スキル【疲れ知らず】を会得した俺は、人々を救う。

あおいろ

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2話 四章 冒険者ランク取得試験 (後編)

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 「くそ、…ヒナには近づくな!」
 「なんだと!…貴様、…私の邪魔をするな!!」
 再びターナが手を伸ばしてきた。未だに狙いはヒナである。
 目の前の行為に、俺は躊躇わず、思った事を口にした。
 「てめぇ、…これだけの騒ぎを起こしたにも関わらず、自分だけ助かろうって腹か。…しかも、仮にも自分の婚約者に守れって言うのかよ!」
 「あぁ!?…だから、どうした!…私は未来の大貴族になる男だぞ、…エーデルヴァイス家が家系を継ぐために、私を必要としているのだ!…だからこそ、その女は私を助ける義務があるのだ!」
 すかさずターナも、自分の言い分を主張してきた。
 たが余りにも、無茶苦茶な内容である。
 それでも尚も、彼は喚きながら喋り続ける。
 「…私が命を落とせば、エーデルヴァイス家の繁栄はなくなるぞ!…そうならない為に、私は選ばれた筈だ。…早くしろ!…凄い魔法が使える筈だろう、試験で見たぞ!…何をしている、私が成り上がる為に、お前がいるんだろうが!!」
 「ふざけるな!!…ヒナ様を侮辱するな!」
 すると突然、キリエが動きだして、体当たりをしてきた。さらにターナの腕をひっぺがす。
 「うおっと?!」
 と俺は拘束が解けて、体勢を崩しそうになり、なんとか踏みとどまれた。
 逆にターナは不意を突かれて、押し倒されて地面に倒れ込む。
 その上にキリエは馬乗りになり、ターナの胸ぐらを掴みながら、顔を間近に迫って怒鳴りつけだす。
 「お前らみたいな奴等がいるから、ヒナ様が傷つくんだ!…ヒナ様は、都合の良い道具でも、成り上がる為の踏み台でもない!」
 それは、彼女の心からの叫びである。
 だが同時に、ヒナが驚いて声を出していた。
 すぐに俺は顔を振り向かせると、ヒナが前方を指差す姿を見た。
 その視線の先では、ダフネと蛇(サーペンス)の様な魔物が交戦している途中だった。
 しかし、その側まで、サベルが勢いよく迫っており、
 「嘗めるなぁ!…くそ蛇がぁぁ!」
 と怒鳴りつつ、刀を振り上げながら切りかかっていく。もう刀の切っ先が当たる寸前だった。
 それと同時に、不思議な事が起きた。
 蛇(サーペンス)の様な魔物は、二つの首の付け根部分から、身体の裂けだして左右に分かれだす。ついでに千切れた部分の肉や皮膚も急速に再生していた。
 最終的には、蛇(サーペンス)の様な魔物は、二体の個体に分裂してしまうのだった。
 そのまま左側の頭は、サベルの方に向き直ると、口を大きく開けながら襲いかかりだした。
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