上 下
31 / 198

28話.これは父性だ。

しおりを挟む
 魔道具屋を出た時、陽が沈み辺りは暗くなりつつあった。

 とりあえず、北の森の入り口付近を探索して、森の抜け道を探さないとな。
 【転送魔法】で森の入り口へ移動し、[ライト]の魔法で自分の周りを明るく照らした。
 しばらく、森の入り口付近を探索すると馬車道が森の中に伸びていた。
 俺は、サドタの街へ続く森の抜け道を道なりに進んでいった。

 森の道を進む道中にゴブリンが幾度も襲ってきたが、[ライト]の魔法で明るさを確保していたので、戦闘面での苦労はなかった。
 それに、[ライト]を使っての夜中の森の探索は、これで二度目になるので慣れたものである。

 時折、襲いかかって来るゴブリン達を武器ごと叩き斬る。
 逃げる相手は、そのまま無視して探索を続けた。
 しばらく、道なりに歩き続けていると森を抜けた。

 北に向かって、そのまま街道が続いている。
 ここからなら、あの魔法使ってもいいかな? 使う魔法は[スピードアップ]の魔法だ。 
 [スピードアップ]の魔法の主な効果は、移動速度強化と回避率強化である。
 北の森を抜けて見晴らしのいい平原入ったので、魔法を使い移動速度を速めてサドタの街へ行く算段である。

 ここから先にはオークが出るとかいってたけど……
 奴らも灯りがなけりゃ動けないだろうし。――と、ぬるい事を考えながら歩いていたら。
 オークの集団にぶち当たった。
 俺は、[ライト]の魔法を最低限の明るさに調整して物陰に隠れた。

 あいつら、松明持って周辺を警戒してやがる。

 周りで大火事になるようなものは無いし、纏めてやってしまうか?
 オークの集団に向けて、[ファイアストーム](範囲魔法)を放った。
 オーク達が持っていた、松明ごとモンスターを燃やしてしまった。
 魔法が放たれたその場には、肉が焦げる匂いとオークであったであろう骨と魔石が残っていた。

 オークの魔石と、オークの骨を【アイテムボックス】に回収して、再び街道沿いを歩いて行く。

 途中、オークの集団と2~3回遭遇したが――
 オーク達が松明をつけていた為、こちらが先に警戒して身を隠して[ファイアストーム]の餌食にする、一連の流れを繰り返した。

 街道沿いを歩き続けていたが、いい時間になったので本日は帰還することにした。
 次はここから進む為に【マップ】を確認してチェックを入れた。 

 そして、そのまま【転送魔法】で自宅へ帰り、[クリア]の魔法で体と服を綺麗にしてベッドに入った。

 これで、3~4時間は眠れるハズ……
 朝ごはんは、シェリーと一緒に食べに行こうと考えつつ眠りについた。

 ……
 …………

 二階の入り口のドアの鍵を誰かが開けている。それに、気づかず眠り続けている。
 何者かにベッドの上に乗られ、何者かが……俺の体に乗り俺を揺さぶって来る。

「お兄………おき……」

「zzz……」

 目をこすり……。
 半分寝ぼけた状態で、その正体を見たら。
 小さい、可愛い、天使だと思い――抱きつき、そのままキスして布団に押し倒した。

 そして、目が覚めた……
 なんで、俺のベッドにシェリーがいるんだ?  それになんで、彼女が目を開けたままベッドに入ってるのかな?

「おはよう、シェリー。
 なんで、ここで寝てるの?」

「お兄ちゃんに、キスされて押し倒されたの」

 えっ!?
 少しだけ記憶が……可愛い、天使、キス……覚えがあった。
 俺は、寝相が悪い……寝起きも悪い、完全にやらかした。
 
「ごめんね。シェリー嫌な思いさせたかい」

「お兄ちゃんと、私の仲だもんね」と言って逆に彼女は抱きついてきた。
 ベッドの中で抱きつかれるのは、服を着てても来るものがあるな。

 可愛い、いかんいかん。

 抱きついたシェリーを優しく引き剥がして、再び挨拶した。

「おはよう。シェリー」

「何故? この部屋に入って来れるの?
 鍵かかってなかった?」

「おはよう、おにーちゃん。
 1階から、おにーちゃんを呼んだけど起きてこなかったから起こしにきたの。
 だって、この部屋の鍵は私達の休憩室の鍵だもん」

 二階には俺のベッドしかないので、鍵は二つあっても鍵は一種類しかない状態だ。
 子供達の休憩用に、休憩室の鍵として洗い場に鍵を置きっぱなしだった。
 色々と失態をかました挙句、少女をベッドに誘い入れたのか……

 よし、なかったことにしよう。

「シェリー。
 お願いだから私が寝ている時は、私に乗ったりして起こさないでね」

 寝ぼけて何するかわからない――今後、気をつけないと何かやらかしそうだ。

「お兄ちゃん。
 私とデートなんだから、早く起きてくださーい」と、シェリーに叩き起こされた。

「着替えるから、一階で待っててくれないかな?」

「はーい」と言って、シェリーは一階へ降りていった。

 服を着替えつつ、とりあえずお腹すいたので、食事にでも行くかなと考えていた。
 着替えが終わったので一階に降りた。

「おまたせ、シェリー。
 最初は食堂に行っていいかな、お腹が空いちゃってさ」

「いいよー」と、シェリーの許可が出たので食堂に行くことになった。

 食堂まで歩いて行き。食堂に着いた私達は食事をとることにした。

「シェリー。
 好きなもの選んでいいよ」

 シェリーが選んだのは、お子様ランチであった。
 流石に、同じものは頼めないな。俺は店長のおススメとやらを注文した。

 彼女は嬉しそうに食事をしている。
 シェリーを見てると、こっちまでほっこりとして来る。
 食事を終えて、シェリーがお礼を言ってきた。

「お兄ちゃんありがとう」

「どういたしまして、こちらこそありがとう」

 一人で食べてると食事も味気ないモノだが、誰かと食べるとなんか違うよな。

「ん?」

 彼女は意味がわかってないみたいだ。
 なので、俺は頭を撫でてやってその場をごまかした。

「それで、おにーちゃん次はどこに行くの?」

 え?  俺が考えるの?

 よくよく考えたら、エミリーさんとは買い物デートがメインだし。
 どこ選べばいいんだ? 子供の喜ぶところって思いつかないぞ。

 あっ、いいところあった。

「よし、決めたから。
 シェリーこっちおいで」

 シェリーにおいでおいで、と呼び寄せて手を繋いだ。
 そして、【転送魔法】を使った。
(別に転送魔法は手を繋がなくとも発動できますけど、安心させる為である下心ではない)

 エミリーと、歩いて来た時に見つけた河原だ。
 子供って水遊び好きなイメージあるので連れて来た。

「お兄ちゃん。
 さっきの魔法って、私を助けてくれた時に使ってくれた魔法だよね」

「よく覚えてたね」

「お兄ちゃん。なんで河原なの?」

「いや、子供って水遊び好きなイメージあるし。
 ここならのんびりできるかなと思って……」

「子供って、お兄ちゃんひどい」と言って、むくれるシェリー。

「怒るなって、服買ってやるから」

「ほんと!!」と言って、ピョンピョンしながら喜びを身体で表すシェリー。

 せっかく河原に来たし、水あそびもしなきゃな。
 水場に近づいて、水をシェリーにかける。

「キャッ!!」
 ……と、水をかけられた彼女が驚きの声を上げた。

「やったね、お兄ちゃん。
 許さないんだから」とシェリーが言って、水の掛け合いが始まった。

 お互いに、びしょ濡れである。

「あははは」と、なぜか笑いが出てしまった。

 しかし、シェリーの服が水で張り付いていてなんか、エロい気がする。
 いかんいかん、コレは父性だ……父性に目覚めるんだ。

[クリア]の魔法をかけて、お互いの服を乾かした。
 河原でのんびりと過ごせて、満足な時間を過ごすことができた。

「それじゃ町に帰ろうか」と言って、【転送魔法】で服屋の前に到着した。

「最後は、シェリーに服を買ってあげるよ」と言ったら。

「わーい!! 」と、彼女は喜んでくれた。

 お店に入ると、この前の店員さん(おばちゃん)が挨拶してくれた。

「いらっしゃい……って、この前のお客さんじゃないかい。
 今日は、シェリーを連れて来たのかい」

「お兄ちゃんと、デートなの!」と、言った。

「お客さん。
 アンタ……」

「違います、色々あったんです」と、俺は軽く否定だけはしておいた。

 シェリーは、服を選んでいた。
 女の子の服選びは時間かかるしなぁ。
 ゆっくり待たせて貰うかな。

 ……
 …………

 ほんと長いな。

「シェリー。
 まだ服は決まらないのかい?」

「この二つで、悩んでるの……」

 一つは、おとなしめの服で、もう片方がフリルが付いていて、かるくゴスロリぽい感じの服だった。

「試着させてもらったら?」

「そうするー」

 試着が終わって、「お兄ちゃん似合うかな?」  ……と、おとなしめの服を着てくれた。

 うん、可愛い、天使。これは、買いだな。

「お兄ちゃん、どうかな」

「似合ってるよー。すごく可愛い」

 えへへ~って、感じにシェリーが照れてる――その姿もまた可愛い。

 もう一つの服(ゴスロリ風)を試着してきて、「お兄ちゃん、これはどうかな?」と、シェリーが言った。

 彼女の姿に、一瞬だが我を忘れた。
 洋ロリって次元を超えるよね、などと言っていた腐れ友人の言ってた言葉を理解してしまった。
 この可愛さは凶器である……

「お人形さんみたいで、すごく可愛い」

 これは、絶対買いだな。
 あれ? 両方買いなのか?

 店員さんに「両方買います」と、言ってしまっていた。

「二つで150ゴールドだよ」と、言われたので150ゴールドを店員に渡した。
 少女がゴスロリ風の服着て、ピョンピョンと跳ねて喜ぶ姿を見て癒しを感じている元30歳がいた。

 昔の偉い人は言った。
 可愛いは、正義であると――だから、俺は悪くない。
 それに、これは父性だ!! きっと健全な気持ちである。

 そして、服屋から教会までシェリーを送っていったら。
 教会の入り口で彼女の帰りを待っていたエミリーさんにあってしまった。
 浮気じゃないんだよ……ホントだよ。  ――と、内心動揺しまくっていた。

「ハジメさん。
 今日は、シェリーに付き合ってくれてありがとうございます」

 ふぇ!? 予想外の言葉に驚いた。

「あら、可愛いお洋服買ってもらったのね。良かったわね」

「お姉ちゃんも、買ってもらった洋服着て何度も喜んでたもんね」と、シェリーが暴露する。

「あっ、それは」 と、口ごもって赤くなる。

「エミリーさん、怒らないんですか?
 小さい子とは、いえデートしたわけで」

「あぁ、それは色々ハジメさんにも事情あるでしょうし。
 この子と私にとって、あなたは大切な人ですから――それに、押しに弱いですし」

「あはは、確かに押しに弱いですね……」と言った。

 俺は罰が悪くて頭を掻く。

「それに、この国は重婚が認められてますから。
 この前の言葉で私は十分ですよ」

 エミリーは、何かを察してるみたいだな。

「もしかして、あの後神父から。
 この前の出来事を聞きました?」

「はい」

 超恥ずかしい……

「そういう事もあるんで、怒ったりはしないですよ」

「へぇー。お姉ちゃん怒らないんだぁ。
 お兄ちゃん。少し、しゃがんで」と、シェリーが言ってきた。

 へ?  彼女に言われるがまま少し体勢を低くした。
 シェリーが私に抱きついてきて、そのままキスしてきた。

「ちょっと、シェリー!!  何してるの!!」

「わー!!  おねーちゃんが怒ったー」

 あはは、姉妹って微笑ましいね。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。

みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜

平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。 『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。 この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。 その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。 一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。

貴族に転生してユニークスキル【迷宮】を獲得した俺は、次の人生こそ誰よりも幸せになることを目指す

名無し
ファンタジー
両親に愛されなかったことの不満を抱えながら交通事故で亡くなった主人公。気が付いたとき、彼は貴族の長男ルーフ・ベルシュタインとして転生しており、家族から愛されて育っていた。ルーフはこの幸せを手放したくなくて、前世で両親を憎んで自堕落な生き方をしてきたことを悔い改め、この異世界では後悔しないように高みを目指して生きようと誓うのだった。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

処理中です...