224 / 402
2話 四章 冒険者ランク取得試験 (中編)
1
しおりを挟む
「とりあえず、キリエを探そう。」と、俺は率直に、提案していた。
「うん。」と、ヒナも頷きながら、同意する。
それから俺とヒナは、砂浜の辺りを歩き回りつつ、周囲に視線を向けていく。
試験の後から、キリエの姿は一度も見ていない。人集りの中にも居らず、何処にいるのかすら検討がつかなかった。
だが此方の思いとは関係なく、意外と早めに見つかった。
すかさずヒナが「…あそこにいた。」と言いながら、指で指し示す。
その先、ーー砂浜と岩場の境の位置に、確かにキリエはいた。
彼女は俯きながら、踞る様に膝を抱えて座っていた。さらには、波打ち際を見つめながら、小さな声で何かを呟いているみたいだ。
俺達が近づいていくと、ー
次第にキリエの声が聞こえてきていた。
「…何をしているのだ、私は。…あんなに修行したのに、全く駄目じゃないか。…このままでは、ヒナ様が。…ヒナ様が。」
まるで独白の様である。自らを戒める言葉だった。
自ずとヒナは、「…リエちゃん」と、真っ先に呼び掛ける。
するとキリエも気がつくと、すぐに此方へと振り向いて微笑んできた。だが隣の俺の存在を目にした途端に、鋭い目付きで睨みつけてくる。
そんな様子に俺も険しい顔になったが堪えて、取り繕いながら話しかける。
「なぁ、…少し話があるんだ。…お前達の事情は聞いている。」
「…!…そんな事、お前には関係ない!」
「…関係ないって、確かに深くは関係ないだろう。…でもよ。……」
「…うるさい!…うるさい!…お前なんぞ、知った事か!!」
しかしキリエは耳を塞ぎながら喚くだけで、全く聞く耳を持たない。さらには突然、立ち上がると、すぐに駆け出して離れて行ってしまう。ずっと俺にだけ敵意を剥き出していたのだった。
ふとヒナからの視線を感じ、狼狽える雰囲気が伝わってくる。
「仕方ない。…じいさん達に、相談するか。」
と、俺は結論付けて、再びヒナを連れて移動していく。
「うん。」と、ヒナも頷きながら、同意する。
それから俺とヒナは、砂浜の辺りを歩き回りつつ、周囲に視線を向けていく。
試験の後から、キリエの姿は一度も見ていない。人集りの中にも居らず、何処にいるのかすら検討がつかなかった。
だが此方の思いとは関係なく、意外と早めに見つかった。
すかさずヒナが「…あそこにいた。」と言いながら、指で指し示す。
その先、ーー砂浜と岩場の境の位置に、確かにキリエはいた。
彼女は俯きながら、踞る様に膝を抱えて座っていた。さらには、波打ち際を見つめながら、小さな声で何かを呟いているみたいだ。
俺達が近づいていくと、ー
次第にキリエの声が聞こえてきていた。
「…何をしているのだ、私は。…あんなに修行したのに、全く駄目じゃないか。…このままでは、ヒナ様が。…ヒナ様が。」
まるで独白の様である。自らを戒める言葉だった。
自ずとヒナは、「…リエちゃん」と、真っ先に呼び掛ける。
するとキリエも気がつくと、すぐに此方へと振り向いて微笑んできた。だが隣の俺の存在を目にした途端に、鋭い目付きで睨みつけてくる。
そんな様子に俺も険しい顔になったが堪えて、取り繕いながら話しかける。
「なぁ、…少し話があるんだ。…お前達の事情は聞いている。」
「…!…そんな事、お前には関係ない!」
「…関係ないって、確かに深くは関係ないだろう。…でもよ。……」
「…うるさい!…うるさい!…お前なんぞ、知った事か!!」
しかしキリエは耳を塞ぎながら喚くだけで、全く聞く耳を持たない。さらには突然、立ち上がると、すぐに駆け出して離れて行ってしまう。ずっと俺にだけ敵意を剥き出していたのだった。
ふとヒナからの視線を感じ、狼狽える雰囲気が伝わってくる。
「仕方ない。…じいさん達に、相談するか。」
と、俺は結論付けて、再びヒナを連れて移動していく。
1
お気に入りに追加
222
あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈

ブラック・スワン ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~
碧
ファンタジー
「詰んだ…」遠い眼をして呟いた4歳の夏、カイザーはここが乙女ゲーム『亡国のレガリアと王国の秘宝』の世界だと思い出す。ゲームの俺様攻略対象者と我儘悪役令嬢の兄として転生した『無能』なモブが、ブラコン&シスコンへと華麗なるジョブチェンジを遂げモブの壁を愛と努力でぶち破る!これは優雅な白鳥ならぬ黒鳥の皮を被った彼が、無自覚に周りを誑しこんだりしながら奮闘しつつ総愛され(慕われ)する物語。生まれ持った美貌と頭脳・身体能力に努力を重ね、財力・身分と全てを活かし悪役令嬢ルート阻止に励むカイザーだがある日謎の能力が覚醒して…?!更にはそのミステリアス超絶美形っぷりから隠しキャラ扱いされたり、様々な勘違いにも拍車がかかり…。鉄壁の微笑みの裏で心の中の独り言と突っ込みが炸裂する彼の日常。(一話は短め設定です)

異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!
明衣令央
ファンタジー
糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。
一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。
だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。
そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。
この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。
2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。
勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。
八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。
パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。
攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。
ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。
一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。
これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。
※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。
※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。
※表紙はAIイラストを使用。

転生した愛し子は幸せを知る
ひつ
ファンタジー
【連載再開】
長らくお待たせしました!休載状態でしたが今月より復帰できそうです(手術後でまだリハビリ中のため不定期になります)。これからもどうぞ宜しくお願いします(^^)
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
宮月 華(みやつき はな) は死んだ。華は死に間際に「誰でもいいから私を愛して欲しかったな…」と願った。
次の瞬間、華は白い空間に!!すると、目の前に男の人(?)が現れ、「新たな世界で愛される幸せを知って欲しい!」と新たな名を貰い、過保護な神(パパ)にスキルやアイテムを貰って旅立つことに!
転生した女の子が周りから愛され、幸せになるお話です。
結構ご都合主義です。作者は語彙力ないです。
第13回ファンタジー大賞 176位
第14回ファンタジー大賞 76位
第15回ファンタジー大賞 70位
ありがとうございます(●´ω`●)

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅
聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。

ハイエルフの幼女に転生しました。
レイ♪♪
ファンタジー
ネグレクトで、死んでしまったレイカは
神様に転生させてもらって新しい世界で
たくさんの人や植物や精霊や獣に愛されていく
死んで、ハイエルフに転生した幼女の話し。
ゆっくり書いて行きます。
感想も待っています。
はげみになります。

最初からここに私の居場所はなかった
kana
恋愛
死なないために媚びても駄目だった。
死なないために努力しても認められなかった。
死なないためにどんなに辛くても笑顔でいても無駄だった。
死なないために何をされても怒らなかったのに⋯⋯
だったら⋯⋯もう誰にも媚びる必要も、気を使う必要もないでしょう?
だから虚しい希望は捨てて生きるための準備を始めた。
二度目は、自分らしく生きると決めた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
いつも稚拙な小説を読んでいただきありがとうございます。
私ごとですが、この度レジーナブックス様より『後悔している言われても⋯⋯ねえ?今さらですよ?』が1月31日頃に書籍化されることになりました~
これも読んでくださった皆様のおかげです。m(_ _)m
これからも皆様に楽しんでいただける作品をお届けできるように頑張ってまいりますので、よろしくお願いいたします(>人<;)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる