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25話.長い一日

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 あたりが暗くなっていたので、エミリーを教会へ送った後に、お店(自宅)へ帰った。

 子供たちの指導役として、二週間の予定が過ぎたので彼女は明日から店には来ない。
 残念だと考えつつ歩いて帰っていたら、道に迷った時に見つけた歓楽街へ入る道を見つけた。
 ここで[魔法使い]じゃなくなってしまえば、堂々と彼女と付き合えるのか?

 けど、それじゃ――彼女に対して浮気したのと変わらないよな。
 考えるのは辞めておこう、歓楽街に行くのは今じゃないハズだ。

 やけに、明るい歓楽街を横目に通り過ぎて家路についた。
 しばらく歩いて、ようやく自宅に到着した。
 何故? 俺は教会から歩いて帰ってきてんだ? 【転送魔法】を使えば ……と、家に帰宅してから思い出した。
 考え事していたせいで、その事に頭が回らなかったのだろう。

 そういえば、ドワルドに石窯作って貰ってたんだったなと思い。
 [ライト]の魔法で辺りを明るくして裏庭を確認すると、頑丈そうな作りの石窯が出来上がっていた。
 ドワーフだから釜作りは得意なのかな?  この出来の石窯ならば風呂作りも上手くいきそうだ。
 最後に荷物置き場を確認したら、置いておいた二本のお酒は当然のように消えていた。

 色々と納得はしたつもりだけど、できない部分もある。 
 [スリープ]の魔法で強制的に寝ても、このモヤモヤする気分は治らないし、お酒の力を借りるとしよう。

 【異世界取引】で[焼酎]を取引する。
 部屋に入り、入手した焼酎を手酌で酒を飲み、睡魔に負けたところで眠りについた。

 酒が入っていた事もあり、いつもより1時間半ほど遅く目が覚めた。
 酒に頼って眠ると、一人暮らしだとこうなるよな。

 子供達と工事の人員が、あと30分もすれば集まるから身支度しないとな……
 一通りの身支度が済んで、一階に降りて朝ごはん(ハンバーガー)食べ終わった位で、子供達がお店にやって来た。

「お兄ちゃーん。
 おはよう」と言って、シェリーが俺にひっついてきた。

「あぁ、おはよう。
 今日も元気だねシェリー」と、挨拶したら。

「お兄ちゃん。
 お酒の匂いする……」と、シェリーに言われて反省した。

 酒の匂いに気づいて、シェリーが俺から離れた。
 危ない危ない、新店舗の営業を二週間やってきて余裕出てきたからといって、酒臭いまま営業してたら店のイメージが悪化する所だった。

 慌てて、[ヒーリング]の魔法で状態異常を解いて、その後に[クリア]の魔法を使って身奇麗にした。

「シェリー。
 これで大丈夫かい?」

「うん。
 いつもの、お兄ちゃんだよ」と言って、再び引っ付いてきた。

 子供は細かい部分で、鋭いから気をつけないといけないな……
 まぁ、今回はそれに助けられた。まだまだ、俺は未熟だなと反省した。

 彼女が引っ付いたままだと、みんなに挨拶ができないので、シェリーを引き剥がして、「みんなも、おはよう」と、他の子供達にも挨拶した。

「おはようございます」と、子供達も元気に返事を返してくれた。

 そして、朝から異常なまでにテンションの高いドワーフのオッサンがドスドスと音を立ながら歩いてきた。

 ドワルドが、「店長ーー!!」と言って、建物内に入ってきた。

「えっ?  何? 
 朝から、そんな大声出して」と、驚きつつもドワルドに聞いてみた。

「昨日、貰った[焼酎]を売ってくれ!! 
 あんな美味い酒をワシは知らんぞ!!」

「その様子だと、気に入ってもらえたのかな」

「気にいるも何も――飯はイラナイから、あれを飯の代わりにしたいくらいじゃ!!」

 あぁ、いたな~。
 米焼酎を飲んでる奴と芋焼酎を飲んでる知り合いに二人程。

「お酒を売るのはいいけど、仕事に支障を出したりしないでくれよ」

「いい酒があればいい仕事が出来る。
 これがドワーフ族のお約束じゃ」

「それじゃ仕事明けに、幾つ必要か言ってくれ。
 焼酎は、他にも種類が複数あるから」

「なんと?  芋と麦以外もあるのか?」

「まぁ、それは仕事終わりの楽しみにしててよ。
 それと、石窯の作成ありがとう」

「なんの石窯作りは、ドワーフの得意分野じゃからな。 ガハハ!!
 そういえば、昨日は朝からいなかったが、店長はシスターと乳繰りあってきたんか?」

「ちょっと!!  子供達がいる前でなんて事を……」

「ああ、すまんすまん」

「なんも、なかったですよ」

 シェリーが質問してきた。
「ちちくりあうって、なーにー?」

 俺は、思いっきりドワルドの方を睨みつけた!!
 すまないといったポーズで、ドワルドは俺に謝罪している。

「うん、そうだね」  

 彼女に答える言葉が思いつかず、言葉に詰まってしまった。
 裸の付き合い(お風呂)してましたとかは言えないしなぁ。
 よし、誤魔化そう。

「エミリーさんと、仲良く遊んでたって事だよ」

 苦しいが、これが限界の言い訳だ。

「お姉ちゃんだけズルいー。
 シェリーとも遊んでー!!」

 そうなるよなぁ。

「そしたら、今週のお休みの日に遊ぼうね」

「わーい」と、素直に喜ぶシェリーに、なし崩し的な展開を感じて敗北を感じるのであった。

「昨日、お姉ちゃん出かける時は凄く嬉しそうにしてたけど。
 お姉ちゃんお家に帰ってきた時、泣いてたよ」
 ……と、シェリーが意味深な言葉を言ってきた。

「店長、何やったんじゃ」

「ドワルドさん!!  話こじれるから黙ってて」

 ぐぬぬ……と、ドワルドがおし黙る。

 昨日のエミリーが泣いていた事を思い出した。
 今日の仕事終わりに、行く所が決まったなぁ。
 用事があるのは、彼女じゃなくてスミス神父の方にだけどな。

 俺がこんな状態でも――お客さんにとっては、楽しい買い物の時間だ。
 いつものように平常心を心がけよう。

 そんな気持ちのまま、仕事に入ったが内心では早く仕事が終わってくれと考えていた。
 順調な時は一週間でも短く感じるのに、今は時間が1分でも長く感じてしまう。
 そんな苦痛を感じながら、営業時間が終わった。

 工事の荷物置き場に、ドワルド宛に書き置きを残し米焼酎と蕎麦焼酎を置いて、子供達を孤児院へ帰らせた。
 本当なら自分が、子供達について行くべきかもしれないが、スミス神父と一悶着あるかもしれないので、それは子供達に見せられないと考えて、【転送魔法】で教会へ向かった。
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