スキル【疲れ知らず】を会得した俺は、人々を救う。

２話 エピローグ ようこそ始まりの街【ビーギニング】へ

８

　だが目の前には、もっと身体を強張らせる女がいた。
　それはキリエである。ずっと鋭い目付きを向けながら、気を張っていて落ち着かない素振りだ。一見すると高圧的な雰囲気のようだが、ただ以前の様な敵意剥き出しには感じない。
　俺は首を傾げつつ、彼女の様子を伺っていた。
　やがて、キリエは意を決した表情をすると、
　「ひ、ひ、………ヒルフェ様！！…その、…大変、申し訳ございませんでした！！」
　と大声で謝罪の言葉を述べだした。おまけに、片膝をついて芝の地面に跪くと頭を下げていた。
　その様子に、近くにいるギルドの従業員達は、ギョッと驚いていた。
　しかし、キリエは微動だにしないで、姿勢も変えないまま、さらに喋り続けてきた。
　「私は、…私は自分の本来の立場を忘れ、貴方に幾度となく無礼な態度を取ってしまい、不快な思いをさせてしまいました。…そのせいで、多大な御迷惑をお掛けしました。…本当に申し訳ございませんでした！」
　「え、…あっ、…いや。…それは。」
　「…こんな只頭を下げた程度では、許されない事をしたのに。…なのに、件の試験では罠から助けて頂き、ヒナ様をお守りくださっただけではなく、この命を大蛇からも御救いくださって、…。返す言葉がございません！！」
　「あのな、…」と、俺も返事を返すが、たじろいでしまい、上手く言葉が出ない。どうしようかと対応に困った。