スキル【疲れ知らず】を会得した俺は、人々を救う。

２話 四章 冒険者ランク取得試験 (中編)

２２

　ふと蛇(サーペンス)の様な魔物は、二つの頭が辺りを見渡している。首を動かす度に、舌がチロチロと出ており、獲物を見定めるようだ。
　あの巨体では、人等は容易く丸のみに出来るだろう。
　そのすぐ近くには、未だターナとサベルがいる。共に武器を構えているも、先程までと比べて腰が引けながら、足がすくんでいるようである。
　「…な、なんだ？…こいつは、…」
　「…デカすぎる。…こんなの、想像以上だ。」
　「おい！…何をやっているんだ！…早く逃げろ！」
　と他の受験者の誰かが呼び掛けた。
　「うるさい！…私に指図するんじゃない！」
　だがサベルは反論すると、剣を振り上げながら突撃して行った。
　すぐにターナが呼び掛け、制止を促す。
　「おい！…サベル！」
　しかし間に合わなかった。
　そのままサベルは攻撃を仕掛け、蛇(サーペンス)だった魔物の胴体に、剣の切っ先を勢いよく突き立てる。
　すると直後に、サベルの剣は弾き返されていた。攻撃は全く効かないようだった。
　さらに次の瞬間、蛇(サーペンス)の様な魔物は、大きな咆哮を上げて威嚇してくる。おぞましくて重苦しい強烈な音である。
　遺跡に来る前に、道すがらに聞いた音と同じだった。
　音が辺りに響くと、受験者達は次々と後退りしだした。
　さらには尻餅をつき、腰が抜けた者がいる。
　はたまた緊張のあまりに、硬直して動けなくなる者もいた。
　「ひぃ？！…」
　ほぼ同時に、ターナだけが踵を返して走りだして、此方に向かって逃げてくる。
　その一瞬の隙に、蛇(サーペンス)の様な魔物も動きだした。二つの頭は口を開けて、牙を向きだしながら迫ってきたのだった。