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8話.教会とシスター

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 迷子というアクシデントもあり――
 夕方を過ぎて辺りは暗くなってしまっている。

 あれっ!?  お店の前に誰かいる。
 じぃーっと、見てみると――家具屋さんとシスターさん、それと知らない男性と子供が何人かいる。

「あれ、家具屋さん。
 先にベッド入れて帰っても良かったのに」

 続けて疑問に思った事を確認した。

「それは、そうとシスターさん。
 なんで、こんな所に?」と、聞いたら。

「家具屋さんから、荷物運びの依頼があったんですよ」

 荷物は荷車で運んで、ここにベッドを既に下ろしてある。

「あと、すいません。そちらの男性の方は?」

「あ、すいません。
 教会の神父をやっています、スミスと言います。
 ウチのシスターが貴方から寄付を頂けたという話でしたので、そのお礼をと思いまして」

「スミス神父ですね。私は二階堂始です。
 それはそうと、お礼ってだけじゃなさそうですね」

 察されて、バツが悪そうにする神父。

「今日、貴方から購入していただいた。
 露店売りの青年と家具屋の青年は、ウチの孤児院を卒業(退所)して行った子達なんです」

「ああ、なるほどですね。
 それで直々に挨拶に来ていただいた感じですか?」

「それもあるのですが……。
 ハジメ君が子供を働かせるのに、良いイメージを持たれていないとシスターから聞きまして」

「それで? 
 その件が何か関係あるんですか?」

「孤児院ってのは生きる為の力を身につける場所でして、ウチの孤児院では働ける事は自立する為の勉強みたいなものなんです。
 あと、ウチの孤児院はお世辞にも経営が良いとは言えなく、少額の寄付や卒業した子達の協力で成り立ってるんです」

「ああ、それで子供達を連れてきたって訳ですかね?」

 そうなると子供たちは、ベッド運ぶの手伝うつもりなのかな。
 ちょっと……心配だな女の子もいるんだし。

「怪我だけは、させないようにして下さいよ」

「その辺りは心得てます」

「よし、家主さんが帰ってきたぞー。
 このベッドをみんなで運び込むぞ」と、神父さんが言った。

 子供達が元気よく返事してる。
 アレ?  仕事とか嫌なんじゃないの?
 なんか嬉しそうだなと思いながら子供達を見ていた。

 俺は先に建物に入り一階と二階の灯りの準備を済ませた。
 俺が二階から降りてくると神父の声が聞こえた。

「シェリーと、キャリーは、ここにある布団を二階に運びなさい」

 ああ、小さな女の子の二人は軽いものを運ばせるんだな。

 家具屋の青年、神父、シスターと男の子達でベッドを二階へ運ぶ。
 見ていてヒヤヒヤする部分もあるが、嬉しそうに仕事をする子供達を見て、これも自立の為の勉強なのかなと考えさせられた。
 女の子達は、その後を付いていくように布団を運んで行く。

 ちょっとだけ、子供達に質問してみたいと思った。

 配達に来てくれた人数分の、ハンバーガーとコーラを【異世界取引】で【アイテムボックス】に用意しておいた。
 まだ、テーブルがないから部屋の床に座ることになるが仕方ない。

 皆が、一階に降りて来るときに声をかけた。

「皆さん、お疲れさまです。
 今度、発売するウチのお店の商品です食べていってください。
 準備するから少し待ってね――床に座ることになるけど一階で休憩しててね。
 食事の用意ができたら呼ぶから、外にある屋台まで取りに来てね」と、俺は皆に伝えた。

「あっ、そんなお構いなく」と、神父が言って来たが。

「子供達に聞きたいことがありますんで」と、答えた。

 油鍋の、下面を[ファイア]の魔法で温めて適温になった所でポテトを入れる。
 ポテトの揚がる音が聞こえる。

「取りに来て良いよ」と、建物の中にいる皆に伝える。

 ポテトを盛って、その後にハンバーガーを置く。
 コーラは氷は用意してないが既に冷えてるし、ペッドボトルから直接ジョッキに注いでいく。
 トレーには、ハンバーガーとポテトの乗った皿と、コーラを入れたジョッキを乗せて人数分の食事を次々と作り上げていく。

 そして、最後に自分の分を作って終了。
 皆が、一階(広間)に座って待っている。

 自分も広間に座ると、スミス神父が食事に対する神への感謝と、俺に対する感謝を述べて食事することになった。
 
 なんか、恥ずかしいな……。

 子供達に俺から聞きたかった事は、「仕事するのって楽しいかい?」って、事を聞きいた。

 子供だからの発言というか、面白おかしい答えも聞けたが。
 働くことに不満は持っていないことが解った……。
 逆に、シェリーは逆に大人びた意見を言ってきて正直なところ驚いた。
 子供達の話を聞いて俺の考えが一つ決まった。

 もう一つは、家具屋の件である。

「ちょいと家具屋さん。
 ちなみに――この部屋をお客さんの食事用のスペースにするつもりなんだよね。
 何か、足りないと思わないかい」と、わざとらしくではあるが聞いてみた。

「テーブルと椅子が欲しいですね」

「その通りです。
 テーブル1つに対して椅子4脚この部屋にお客さんが行き来しやすく、圧迫感を感じない程度のスペースを確保しつつテーブルと椅子を置きたい」

「ご依頼ですか?」

「その通り。
 依頼をかけたら、いつ頃にテーブルと椅子は出来上がるかな?」

「二ヶ月……いや、一ヶ月で仕上げてみせます」

「わかった。そしたら依頼するよ。
 椅子とテーブルの単価はどれくらいになる?」

「それなら、これくらいですね」と、金額を提示してきたが特に問題なかったので、そのままの数字で了承した。

「スミス神父、それとシスターさん。子供達に仕事を依頼しようと思う。
 主な、仕事は掃除と食器洗いになると思う。
 食器洗いに関しては量が量なので大変だとは思うが大丈夫だろうか?」

「量は人数でカバーできますから――
 問題ないですよ」と、シスターが言ってきた。

「それで肝心の給料の件なんだか、どれくらい出せばいいんだ?」

「人数は関係無しに1日50ゴールド程、教会へ寄付いただければ大丈夫ですよ」
 と、神父が即答してきた。このラインは譲れない所みたいだ。

「わかった、それでお願いしよう」
「後、済まないが食器を下げる時と、片付ける時にお客さんの前に出ることになる。
 子供達の身形を綺麗にしておかないと、お店イメージの悪化につながる」

 200ゴールドを神父に渡して。

「これで子供達に綺麗な服を買ってやってくれ」

「わかりました」と、神父が答えた。

「それと手伝いに来てくれた子供達には昼ご飯を提供する。
 それは問題ないな?」

「ありません。
 そこまで、していただいて本当に良いものかと……」

「こちらにも打算があるんだ。
 そんな堅苦しく考えなくて大丈夫ですよ」と言って、教会との話はついた。

「とりあえず、テーブルが運ばれる3日前から仕事を依頼したい。
 三日間はひたすら掃除だ」

「わかりました。
 家具屋さんとの打ち合わせ時期で把握して、子供達を向かわせますね」
 と、シスターさんが言ってきた。

「そうしてくれると助かるよ。
 シスターさん、お願いします」

「あのハジメさん。
 シスターさんでなく、エミリーと呼んでください」

「あっ、ハイ。そうします」

「シェリー、キャリー、エミリーって名前が、似てるから間違いそうですね」

 少し、エミリーが俯いてこう言った。

「私は元孤児です。
 孤児には名前があるものいますが、名前がわからないものには神父が名前をつけるんです」

「すいません。
 無神経な事言いました」

「私は今年成人で16になるので、孤児院を卒業してシスターになりました。
 主に、孤児院のお仕事してますけどね」

「私の一つ下なんですね、エミリーさん」

 シスターというより子供達のお姉ちゃんって感じかな。

「ハジメさんは凄いですね。
 成人(16歳)とはいえ、一人で商売を始めるなんて」

「ちょうど、良い機会に恵まれただけですよ」

 ほぼ、勝ち確定の機会だったがな。

「ホント、すごいです」

「あはは、エミリーさん。
 今後ともよろしくお願いしますね」

「はい」

 そろそろ話を締めないとな。

「一ヶ月後に、お店がオープンします。
 皆さん、ご協力よろしくお願いします」と、俺は皆に対して発言した。

「よろしくお願いします」と、言葉が皆から帰ってきた。

 そして、みんなはそれぞれ帰っていった。
 それはそうと、明日から一ヶ月の間は何しようかな?
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