スキル【疲れ知らず】を会得した俺は、人々を救う。

２話 四章 冒険者ランク取得試験 (中編)

７

　「………………始め！」
　そして遂に、アルフォンスが開始の合図を宣言していた。多少は待ってくれていたようだった。
　だが無情にも、間に合わなかった。
　すぐに受験者達は、続々と坂道を駆け上がっていき、森の奥へと向かっていった。
　瞬く間に全員が遠くに離れて、小さくなっていく。
　「たっく、あいつ！…一人で行きやがったのか！」
　と、俺は悪態をつきながらも、急いでヒナの手を引くと、前の受験者達を追いかけていく。
　「行くぞ！」
　「う、うん？！」
　と、ヒナも一緒に駆けだした。しかし必死に足を動かしているも、歩幅が合わず動きも遅い。
　お互いに前へと進めども、追い付く気配がしない。
　「えぇい！…もう！！」
　「ふへぇ！？」
　「しっかり、捕まってろ！！」
　と俺は苛立ちを露にすると、咄嗟に彼女の身体を抱きかえだし、走りながら速度をあげていく。
　突然の事にヒナも驚いて声をあげると、此方の胸元に必死にしがみ付いており、振り落とされない様にしている。
　そのまま俺達は進み続けていき、最後尾の受験者を追い越すと、さらに一人、また一人と抜き去ってしまう。
　それを何度も繰り返していく。
　やがて森の奥へ向かっていくと、足元は獣道に変わってきていた。さらに周りも、鬱蒼と木々や藪が生い茂る様子に変貌しだす。
　「うわぁ！！」「何だ？！」「ひえぇぇ！」
　ふと前方から、誰かの叫び声が響き渡る。
　先の方にいる他の人々が急停止してしまう。
　「何だ？」
　と俺も思わず足を止めており、辺りを眺めて状況を確認しだした。