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第四章 中編 森の異変と修行の続きと【ヒルフェ】
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「ぐっ?!……」
その言葉を、キリエは聞いてしまい、両肩をビクつかせる。さらには両膝から地面に崩れ落ちて、
「うぅ。…わ、私だって、」
と譫言の様にぼやいている。その目には涙を溜めて表情を歪ませており、今にも泣きそうだ。先程の言葉が、まるで刃物の様に心を抉ったのだろう。
しまった。とドンドも、思っているようだ。苦々しい表情で狼狽えており、なんとも気まずい雰囲気を醸し出している。
俺も見かねて、すぐさま慰めだした。
「落ち着けよ。…」
「…い、いいんです。私が未熟なのは事実ですし。…それに普段の修練時でも叔母様とは見取り稽古と打ち合いに、教えてもらった技や型の練習ばかり。…それをやって、技を誉めて頂いたのも一度だけでしたから。」
「何の技を誉めて貰ったんだ?」
そう言われて、ようやくキリエは此方を向くと潤んだ瞳を拭いだして落ち着いたようで、続け様に立ち上がり、恐る恐る返事をする。
「はい?…えっと、説明が難しいな。」
「見せてみろよ。」
「…は、はい。…あ、あの。…またさっきみたいに刀を構えて貰ってもいいですか?…持ちながら、此方に近づいてきてもらうだけでいいので。」
「あぁ、…いいぞ。」
と、もう一度俺も対面するように姿勢を直して刀を構えると、ゆっくりと歩いて側まで寄ていった。
すると次の瞬間、キリエは目にも止まらぬ動きで、横向きに一回転していた。
ふと俺は気がつけば、利き手に強い衝撃を受けてしまい、反動で弾かれた様に動いた。
その直後に背後から、カラン、と音がしていた。
すぐに俺は振り返ると、後の離れた位置に、模造刀が落ちていた。先程まで持っていた筈だったが、いつの間にか手から放りだされていた。キリエのした動作が原因だと理解した。
その言葉を、キリエは聞いてしまい、両肩をビクつかせる。さらには両膝から地面に崩れ落ちて、
「うぅ。…わ、私だって、」
と譫言の様にぼやいている。その目には涙を溜めて表情を歪ませており、今にも泣きそうだ。先程の言葉が、まるで刃物の様に心を抉ったのだろう。
しまった。とドンドも、思っているようだ。苦々しい表情で狼狽えており、なんとも気まずい雰囲気を醸し出している。
俺も見かねて、すぐさま慰めだした。
「落ち着けよ。…」
「…い、いいんです。私が未熟なのは事実ですし。…それに普段の修練時でも叔母様とは見取り稽古と打ち合いに、教えてもらった技や型の練習ばかり。…それをやって、技を誉めて頂いたのも一度だけでしたから。」
「何の技を誉めて貰ったんだ?」
そう言われて、ようやくキリエは此方を向くと潤んだ瞳を拭いだして落ち着いたようで、続け様に立ち上がり、恐る恐る返事をする。
「はい?…えっと、説明が難しいな。」
「見せてみろよ。」
「…は、はい。…あ、あの。…またさっきみたいに刀を構えて貰ってもいいですか?…持ちながら、此方に近づいてきてもらうだけでいいので。」
「あぁ、…いいぞ。」
と、もう一度俺も対面するように姿勢を直して刀を構えると、ゆっくりと歩いて側まで寄ていった。
すると次の瞬間、キリエは目にも止まらぬ動きで、横向きに一回転していた。
ふと俺は気がつけば、利き手に強い衝撃を受けてしまい、反動で弾かれた様に動いた。
その直後に背後から、カラン、と音がしていた。
すぐに俺は振り返ると、後の離れた位置に、模造刀が落ちていた。先程まで持っていた筈だったが、いつの間にか手から放りだされていた。キリエのした動作が原因だと理解した。
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