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間章 ある男の末路とその他の行く末(2話)
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「確かに、…生き抜いていくのに実力は必要でしょう。…武力や知力、財力、権力、他にも様々あります。しかし、力を正しく振るわなければ、全て等しく暴力となります。」
「……」
「…それも自分が偉いと思う人になればなる程に、権力に溺れてしまい、忘れて分からなくなってしまうのです。…我が主や奥方様、またアインスヤヴァイ家の人々も、典型的な人達です。…もし今回の婚約話が実って、ターナやサベルが当主を継いだりしたら大変でした。…それこそエーデルヴァイス家は潰れてしまいます。」
その言葉は、まるで独白のようである。
ヒナは静かに聞いていた。
またアルフォンスも、黙って耳を傾けている。
「…だからこそ、力を持つ者をには、他人を蔑んだりせずに、真の強さとは何かを考えてほしいと、私は考えております。…」
「…真の強さ、…?」
ただヒルフェだけは、相づちをうつ。
その直後に、アルバンは頷きながら、視線を向けると、
「…私は先代の奥方様、…ヒナ様のお婆様の姿を見て学びました。…あの殺伐とした屋敷の中で、彼女だけが良心でした。…弱者に手を差し伸べており、凛とした佇まいで蔑むのは間違っているとハッキリと伝えていました。…嫌々で嫁いできても、後の世代の子達の為に人としての在り方を説いていましたよ。…そのせいで、ご自身は苦労や辛い目にもあったようです。でも最後まで主張を貫いていました。…だからこそ、若かりし頃の私も助けられ、今でも多くの使用人達が恩義を持っています。」
と、言っていた。さらには、ーー
「…そして今も私を含めて使用人の中には、賛同する者も多い。…彼女の真っ直ぐな誠実さと知性を継承し、次のエーデルヴァイス家を次ぐ世代の為に、陰ながら戦っているのです。…そうしてエーデルヴァイス家をより良くしていくのが彼女への恩返しだと思っています。」
と呟きながら、明後日の方を見つつ、胸を張って立っていた。凄く誇らしいと身体全体で表しているようだった。
「……」
「…それも自分が偉いと思う人になればなる程に、権力に溺れてしまい、忘れて分からなくなってしまうのです。…我が主や奥方様、またアインスヤヴァイ家の人々も、典型的な人達です。…もし今回の婚約話が実って、ターナやサベルが当主を継いだりしたら大変でした。…それこそエーデルヴァイス家は潰れてしまいます。」
その言葉は、まるで独白のようである。
ヒナは静かに聞いていた。
またアルフォンスも、黙って耳を傾けている。
「…だからこそ、力を持つ者をには、他人を蔑んだりせずに、真の強さとは何かを考えてほしいと、私は考えております。…」
「…真の強さ、…?」
ただヒルフェだけは、相づちをうつ。
その直後に、アルバンは頷きながら、視線を向けると、
「…私は先代の奥方様、…ヒナ様のお婆様の姿を見て学びました。…あの殺伐とした屋敷の中で、彼女だけが良心でした。…弱者に手を差し伸べており、凛とした佇まいで蔑むのは間違っているとハッキリと伝えていました。…嫌々で嫁いできても、後の世代の子達の為に人としての在り方を説いていましたよ。…そのせいで、ご自身は苦労や辛い目にもあったようです。でも最後まで主張を貫いていました。…だからこそ、若かりし頃の私も助けられ、今でも多くの使用人達が恩義を持っています。」
と、言っていた。さらには、ーー
「…そして今も私を含めて使用人の中には、賛同する者も多い。…彼女の真っ直ぐな誠実さと知性を継承し、次のエーデルヴァイス家を次ぐ世代の為に、陰ながら戦っているのです。…そうしてエーデルヴァイス家をより良くしていくのが彼女への恩返しだと思っています。」
と呟きながら、明後日の方を見つつ、胸を張って立っていた。凄く誇らしいと身体全体で表しているようだった。
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