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28話.これは父性だ。

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 魔道具屋を出た時、陽が沈み辺りは暗くなりつつあった。

 とりあえず、北の森の入り口付近を探索して、森の抜け道を探さないとな。
 【転送魔法】で森の入り口へ移動し、[ライト]の魔法で自分の周りを明るく照らした。
 しばらく、森の入り口付近を探索すると馬車道が森の中に伸びていた。
 俺は、サドタの街へ続く森の抜け道を道なりに進んでいった。

 森の道を進む道中にゴブリンが幾度も襲ってきたが、[ライト]の魔法で明るさを確保していたので、戦闘面での苦労はなかった。
 それに、[ライト]を使っての夜中の森の探索は、これで二度目になるので慣れたものである。

 時折、襲いかかって来るゴブリン達を武器ごと叩き斬る。
 逃げる相手は、そのまま無視して探索を続けた。
 しばらく、道なりに歩き続けていると森を抜けた。

 北に向かって、そのまま街道が続いている。
 ここからなら、あの魔法使ってもいいかな? 使う魔法は[スピードアップ]の魔法だ。 
 [スピードアップ]の魔法の主な効果は、移動速度強化と回避率強化である。
 北の森を抜けて見晴らしのいい平原入ったので、魔法を使い移動速度を速めてサドタの街へ行く算段である。

 ここから先にはオークが出るとかいってたけど……
 奴らも灯りがなけりゃ動けないだろうし。――と、ぬるい事を考えながら歩いていたら。
 オークの集団にぶち当たった。
 俺は、[ライト]の魔法を最低限の明るさに調整して物陰に隠れた。

 あいつら、松明持って周辺を警戒してやがる。

 周りで大火事になるようなものは無いし、纏めてやってしまうか?
 オークの集団に向けて、[ファイアストーム](範囲魔法)を放った。
 オーク達が持っていた、松明ごとモンスターを燃やしてしまった。
 魔法が放たれたその場には、肉が焦げる匂いとオークであったであろう骨と魔石が残っていた。

 オークの魔石と、オークの骨を【アイテムボックス】に回収して、再び街道沿いを歩いて行く。

 途中、オークの集団と2~3回遭遇したが――
 オーク達が松明をつけていた為、こちらが先に警戒して身を隠して[ファイアストーム]の餌食にする、一連の流れを繰り返した。

 街道沿いを歩き続けていたが、いい時間になったので本日は帰還することにした。
 次はここから進む為に【マップ】を確認してチェックを入れた。 

 そして、そのまま【転送魔法】で自宅へ帰り、[クリア]の魔法で体と服を綺麗にしてベッドに入った。

 これで、3~4時間は眠れるハズ……
 朝ごはんは、シェリーと一緒に食べに行こうと考えつつ眠りについた。

 ……
 …………

 二階の入り口のドアの鍵を誰かが開けている。それに、気づかず眠り続けている。
 何者かにベッドの上に乗られ、何者かが……俺の体に乗り俺を揺さぶって来る。

「お兄………おき……」

「zzz……」

 目をこすり……。
 半分寝ぼけた状態で、その正体を見たら。
 小さい、可愛い、天使だと思い――抱きつき、そのままキスして布団に押し倒した。

 そして、目が覚めた……
 なんで、俺のベッドにシェリーがいるんだ?  それになんで、彼女が目を開けたままベッドに入ってるのかな?

「おはよう、シェリー。
 なんで、ここで寝てるの?」

「お兄ちゃんに、キスされて押し倒されたの」

 えっ!?
 少しだけ記憶が……可愛い、天使、キス……覚えがあった。
 俺は、寝相が悪い……寝起きも悪い、完全にやらかした。
 
「ごめんね。シェリー嫌な思いさせたかい」

「お兄ちゃんと、私の仲だもんね」と言って逆に彼女は抱きついてきた。
 ベッドの中で抱きつかれるのは、服を着てても来るものがあるな。

 可愛い、いかんいかん。

 抱きついたシェリーを優しく引き剥がして、再び挨拶した。

「おはよう。シェリー」

「何故? この部屋に入って来れるの?
 鍵かかってなかった?」

「おはよう、おにーちゃん。
 1階から、おにーちゃんを呼んだけど起きてこなかったから起こしにきたの。
 だって、この部屋の鍵は私達の休憩室の鍵だもん」

 二階には俺のベッドしかないので、鍵は二つあっても鍵は一種類しかない状態だ。
 子供達の休憩用に、休憩室の鍵として洗い場に鍵を置きっぱなしだった。
 色々と失態をかました挙句、少女をベッドに誘い入れたのか……

 よし、なかったことにしよう。

「シェリー。
 お願いだから私が寝ている時は、私に乗ったりして起こさないでね」

 寝ぼけて何するかわからない――今後、気をつけないと何かやらかしそうだ。

「お兄ちゃん。
 私とデートなんだから、早く起きてくださーい」と、シェリーに叩き起こされた。

「着替えるから、一階で待っててくれないかな?」

「はーい」と言って、シェリーは一階へ降りていった。

 服を着替えつつ、とりあえずお腹すいたので、食事にでも行くかなと考えていた。
 着替えが終わったので一階に降りた。

「おまたせ、シェリー。
 最初は食堂に行っていいかな、お腹が空いちゃってさ」

「いいよー」と、シェリーの許可が出たので食堂に行くことになった。

 食堂まで歩いて行き。食堂に着いた私達は食事をとることにした。

「シェリー。
 好きなもの選んでいいよ」

 シェリーが選んだのは、お子様ランチであった。
 流石に、同じものは頼めないな。俺は店長のおススメとやらを注文した。

 彼女は嬉しそうに食事をしている。
 シェリーを見てると、こっちまでほっこりとして来る。
 食事を終えて、シェリーがお礼を言ってきた。

「お兄ちゃんありがとう」

「どういたしまして、こちらこそありがとう」

 一人で食べてると食事も味気ないモノだが、誰かと食べるとなんか違うよな。

「ん?」

 彼女は意味がわかってないみたいだ。
 なので、俺は頭を撫でてやってその場をごまかした。

「それで、おにーちゃん次はどこに行くの?」

 え?  俺が考えるの?

 よくよく考えたら、エミリーさんとは買い物デートがメインだし。
 どこ選べばいいんだ? 子供の喜ぶところって思いつかないぞ。

 あっ、いいところあった。

「よし、決めたから。
 シェリーこっちおいで」

 シェリーにおいでおいで、と呼び寄せて手を繋いだ。
 そして、【転送魔法】を使った。
(別に転送魔法は手を繋がなくとも発動できますけど、安心させる為である下心ではない)

 エミリーと、歩いて来た時に見つけた河原だ。
 子供って水遊び好きなイメージあるので連れて来た。

「お兄ちゃん。
 さっきの魔法って、私を助けてくれた時に使ってくれた魔法だよね」

「よく覚えてたね」

「お兄ちゃん。なんで河原なの?」

「いや、子供って水遊び好きなイメージあるし。
 ここならのんびりできるかなと思って……」

「子供って、お兄ちゃんひどい」と言って、むくれるシェリー。

「怒るなって、服買ってやるから」

「ほんと!!」と言って、ピョンピョンしながら喜びを身体で表すシェリー。

 せっかく河原に来たし、水あそびもしなきゃな。
 水場に近づいて、水をシェリーにかける。

「キャッ!!」
 ……と、水をかけられた彼女が驚きの声を上げた。

「やったね、お兄ちゃん。
 許さないんだから」とシェリーが言って、水の掛け合いが始まった。

 お互いに、びしょ濡れである。

「あははは」と、なぜか笑いが出てしまった。

 しかし、シェリーの服が水で張り付いていてなんか、エロい気がする。
 いかんいかん、コレは父性だ……父性に目覚めるんだ。

[クリア]の魔法をかけて、お互いの服を乾かした。
 河原でのんびりと過ごせて、満足な時間を過ごすことができた。

「それじゃ町に帰ろうか」と言って、【転送魔法】で服屋の前に到着した。

「最後は、シェリーに服を買ってあげるよ」と言ったら。

「わーい!! 」と、彼女は喜んでくれた。

 お店に入ると、この前の店員さん(おばちゃん)が挨拶してくれた。

「いらっしゃい……って、この前のお客さんじゃないかい。
 今日は、シェリーを連れて来たのかい」

「お兄ちゃんと、デートなの!」と、言った。

「お客さん。
 アンタ……」

「違います、色々あったんです」と、俺は軽く否定だけはしておいた。

 シェリーは、服を選んでいた。
 女の子の服選びは時間かかるしなぁ。
 ゆっくり待たせて貰うかな。

 ……
 …………

 ほんと長いな。

「シェリー。
 まだ服は決まらないのかい?」

「この二つで、悩んでるの……」

 一つは、おとなしめの服で、もう片方がフリルが付いていて、かるくゴスロリぽい感じの服だった。

「試着させてもらったら?」

「そうするー」

 試着が終わって、「お兄ちゃん似合うかな?」  ……と、おとなしめの服を着てくれた。

 うん、可愛い、天使。これは、買いだな。

「お兄ちゃん、どうかな」

「似合ってるよー。すごく可愛い」

 えへへ~って、感じにシェリーが照れてる――その姿もまた可愛い。

 もう一つの服(ゴスロリ風)を試着してきて、「お兄ちゃん、これはどうかな?」と、シェリーが言った。

 彼女の姿に、一瞬だが我を忘れた。
 洋ロリって次元を超えるよね、などと言っていた腐れ友人の言ってた言葉を理解してしまった。
 この可愛さは凶器である……

「お人形さんみたいで、すごく可愛い」

 これは、絶対買いだな。
 あれ? 両方買いなのか?

 店員さんに「両方買います」と、言ってしまっていた。

「二つで150ゴールドだよ」と、言われたので150ゴールドを店員に渡した。
 少女がゴスロリ風の服着て、ピョンピョンと跳ねて喜ぶ姿を見て癒しを感じている元30歳がいた。

 昔の偉い人は言った。
 可愛いは、正義であると――だから、俺は悪くない。
 それに、これは父性だ!! きっと健全な気持ちである。

 そして、服屋から教会までシェリーを送っていったら。
 教会の入り口で彼女の帰りを待っていたエミリーさんにあってしまった。
 浮気じゃないんだよ……ホントだよ。  ――と、内心動揺しまくっていた。

「ハジメさん。
 今日は、シェリーに付き合ってくれてありがとうございます」

 ふぇ!? 予想外の言葉に驚いた。

「あら、可愛いお洋服買ってもらったのね。良かったわね」

「お姉ちゃんも、買ってもらった洋服着て何度も喜んでたもんね」と、シェリーが暴露する。

「あっ、それは」 と、口ごもって赤くなる。

「エミリーさん、怒らないんですか?
 小さい子とは、いえデートしたわけで」

「あぁ、それは色々ハジメさんにも事情あるでしょうし。
 この子と私にとって、あなたは大切な人ですから――それに、押しに弱いですし」

「あはは、確かに押しに弱いですね……」と言った。

 俺は罰が悪くて頭を掻く。

「それに、この国は重婚が認められてますから。
 この前の言葉で私は十分ですよ」

 エミリーは、何かを察してるみたいだな。

「もしかして、あの後神父から。
 この前の出来事を聞きました?」

「はい」

 超恥ずかしい……

「そういう事もあるんで、怒ったりはしないですよ」

「へぇー。お姉ちゃん怒らないんだぁ。
 お兄ちゃん。少し、しゃがんで」と、シェリーが言ってきた。

 へ?  彼女に言われるがまま少し体勢を低くした。
 シェリーが私に抱きついてきて、そのままキスしてきた。

「ちょっと、シェリー!!  何してるの!!」

「わー!!  おねーちゃんが怒ったー」

 あはは、姉妹って微笑ましいね。
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