上 下
387 / 389
3話 三章 祖父の友達と同世代の亜人と【ヒルフェ】

10

しおりを挟む

 ※※※

 それから全員で、焚き火を囲んで座っている。
 リキッドと俺が横に並んでいた。さらに右隣から順番に、ヒナ、ドンド、アスターが陣取って、ぐるりと一周する。
 因みにダフネとキリエは、兵士達と交じりながら給仕に勤しんでおり、各々の食事を運んでいた。
 キリエが此方へと近づいて来て、「ど、どうぞ。…陛下。」と食べ物を手渡してくる。やや緊張の面持ちで、アスターに近づいていた。
 それに彼は気さくな対応を取っていた。
 「はは、…。…君、そんなに緊張しなくていいから、もっと砕けていいから。」
 「畏まりまし、…い、いえ、わかりました。」
 とキリエは恐縮しつつ返事をし、作業を続けだす。
 「…リキッド様も、…ヒナ様とヒルフェ様もどうぞ。」
 「あぁ、ありがとう。」
 「リエちゃん、ありがとう。」
 「あぁ、…。」
 俺も最後に返事をして、品を受け取ると、まじまじと見る。
 手渡されたのは、紙で包んだ保存食である。主な中身は、黒パン、干し肉、油付けの小魚だ。
 誰も彼もが同じ物を持っている。
 アスターやリキッドも例外ではないようである。
 俺は少しばかり、驚愕していた。あまりにも意外だったからだ。
 そのまま爺達は豪快に、品物を食べだした。パンや小魚を頬張り、干し肉を齧り、楽しげに笑いながら話し出す。
 「いやぁ、懐かしい!…昔もこうして、皆で焚き火を囲んでよく食べたもんですねぇ、兄ぃ。…」
 「いやはや、そうだね。…もう三十年以上になるけどね。…」
 「…あの頃は楽しかったなぁ。…ささ、兄ぃも、もっと食べてくださいな。」
 「私は、これでいいよ。…最近は健康に気を使う様にしないと、ダフネが怒るんだよ。」
 「…それ、完全に尻に敷かれてるじゃねぇですかい。…いいじゃないですか、今日は!」
 まるで宴の様だった。
 「っていうか、陛下も。…アンタも羽目を外し過ぎだから、程程にしろってんだよ。…」
 とドンドも、小声で叱咤する。
 「はぁ、あほくさ。…」
 さらには、ダフネも小さくぼやいていた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

追放勇者ガイウス

兜坂嵐
ファンタジー
「クズだから」 あまりに端的な理由で追放された勇者。 その勇者の旅路の果ては…?

追い出された万能職に新しい人生が始まりました

東堂大稀(旧:To-do)
ファンタジー
「お前、クビな」 その一言で『万能職』の青年ロアは勇者パーティーから追い出された。 『万能職』は冒険者の最底辺職だ。 冒険者ギルドの区分では『万能職』と耳触りのいい呼び方をされているが、めったにそんな呼び方をしてもらえない職業だった。 『雑用係』『運び屋』『なんでも屋』『小間使い』『見習い』。 口汚い者たちなど『寄生虫」と呼んだり、あえて『万能様』と皮肉を効かせて呼んでいた。 要するにパーティーの戦闘以外の仕事をなんでもこなす、雑用専門の最下級職だった。 その底辺職を7年も勤めた彼は、追い出されたことによって新しい人生を始める……。

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

神々に天界に召喚され下界に追放された戦場カメラマンは神々に戦いを挑む。

黒ハット
ファンタジー
戦場カメラマンの北村大和は,異世界の神々の戦の戦力として神々の召喚魔法で特殊部隊の召喚に巻き込まれてしまい、天界に召喚されるが神力が弱い無能者の烙印を押され、役に立たないという理由で異世界の人間界に追放されて冒険者になる。剣と魔法の力をつけて人間を玩具のように扱う神々に戦いを挑むが果たして彼は神々に勝てるのだろうか

母の中で私の価値はゼロのまま、家の恥にしかならないと養子に出され、それを鵜呑みにした父に縁を切られたおかげで幸せになれました

珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれたケイトリン・オールドリッチ。跡継ぎの兄と母に似ている妹。その2人が何をしても母は怒ることをしなかった。 なのに母に似ていないという理由で、ケイトリンは理不尽な目にあい続けていた。そんな日々に嫌気がさしたケイトリンは、兄妹を超えるために頑張るようになっていくのだが……。

処理中です...