副町長も、教会あっちの仕事のついでだろうし」

「それじゃ、町長として最初の仕事は――
 明日、応接室でリストア様に町長として挨拶をしてもらう」

「あぁ、わかってる。
 明日は二号店と三号店を休みにしてるんで問題ないハズ」

「まぁ、思う所はあると思うが、綺麗にまとめてくれよ」

「それは大丈夫ですよ。
 この挨拶が終わったら、一度先方に土産もって挨拶しに行くつもりだからな」

「町長は、貴族の事を毛嫌いしてると思ってたよ」

「むしろ、ミルコさんも嫌ってた気がするけど良く無事だったね?」

「ホント、気苦労したさ……」

 さぁ、明日はくだんの貴族様との初対面だ。
 うまく対応しないとな……
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