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30話.風呂作り計画~その2~

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 前回の魔石屋との取引が上手くいった理由は、レベル15からレベル18へ上がった際に取得した――
 商人スキルの【ポーカーフェイス】が要因としてあった。
 あと、余談ではあるが攻撃魔法側と支援魔法側に[魔法効果上昇]のスキルを習得した。

 商人相手だと【鑑定】スキルで価格を見抜かれだ挙句、顔色を表に出さないため売り手側からすると対応しにくいのである。
 魔石屋も魔道具屋も半ば言いくるめられた形になった。
 それでも、キッチリと利益が出る範囲で取引をしているので、相手も対応しにくいのである。

 今までの色々な努力が身を結び今週末には冷蔵庫と冷凍庫が出来る。
 それと、お風呂が完成するのである。
 目標を達成する為に、俺は下手な冒険者より冒険を頑張ってるのかもしれない。
 お風呂に関しては、ある種の実験も兼ねている為うまくいってほしい所だ……

 こんな感じの休みが待ち遠しい状態で、テンション高めに営業してたら――子供達や、建築のメンバーからも私が何かを企んでると察された。
 当然のように、子供達の様子を見に来たエミリーさんもソレに気づいている。

 あれっ? 商人相手に通用していた【ポーカーフェイス】のスキルってどこいった?

 テンション高めで残りの営業を進める、そんな流れで休み前日の終業時間が近づいた。
 お店の営業時間は終わっているので、お店には既にお客さんはいない状況だ。
 ドワルドが終業時間前だが、私に話しかけて来た。

「店長。
 ちと、確認をしてもらいたい」

「地下室が出来たのか?」

「あぁ、完成した。
 あとは店長から魔道具を貰って設置すれば完成じゃ」

「そうか、そうかー!!  嬉しいねぇ。
 それで、地下室に行くのかな?」

「そうしてくれ」

 ドワルドと一緒に地下室のある裏庭へ向かった。
 他の建築メンバーもその場にいた。

「いやぁ、みんなよく頑張ってくれたね」と、建築メンバーに労いの言葉をかけた。
「それじゃぁ、確認をさせてもらうよ」と、言って地下室に入ることにした。

 水が入らないように地下室の入り口には屋根をつけある。
 水が入り込まないように、階段を地面より高く上げてから階段を作ってあった。

「こういう、工夫はありがたいね」

 そのまま地下室に降りる階段を降り、入り口に灯りの魔道具があるのでソレを使い灯りをつけた。
 考えていたより、地下室を広く作ったもんだな。

 まずは常温棚、ハシゴではなく階段として登り降りができるようになっていた。
 常温棚の荷物は荷下ろしをする事が前提なので、これは良い配慮だと思う。

 常温棚が地下室の右部、左部と別れている。そして、右部と左部の両方に階段がある。
 そして、その先に進み風の魔道具の風の壁を抜けると、その先が冷蔵庫と冷凍庫になる場所が作られている。

 壁に関しても、私が[アースウォール]の魔法で固めていた時から、一手間を加えてくれてるみたいだ。
 
 ドワルドが仕事の出来を聞いて来た。

「どうかの店長?」

「良い仕事してますねぇ。
 バッチリだよ」

「それで、これから先の俺たちの仕事は?」と、建築メンバーの一人が聞いてきた。

「まだあるよー。
 ドワルドさんに細かい部分は、伝えてるから聞いてください。
 まぁ、私から言えることは、半年の契約ではありますが、そこから以降も続けたい方は継続で雇用させていただきます。
 そこからは、ギルドの契約が切れるのでウチのお店の直接雇用になります。
 ここからの作業は、部署替えとかも希望があったら話を聞くけど?」

 コッペが、思いっきり手を上げてきた。

「飲食の部門に配属されたいです!!」

「わかった!! その意見聞こう。
 ドワルドさん、コッペ君を飲食の部門に移動させても良いかな?」

「もっと大がかりな作業があれば、もっと人数いるかもしれないが……
 今の作業予定なら四人いれば十分じゃ」

「よし、コッペ君。
 君が、この二号店の店長になる日があるかもしれない。
 全力で頑張ってくれよ、最初は一通りの業務を覚えてもらうからね」

「ハイ!!」と、コッペは元気一杯に返事をした。

「なんじゃ。
 コッペ、ワシの元にいた時より元気じゃないか!!」

「「「あははは」」」

 建築メンバーから笑いが上がった。

 そんな、こんなで終業時間が過ぎようとしていた。
 あとは子供達に挨拶しないとな。その後は子供達に挨拶をして子供達を帰宅させた。
 明日は朝から魔道具屋、金物屋、家具屋の順に回っていかないとな。

 今週やったことで、何かを忘れてる気がする。
 あっ!!  オークの魔石と骨売ってない。

 [セカンタの町]のギルドへ行き、買取倉庫でオークの魔石と骨の大量販売を行った。
 オークの魔石と骨の代金は合わせると蛙の肉より良い値段がついた。
 今度の休みは連休をとって、一日中オーク狩りをしても良いかもしれない……等と、考えていた。

 よし、家に帰って明日を待つのみ。
 どうせ、暇なんで勉強でもするとしよう……
 そろそろ、 [アレ]を[異世界取引]で出すのも手かな……等と考えていた。

 そして、待望のお休みの日。

 魔道具屋で、冷蔵と冷凍の魔道具を購入して、金具屋で風呂桶を購入した。
 家具屋で風呂に沈める踏み台(すのこ)と、金属につける木製の階段付きのカバーを購入した。

 まずは、地下室にある冷蔵庫と冷凍庫に魔道具を設置してを設備を完成させる。

 地下室へ入り灯りをつけた。
 冷蔵スペースの位置に冷蔵の魔道具を設置する。
 その奥に冷凍スペースを作り冷凍の魔道具を設置した。
 地下室の奥が冷凍庫、その手前が冷蔵庫になる。
 2つの設備が完成し、入り口付近は常温棚の地下倉庫が完成した。

 この地下室の運用には魔石が必要だが、当面はビッグフロッグの魔石を集めればいいので何とかなる。
 ただ、自身の手で魔石を収集する必要があるので何かしら対策をする必要がある。
 その件は、何かしらの策を考えよう。

 そして、次が大本命のお風呂である。
 指示書通り(設計図)に、ドワルドが作っているので問題はないハズ。
 
 石窯がある裏庭へと移動した。
 そして、うまく扱えるかどうかを調べるために実践してみることにした。
 まず、石窯に薪を入れた。
 石窯用にオーダーした金属製の風呂桶を設置する。
 続けて、風呂桶に入るための木製カバーを設置した。
 [ウォーター]の魔法で風呂桶に水を入れて、踏み台(すのこ)を沈める。
 踏み台には重りがついているので、ゆっくりと水底に沈んでいった。

 そして、[ファイア]の魔法で石窯に火を入れ水温をあげると、湯気が出始めてきた。
 流石に、このまま入ると暑いだろうと思い、石窯の火を消してお湯の温度を下げた。
 手を湯船に入れ、お湯の温度を確認した。
 丁度いい温度だな……

 裏庭に誰もいないのを確認して、服を脱ぎ湯船に浸かる。
 金属に身体が触れる部分は、カバーをつけてるので火傷の心配はない。

「フゥーーーーー!!」と、気が抜けた声を出してしまった。

 ああ、そういえば。
 風呂場で考えごとしてて、眠りこけた事なんか多々あったよなぁ。
 ……と、懐かしさを感じながら風呂を満喫した。

「店長ーー!!」と言って、裏庭にドワルドがやってきた。

「あー、こっちだ。
 石窯のところだ」

 ドワルドが、こっちにきた。

「なんじゃ、店長。
 鍋に入って、茹でられとるのか?」

「違う、違う。
 これは、お風呂だよ」

 だいぶ温まったので、そろそろ出るかな。

「その風呂とやらは、良いものなのか?」

「入ればわかるさ……」と、私が言うとドワルドが服を脱ぎ出そうとする。

「ちょっと待って!!  このお風呂は一人用だから。
 準備できたら呼ぶから、それまではお店で待ってて」
 そう伝えると、ドワルドがお店に向かって行った。
 タオルで体を拭き服を着る。

 [ウォーター]で湯船に水を足して石窯に薪を追加する。
 そして、[ファイア]を使って水の温度を上げる。
 あとは自然に薪を燃焼させて、ドワルドを呼び行った。

「ドワルドさん、お待たせしまた」

「店長。
 なんか、サッパリした感じがしとるのぉ」

「まぁね……お風呂ってそういうモノだし。
 そしたら、案内しますんでついてきてください」

「楽しみじゃな」

 裏庭にある、お風呂場に到着した。

 今の状況だと、お湯が熱すぎるのでお湯を少し冷まします。
 [ウォーター]の魔法で、お湯の温度を下げた。

 火は消えてるみたいなので、これ以上は温度上がらないし大丈夫だろう。
 お湯を触って温度は大丈夫そうだったので、ドワルドに風呂に入る許可を出した。

「どうぞ、服脱いでゆっくりと湯船に入ってください。
 あと、カバーで隠してる金属部分は絶対触らないようにして下さいね、火傷しますよ。
 ぬるかったら、言ってくれれば温度は熱くできますんで」

 ドワルドが躊躇なく服を脱ぎ、躊躇なく風呂に入った。

「これが風呂かぁ。気持ちええもんじゃな。
 仕事後に入りたいもんじゃな、こんな気持ちいいと酒を……」

「お酒はダメです。
 一応、職場なんでね」

「ぐぬぬ……。
 しかし、これはいいもんじゃの」

「エミリーに聞いたけど、貴族位しか入れないらしい」

「なんじゃ。
 この施設は、貴族並みの施設なのか」

「……っぽいね。それでも個人的には風呂だけは入らないとね。
 せっかくだし、建築メンバーや飲食メンバーにも解放するかな。
 ドワルドさん。ここの施設は、裸になることが前提だから。
 周りから見られないように、仕切りを作ってもらえないかい」

「ああ、ええぞ。
 ワシらも使ってええんじゃろ」

「そうだね。
 そのかわり、掃除もきちんとするように掃除当番制にしよう」

「水が汚れるのか?」と、ドワルドがきいてきた。

「体の汚れを落とす施設だからね。
 掃除をしていかないと、この風呂桶が汚れちゃうんだよ」と答えた。

 後、水を入れるために水の魔道具をつけたいから。
 風呂桶に水が入る位置と、石窯の薪に火をつける為に火の魔道具で火をつけたいと考えた。

「あそことココに、魔道具の設置をできるようにしてもらっていいかい。」

「あぁ……そうか、店長だけだと必要ないものな。
 わかった。明日から作業に入るよ」

「まぁ、こんな感じで次々と仕事を増やすと思うけど、一つずつ片付けていってください。
 他の皆の意見聞いてからになるけど、一般人でも入れるお風呂があるといいなとか考えてるんだよねえ」と、ドワルドに伝えた。

「そりゃ、楽しみじゃのう。
 そんな施設を作った日には、店長は町長になるんじゃないか?」

「あはは、まさかないでしょ」……と、ドワルドの話を冗談半分で受け取っていた。
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